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第三章 「南京町広場の演武に向けた巴図魯殿の声明」

挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「AInova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。

 そうして改めて気を引き締めた私にマイクを向けたのは、司会進行を務める華僑令嬢だったの。

 打ち合わせも兼ねた会食ではビシッとしたリクルートスーツ姿だった徐福燕女士も、今は目にも鮮やかなチャイナドレスだね。

 そうして着飾った御姿だと、元化二十六年度ミス南京町の流石を否応なしに感じちゃうよ。

挿絵(By みてみん)

「それでは昼のプログラムを締め括るステージイベントと致しまして、巴図魯の吹田千里少佐による太極扇の演武の御時間とさせて頂きたいと思います。それでは吹田千里少佐、御挨拶を御願い頂けますでしょうか。」

「皆様、こんにちは。只今御紹介を賜りました人類防衛機構極東支部近畿ブロック堺県第二支局所属の特命遊撃士、吹田千里少佐です。午前中の来賓挨拶と重複する箇所も御座いますが、この点は御容赦頂けたら幸いです。この度こうして皆様と共に、ここ神戸南京町で伝統ある端午節を祝う事が出来まして、大変光栄に思います。この賑やかな中華街の雰囲気は、私の心に温かく響いた次第です。」

 丁寧な所作で向けられたマイクに頷きながら、私は朝の来賓挨拶を少しアレンジした挨拶を切り出したの。

 何しろ午後から南京町へ遊びに来た人達だって沢山いる訳だからね。

 午後から来た人達にも分かるように、それでいて午前中から来ている人達には「またか…」と思われないように。

 この匙加減ってのはなかなか難しいね。


 まあ何にせよ、挨拶を終えた以上は本題に入らなくっちゃいけないね。

「私は先月に『EMプロジェクト』という特殊任務を通じて、中華王朝の次代を担われる愛新覚羅麗蘭第一王女殿下より巴図魯という名誉ある称号を拝命いたしました。麗蘭王女を影武者として御救い申し上げた事は私にとって誇るべき武勲で御座いますが、その功績を御評価頂けて武勇と忠節を重んじる中華王朝の貴人に任じられた事は特命遊撃士としてこれ以上ない誇りです。」

 この「EMプロジェクト」という固有名詞を口にすると、自ずと身が引き締まるよ。

 来日された愛新覚羅麗蘭第一王女殿下の公務を成功させる為の護衛任務と、その麗蘭王女殿下の暗殺を企てる不穏分子である紅露共栄軍の殲滅。

 この二つを両軸とする特殊作戦である「EMプロジェクト」を成立させる上で最も優先すべき構成要素が、何を隠そう私なんだよ。

 愛新覚羅麗蘭第一王女殿下に瓜二つの容姿を活かして影武者となり、丸腰で拉致されてからはGPSで友軍を呼び寄せつつ倒した敵兵から武器弾薬を強奪してひたすら破壊活動を続ける。

 生還する可能性の低い危険な作戦だったけど、沢山の人達の協力があったからこそ成し遂げた訳で、正しく団結力の勝利と言えるだろうね。

「また長崎の日中友好式典では愛新覚羅永祥和碩親王殿下と御一緒に参列すると御役目を賜りましたが、この時に襲来した凶賊から殿下を御守りする事が出来ましたのも、私にとっては誠に名誉な事であり尚且つ喜ばしい事で御座います。愛新覚羅麗蘭第一王女殿下と愛新覚羅永祥和碩親王殿下。御二方に紫禁城で謁見させて頂いた際に、その慈悲深き御人柄と類稀なる才覚を改めて実感させられた次第です。このような素晴らしい御方と同じ時代に生きられる事、そしてその御二方の未来を御守り出来ました事は、私にとって無上の喜びで御座います。」

 そしてこの長崎での護衛任務も、私にとっては決して忘れられない重大トピックスだよ。

 だって「EMプロジェクト」の時は影武者というあくまでも裏方の人間だった訳だけど、長崎の式典では準貴族の巴図魯として表舞台に立ったわけなのだからね。

「そして今こうして皆様との交流を通して、中華王朝を第二の祖国として敬愛する気持ちが日増しに強くなっている次第で御座います。私はこれからも人類防衛機構の軍人として日本の平和と安全に尽力すると同時に、中華王朝の臣下である巴図魯として、そして何より一人の人間として、両国の架け橋となり、日中友好の更なる発展に貢献したいと強く願っています。」

 この事を誓ったのは忘れもしない、帝都の駐日中華王朝大使館で巴図魯の官位と双龍宝星勲章を授与された日だったんだ。

 次期天子の生命を救った義烈の忠臣として、中華王朝は私の名前を昭忠祠に刻んで下さった。

 しかも、こうして生きているうちにだよ。

 予譲曰く、「士は己を知る者の為に死す」。

 心ある者は自分の真価を認めて待遇して下さる方の為なら生命を投げ打っても尽くすのが筋だし、そんな帰属意識を持てる存在と出会えるのは人生において最上級の幸福だよ。

 そして人類防衛機構極東支部と中華王朝は、どちらも私の事を高く評価して下さるからね。

 私が日本と中華王朝を「二つの祖国」と呼ぶのは、そういう事なんだよ。

「本日は誠にありがとうございます。皆様の御多幸と、日中両国の永遠の繁栄を心よりお祈り申し上げます。」

 そうして拱手の礼を示す私の事を、会場の人々は万雷の拍手で讃えてくれたんだ

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― 新着の感想 ―
素晴らしい演説でした。 この地域における中華王朝出身のみなさんもきっと感動したでしょうね( ´∀` )
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