第六章 「祭りの後の振り返り」
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
そうして雑技団パフォーマンスや記念撮影や交流会といった夕方のプログラムも滞りなく進行し、巴図魯としての私が公務という形で初めて参加した神戸南京町の端午節は無事に終了したんだ。
午前中のプログラムに引き続いて色んな事をさせて頂いたね。
獅子舞とツーショットで広報用の写真を撮影したり、ビンゴ大会で番号札を引いたり。
その全てが良い思い出だよ。
私の引いた番号札が決め手になって上海旅行の当選した大学生カップルさん、物凄く喜んでいたっけ。
上海は料理も美味しいしとっても華やかな街だから、存分に楽しんで貰えると良いんだけど。
まあ「終了した」とは言っても、それはあくまでも来場者用のプログラムに書いてあるタイムテーブルの話でしかないからね。
後片付けだの撤収作業だのといった中華街が通常営業に戻る為に必要不可欠な作業はあるし、臨時で動員された公安職の連絡やら引き継ぎやらもあるしで、本当の意味で端午節が終わるのはそれから数時間も経ってからなんだよ。
まあ、こんな他人事みたいな言い方もどうかと思うけどね。
何しろ斯く言う私にしても、警備を担当した特命機動隊の子達から連絡や報告を色々受けた訳なのだから。
「こちらが我々の集計致しました午前と午後それぞれの人通りと交通量の推移であります、吹田千里少佐。」
「ありがとう御座います、江坂准尉。これで防犯リスク等の課題点の洗い出しが可能になりますので、今年度の中秋節や春節そして次年度以降の端午節をより安心安全に開催する事が出来るでしょう。」
顔馴染みの分隊長から受けた報告に目を落としながら、タブレット端末を操作する私。
装いこそ華やかな満洲服だけど、心は普段と変わらぬ公安職だよ。
「確かに例年の統計データやAIを用いればある程度の類推は出来ますが、それらはあくまでも目安や補助ですからね。活きの良い最新のデータからしか得られない知見は確かに御座いますし、それらをこうして正確に届けて下さる江坂准尉達には感謝しておりますよ。」
「そう仰って頂けて恐悦至極であります、吹田千里少佐。」
安全保障というのは個々人のスタンドプレーなんかでは決して成り立つ物ではなく、こうした具合に沢山の人達の支えがあって初めて成立する。
基本的な事だからこそ、決して忘れちゃいけないよね。
こんな具合に撤収作業やら引き継ぎやらの諸々が終わった頃には、神戸南京町の中華街を夕闇が包み始めていたんだ。
徐々に際立っていく漢字表記のネオンサインと提灯の輝きを眺めていると、何とも言えない感情が湧き上がってくるね。
それは恐らく、「端午節の来賓としての大任を全う出来た!」っていう充足感と「もうすぐ終わっちゃう」っていう名残惜しさの入り混じった物だったんだろうな。
「神戸南京町も通常営業に向けてお色直しを済ませたようで御座いますね、千里さん。とはいえ、提灯やら『端午節キャンペーン』の幟やらは随所に残っておりますが。」
そんな私に声をかけてきたのは、自身も遊撃服から和服への御召し替えを終えた英里奈ちゃんだったの。
何しろこれからは、端午節の反省会を兼ねた懇親会だからね。
伯爵令嬢や「後援の三傑」の今仲父として相応しい装いへキチンとお色直しを済ませてきたのは、流石の一言だったよ。
とはいえこのピンク色の和服にしても、私の満洲服と同様に遊撃服と同じ強化素材で出来ているのだからね。
そうした有事の備えが万全なのは職業柄でありお互い様でもあるね。
「然りだね、英里奈ちゃん。今回こうして来賓として登壇した端午節の経験を、上手く次に繋げたい所だよ。そうしたレガシーの継承や活用もまた、社会の持続可能性に直結してくる訳だからね。」
そしてその繋げるべき「次」を語り合い現実にしていく為にこそ、南京町商店街振興組合や中華会館の関係者といった端午節運営委員会の皆様方との反省会がある訳で。
ここが私にとっての端午節の最後の山場とも言えたね。




