第九章 「鉄扇術に隠された真実」
挿絵の画像を作成する際には、「Ainova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
とは言え二人の提案した訓練メニューは私にとっても大いに有益だから、喜んで乗っかる事にしたの。
シチュエーションとしては、マリナちゃんと京花ちゃんの扮する暗殺者の投げナイフから要人を護衛するって感じだね。
「私が護衛する要人の役は英里奈ちゃんか…ホントに引き受けちゃって良いの、こんな事?」
「御気遣い痛み入ります、千里さん。しかしながら、御心配は御無用で御座いますよ。私は千里さんを信じておりますから。」
こう言われちゃうと無下には断れないよ。
とは言え二人が投擲してくるナイフは訓練用に作られた硬質ゴム製だから急所に当たっても少し痛いだけで済んじゃうんだけどね。
それに特命遊撃士である英里奈ちゃんの身体も私達同様、ナノマシンと薬物で強化改造されているから当たっても何の心配もない訳だし。
ここは三人の友情に甘える形で、より実践的な訓練を存分に満喫する事にしますか!
かくして三人の協力者を得た鉄扇術の自主練は、タイミングをずらして投擲された二本の凶器によって幕を切って落とされたんだよ。
「むっ!?」
要人役である英里奈ちゃんを自分の身体で庇いながら、私は全身の感覚器官を研ぎ澄ませたの。
「はっ!」
空気を揺らす気配と風切音のする方向へサッと手を伸ばし、閉じた鉄扇の親骨をピシャリと叩き付ける。
それだけで、硬質ゴム製の訓練用ナイフは力なく床に転がった。
「はっ!たあっ!」
パッと開いた鉄扇を使って上段の攻撃を跳ね返し、下段を目掛けて投擲されたナイフを半月型の表面で薙ぐようにして叩き落とす。
これで残るナイフは、それぞれあと二本だよ。
「うっ!」
中段目掛けて交差するように投げられた二本を叩き落とした私は、最後の一撃に思わず息を呑んだの。
先程叩き落としたナイフの影になるような軌道は、敵の目を欺く上で見事の一言だよ。
「やるっ…でも、やらせない!」
そこで私は再び鉄扇を広げ、二つの凶器をサッと薙ぎ払ったんだ。
「それ、もう一丁!」
そして柄の方をこちらに向けたナイフに更なる一打を与え、攻め手の方へ打ち返してやったんだ。
攻守交代って奴だよ、要するに。
「むっ!」
「おおっと!」
黒と青のサイドテールを揺らした人影がサッと飛び退いた次の瞬間、硬質ゴム製の訓練用ナイフは勢いよく壁面に叩き付けられたの。
合計十六本のナイフは床にバラバラの状態で散らばり、全ての攻撃が不発に終わった事を如実に物語っていたんだ。
「う〜む…見事に完封されたようだね、お京…」
「私なんか、サイドテール掠っちゃったもん。こりゃ賭けは御破算だね、マリナちゃん。」
話を聞いてみると、面白い事が分かったの。
どうやらマリナちゃんと京花ちゃんは、次に私が南京町へ行く時にどっちが護衛役で同行するかで賭けをしていたらしい。
「ちさから取った白星の多さ、或いはどちらが先取したか。それで勝負を決めようとしたんだよ。」
「こないだの端午節の夕御飯、英里奈ちゃんから聞いたけど相当に美味しかったんだってね。神戸南京町でも屈指の名店の中華ディナー…千里ちゃんと一緒なら御相伴出来ると思ってね。」
蓋を開けてみたら何とも単純な話だったよ。
それなら私としても、何とか話をつけてみたい所だね。
「咲洲舞中尉にチャットで聞いてみたけど、秋の中秋節なら三人で行っても大丈夫みたいだよ。マリナちゃん達三人も、王女殿下を無事に紫禁城まで護衛出来た事を中華王朝から評価されて感謝状を下賜されたじゃない?それをテーマにスピーチをしてくれたなら、来賓扱い出来るんだって。」
「それは助かるよ、千里ちゃん!流石は巴図魯殿、話が分かるじゃない!」
喜んでくれたのは良いけど、京花ちゃんったら本当にノリが軽いんだよなぁ。
何しろ肩を組みながら、脇の下をグリグリしてくるんだもん。
「あらあら、京花さんったら。」
「まあ何にせよ、今度の中秋節は四人揃って南京町に行けるって訳だ。あのEMプロジェクトの苦労話、聞いて貰うのも良いんじゃないかな。」
英里奈ちゃんに釣られて笑いながらも、私はマリナちゃんの何気ない一言に注目していたの。
私が巴図魯を受勲する切っ掛けとなったEMプロジェクトは、当然ながら私だけで成し遂げた功績ではないんだ。
マリナちゃんに京花ちゃん、そして英里奈ちゃん。
ここにいる誰かやその他の人達が一人でも欠けていたら、同じ結果になったとは限らないよ。
それを考えると、四人で胸を張って登壇出来るというのは良い事なんだろうね。
秋の中秋節はまだまだ先だけど、登壇出来る日が今から楽しみだよ。




