Take1:三度目の正直は人外オブ人外
いつもの病気なんだけど、今日はちょっと症状が違うんだ…!
Take1:三度目の正直は人外オブ人外
異世界転生したところまでがチートでした。
他はノーチートでした。知識チートなんてンなもん絶対記憶能力必須ですわ。
顔面ハイスペックもヒロインフラグもありませんでした。
幼馴染フラグは事実上のNTRでした。
別に将来を誓い合ったわけじゃないんだが、いつも俺と一緒につるんでた
幼馴染ちゃんとイケショタ幼馴染くんがいつも集まって駄弁ってた裏山の
秘密基地的な岩場の影でまぁロマンスちゅっちゅであった。
「……………………クソが」
密会するなら他所でやってくれ。せめて先に言っておいてくれ。俺もう逃げる。
その動きはもしかしたらニンジャもかくや。あーニンジャかー。
そういう覚醒しないかなー。後から覚醒チート大歓迎熱烈歓迎滂沱の涙で歓喜。
走る。
泣く。
叫びたい。
泣く。
走る。
泣く。
せっかくだから探検イベントに良さそうだと前々からアタリをつけておいた
鍾乳洞的な洞窟を生まれた村の近くで見つけたんで遅刻の言い訳にも良さげだと
クソ打算などせず一番乗りで待ってりゃせめてもの妨害にもなったろうに。
走る。
泣く。
走る。
コケる。
泣く。
叫ばない。意地でも。
アタリをつけた当時に見つけただだっ広いヒカリゴケだらけの広場まで我慢だ。
「ぁぁあぁぁぁあ…!」
もうちょっとでヒカリゴケ広場まで行けそうなので声が出てきちゃうぜ。
到着。
泣きまくる。
「クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがあああああああああああああ!」
気づけば俺の目の前には化け物がいます。ここには何も無いはずだったのに。
っていうか村でも国でも語り草な伝説の勇者様と賢者様と聖女様と剣聖様の
聖なる力が込められた魔物除けの聖印がそこかしこにあるから魔物なんて
絶対に居られるはずが無いのにどうなってんのさ。
「…クソが弱り目祟り目泣き面に蜂踏んだり蹴ったり御難続きの災難続きクソが」
クリスタルなのかメタリックなのかよくわからない表皮にアラクネのような体。
背中からは蟲龍のようなモノがヤマタノオロチないしヒュドラもかくやといった…
まぁもう誰がどう見てもバケモノで俺の人生が再びクソなまま終わるのでしょう。
「………まさか、そんな姿ですが俺にチートを授けてくださる神様とk」
はいバケモノがでっかくお口を開けました。せめて一瞬でおながいしますクソが。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「嘘です御免なさい! 助けてください! 俺まだ死にたくn―――
△ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
………
……
…
「………トイウ、夢……?」
じゃなかった。だってあのバケモノの記憶としか思えない記憶もあるんだもの。
出た声が俺の声に何かオゾマシイような気がしないでもない音階が混ざってる。
手を見た。どう見てもあのバケモノの手です。足は言うまでも無くクモ足です。
「…ナニコレ」
そうです。今は俺がそのバケモノなんです。全然普通に動けます。背中の
ワームのようなモノは最初から手足の動かし方がわかるように動かせます。
かる~く動かすだけでパァンパァンとソニックブームっぽい音が鳴ります。
まさしく鞭です。この太さとクリスタルのようなメタリックのような、
まぁ十中八九硬いんであろう表皮にソニックブームありきの膂力なんで
叩きつけるだけで叩きつけたモノがヤベーことになるのは想像に容易い。
「…テイウカ…大キサ的ニ…」
ヒカリゴケ広場じゃ今の俺はちょっとジャンプしただけで頭が天井激突必須。
横に動こうにもどうしたもんでしょうか。
「…ヨシ。コンナ時コソ落チ着コウ。俺ノ今ノ名前ハ"あらく"」
アラク・ノ・フォボス=ダイモス・オルトエンデ・フツーノ……???????
「イヤ、ふぉぼす=だいもす・おるとえんでッテナニ…」
俺を喰っただろうバケモノさんの名前混ざってるよ。アラク・ノ・フツーノだよ。
「平民フツーノ家の子アラク」だよ。何だよ恐怖混乱最古の終焉って…
中二っていうよりは大二っぽいよ多分。
「…種モ仕掛ケモ御座イマセン」
おもむろに人差し指を立ててライターの炎をイメージ。
―ボボボボボボボボボボボォッ!
「オヒョイ!?」
青白い火柱が出ました。いやライターの炎だっつうの。そりゃー時々ボワッとして
前髪焦がすとか喫煙者あるあるだけども?! こんな規模だと消し炭になるわ!!
「マァ全ッ然熱ク無ェケドナ…」
何となくイメージしたら青白ファイアボールに収まった。でもSUGOIDEKAIです。
マスクメロンくらい? いやバケモノの体なんで実際はもっとデカいと思うが。
「………」
他にもサンダーボルトだのエアーカッターにミニミニブラックホールから
LEDより明るそうなライトスフィアと思いつく属性魔法で軽そうなの出ましたわ。
「後カラ覚醒チート大歓迎熱烈歓迎滂沱ノ涙デ歓喜」
嬉しさが沸かない。だってバケモノボディ。体をコンコンとノックしてみたら
美しいと思えなくも無い金属音がキンコンカンコンと鳴る。今の俺の体で演奏会。
「楽シイ?」
ねーよ。独り言でボケて心でセルフツッコミだよ。
「………」
―ミキメキメキバキ!
「………わーお」
戻った。元の姿(?)に。前世同様子供時代なら神童でも
大人になったら普通の前世同様冴えないアラクの姿に戻ったよ。
「………」
なんとなくさっきのバケモノの時に試した魔法をやってみた。
できた。前髪がちょっと焦げ………………っていうか炎上した。
「…おいおいおいおい…全然熱くねえっていうか某戦闘民族のスーパーモード風」
服くらいは燃えるのかと思ったら…まぁさっきのバケモノが全裸だろうから
それの影響…? なんだろうけども。とりあえず解除した。
「………」
とりあえず帰路につきながら考えるだけ考えますかね。
>>>
今のカーチャンの声で始まる俺の朝が何事もなく始まった。今日の朝ごはんは
カーチャン特製の山鳥シチューと親父謹製の黒パンに弟アルノがお手伝いした
家の裏の畑の野菜サラダに妹チャムが大好きなアバキ茶と赤クラゲイチゴだ。
「「「「風の神オルヤハ様。ありがとうございます。いただきます」」」」
案の定チャムは赤クラゲイチゴを先に喰ってカーチャンに怒られる。
アルノはアバキ茶が嫌いなので顔を顰めている。
「兄ちゃん」
「イヤだ」
「まだ何も言ってないよ!」
「アバキ茶葉をいつも分けてくれるレオナ婆ちゃんに言うぞ」
「…うっ!」
「ほぉらょアルニョ。おみいひゃんのひうほおひ」
「…チャム。食べながら喋るな」
「お父さんの言うとおりよ。というかご飯を先に食べなさいってさっきから…」
実に平穏で代わり映えの無いフツーノ家の朝である。そりゃそうだ。
考えても答えなんぞ出るわけも無いので無かったことにしてんだから。
ちなみにチャムは俺をお兄ちゃんと呼ぶが、何故かアルノは呼び捨てである。
理由は……知らん。と言いたいところだが、チャムとアルノは血が繋がってない。
さらに言えば親父とカーチャン…シュウ父さんとテフネ母さんの実子は
チャムのみである。俺も血が繋がってないのに…何で俺はお兄ちゃんで
チャムから見ればもう一人の兄なはずのアルノは呼び捨てなのかね…?
そこら辺は考えない。考えるべきじゃない気がした。だってアルノは美少年。
血の繋がらないイケメン兄貴とフツないしブサメン兄貴。俺が俺であるが故に
邪推しかできないのはもう職業病かもしれませんな。
「どうしたんだアラク? 今日は何時もより静かだな」
「えっ?」
「どしたのお兄ちゃん? アバキ茶の茎でも齧っちゃったー?」
「!? 流石に茎はヤバいよ…シャレにならないよ兄ちゃん…」
「アラク…? 昨日から難しい顔してたけど、何かあったの?」
「あー…」
折角だから俺は幼馴染ちゃん…ミラリアと幼馴染くん…クロードの
傍目から見たらきっと甘酸っぱいだろうロマンスちゅっちゅを目撃したことを
恨み節を込めて呪詛のごとく語ってやったぜ。
「そうか…」
シュウ父さん…親父は俺を抱きしめた。まだ香ばしいパンの残り香がした。
「あらあら…アラクも複雑よね…」
「ふぉぉ…! クロとミラ姉はオトナだなー」
「クロード…ミラ姉ちゃんを…チッ…! 兄ちゃん。僕は兄ちゃんの味方だよ!」
テフネ母さん…カーチャンは俺の頭をナデナデしてくれた。前世の母ちゃんと
ソックリな感じで同じ感触の手がとても心地いい。悲しいが涙は出ない。
まぁ中身はもう今の親父も余裕で越えてるってのもあるから当然なんだが。
「アラク。今日の晩飯は特製ベーコンのエピを焼いてやるからな…!」
「あらあら…じゃあ私はウルフキラーボアを仕留めてきましょうかね」
「そうとなったら兄ちゃん! ご飯を食べたらクロードに鎮魂歌を聞かせる為の
暗黒体験計画を立てようじゃァないか!」
「ねーねーお兄ちゃん。ちゅっちゅなら私がしてあげよーか?」
「チャム…兄妹でキスとかキモチワルイぞ」
「ふーんだ! ドゲザして頼まれたってアルノにはしてやんないもんねー!」
今の俺の家族が暖かすぎて何も言えねぇ。でもクロードは暗黒体験させたいな。
ヤろうと思えば殺れるのは間違いないだろうし?
>
まぁ心まで野獣…もといバケモノじゃないのでそんなことはしないよ?
大体不思議と怒りどころか悲しみさえ種火レベルでしか沸かないのだ。
「まるっと夢オチでも無かったしな」
今現在は村から大分離れたであろう山の中…ギフト山脈と呼ばれる所の何処かで
絶賛バケモノモードな俺は色々と試していた。
「………出そうと思えば普通の声も出せるじゃんよ」
それはそれで相手のSAN値(正気度合い)を直葬できる気がしたが無視。
ちなみにバケモノモードになっても魔物は俺の姿に慄けども、
襲い掛かっては来るんだよなぁ………まるで勝負にならんのだが。
「ワンパン? いや、ワーム部分で引っ叩くわけだからこの場合ワンスラップ?」
軽く…とは言っても今まで何かを殴りつけてダメージを与える程度には
軽く力を入れてワーム部分を振るうんだが…見事にグチャックスクラップで
生卵が如く弾け飛び散っちゃうのよ。ちな思いっきりやると切断しちゃう。
木で試したら超一流の木こりで稼げるくらいスパッと綺麗に切断しちゃう。
岩で試したら超一流の石工で家族を養えるくらいスパッと綺麗に切断だよ。
大事なことだから複数回言っておく。あと人型部分の腕でやるとどうしても
体の構造上勢いがついちゃうのでグチャックスクラップ不可避。なので
ハンター兼業主婦なカーチャンのお手伝いは当分無理。その場合要修行。
「しかしどういう作りしてんだこの体…?」
本物のクモでも足音くらいあるだろうに、このバケモノモードで歩くと
全然足音がしない。意図的に草とか踏むと流石に音がするのに安心するレベル。
でも怖いのはここからだ。
「歩くように登れるんだよな…いや、そこは蟲足だから分かるが…」
木、岩、水上、空中、いやもうコレ実は微妙に浮いてるんじゃねえの?
それくらいこの蟲足は足場を選ばないって言うか選ばせない。
物理法則を余裕で無視する仕様です。
「なのに魔物とかは普通に貫通踏み潰し蹴り殺し放題」
今しがたも逃げるベヒーモス? みたいな魔物を勢い余って轢殺しました。
「シーグフリードでジークフリートとか何なの」
謎語彙で御免。だってこの蟲足さんはレイスであろうゴースト系も蹴れたのよ。
踏めるものが踏めなくて踏めないものが踏めるから格好つけちゃったのよ。
「……魔物ウンメェな」
もはや身体能力測定と化した運動をしてたら腹が減ってきたのだが、
当然そんな気分でスーッと徒歩なら何日かかるのか見当つかない場所まで
体感10分程度で来ちゃったもんだから弁当なんて持ってきてない。
なもんだから喰える喰えないもハッキリわかってないが何か弁当のために
家まで戻るのも面倒なんで、衝動に任せて原型が残ってた魔物の死骸に
かつての俺を食らったよろしくでっかいお口をグパァで魔物モグモグしタイム。
「ひどいことなんでたべて うまかた です」
まぁ普通に美味しいんだよね。特別美味いってわけでもないが。もう正直
このままバケモノモードで野獣いや邪神獣ライフもいいんじゃないかな?
と、言うとでも思ったか? カーチャンの料理と親父のパンが喰えるなら
こんな単なる「ただ生きてくための捕食」なんて必要ねえんだよ!!
「………トリマ最後ハ中二マシマシ俺様極大魔法的ナナニカヲ試シテ帰ロ」
こういう時はなりきりプレイで楽しんだほうが正気を保てるという持論を信じて
俺は人とかが居なさそうな方角…大体は空中に向けてイロイロと試すのだった。
<食後本番>
「………大分前とはいえ…随分と森が静かだな…?」
私の名はウィンダル・バルニークス。世界各国に支部を置く独立国際機関
「世界冒険・探求者ギルド」ではエース<A>ランクに属させてもらっている。
今回は大陸では知名度こそマイナーだが、知る人ぞ知る難所である
ギフト山脈における「未確認魔物発見を初めとした地域分布図及び植生調査」の
依頼が何の因果か回ってくることになった。何でこんなことになったのだろうか。
そんなものは簡単だ。東帝国ことツィーユアミカルナイオ神聖帝国のせいだ。
あの国がまた西方遠征を始めたせいでスペリオール<S>ランクの探求者が
軒並み所属国家からも要請を受け同ランク相当の特級騎士団と共に出払った為だ。
「…これも帝国のせいだな。脳内でまず自己紹介とか私もヤキが回ったか」
確かに私はSランクのスカウトにも匹敵する実力があると思っているし、
実際Sランカーとも何度も難所で諜報活動はして今日まで生き延びてきたさ。
だが、ギフト山脈だぞ…? ここはバラスト<B>ランクのソロないし
チーフ<C>ランク数人で十分だろう? Aの私が出張るほどか?
神話時代の超混成魔人帝国が地上にあった頃とか、ベヒモス種が
数年に一度縦断する時期なら兎も角…今なら意外とDランクパーティ複数でも…
「…流石にそれは違うか」
私は胸に忍ばせていた依頼書を改めて見やる。その書類には現代の聖女様と
その父上たる当代剣聖様が連名で個人家紋印が捺印されているのだ…。
「とは言え…な…?」
誰に聞かせるでもなく疑問詞が出るのは疑うのが仕事なスカウトの
職業病だろうか? それとも魔術の才能には恵まれなかった私だからこそ、
魔術においては初代から数えてまだ二代目で今もなお現役の賢者様に
勝るとも劣らぬとさえ謳われる聖女様を信じられない疚しさから来ているのか。
「…とにかく異常らしい異常を探せば良いんだったな」
>
異常となると…それこそベヒモス種の縦断の時期のズレとかだろうか?
しかし東帝国の西方遠征程度で動揺するほどベヒモスは雑魚ではない。
であれば…まぁ何かしらの新種の魔物が…陸走甲竜とか
ベヒモス種の宿敵種が出たりしたのを聖女様は感じ取ったのだろうかね?
「何がランテンドラッヘだ…バカめ…」
あんなのが早々現われてたまるか…旧東国連邦系の血が震え上がってしまうわ。
「しっかりしろ私…」
愛用の古代魔導器である砕魔氷銃槍ヨトゥンステークを撫でよう。
万が一ランテンドラッヘと鉢合わせる事になってもこれが私を守ってくれる。
「仮にベヒモス種なら動きは向こうが遅い…私のスカウト職の速度と合わせれば…
単独討伐は夢だとしても余裕を持って逃げ切るくらいは問題な―
―魔物ウンメェな
「?!」
思わず構えてしまった。へっぴり腰で。一瞬は間抜けそうな男の声だったのだが
ウンメェとか聞こえた音が異形の音階だったのだ。本能が警告音を鳴らしたのだ。
―ひどいことなんでたべて うまかた です
…今度は間抜け野郎の声音だった。無駄に聴覚スキルを高めた弊害か?
…この聞こえ具合だと…距離は…ふむ…徒歩なら30分弱…
「…樹海隠者蛇の潜伏」
…その呪文に私が身につけるチュニック型アーティファクト:隠形鱗衣が反応し
私の姿を透明化させ、存在感を確実に希釈していく…。
「…ヒトマネ草ならヨトゥンステークの錆にしてやる」
本能が警告音を鳴らすのだからこそ、その先には何かある。
スカウトの意地を見せろウィンダル。
<食後本番>
さて、イロイロ試すとか考えたものの…
「………ブッチャケ試ス必要アル?」
実は無いです。バケモノモードの身体能力だけでこの辺の魔物相手の勝率が
ぶっちぎりの100%なんで。これ以上自分のバケモノっぷりを知って、
それが今の俺に何のメリット与えるのか検討つかねえし。
「大体くろーどトみらりあガクッツクナラクッツクデ別ニ良イジャンヨ」
イケメンチート持ちにフツ/ブサメンが勝てるのはエロゲだけなんだよ!!
リアルな世界での圧勝はプログラムに存在しないんだよ!! そして俺にそんな
鬼畜趣味は無いんだよ!! …それに最悪チャm…血迷ってんじゃねえぞ俺ァ!?
それも別種の鬼畜枠だからなァ!? 血は繋がってなくても兄妹は兄妹ィ!?
今なら漏れなく炉心融解冥府魔道ルートもセットだゴルァ?!
いつまでも肉体に引っ張られてんじゃねえぞ中年魔法使いメンタルゥウウア!?
「…ツーカ…考エテミタラソモソモコノ実証ダッテソノ苛立チガ源泉ジャンネ」
俺、確かに喰われたのに何故かその俺を喰った側になってるしな。
「…思ワヌらんちたいむソノ1モ終ワッタシ…両親オ手製らんちたいむぱーと2モ
ソロソロ出来上ガリガ見エテキソウナ時間ダナ………トハイエ」
胸の奥で沸々とした気持ちを抱えたままってのは良くないよね。
海に向かってバカヤローとかクッソ古いけども、そんな感じの叫びでもして
スッキリとガス抜きするのは悪くないし誰も不幸にならないじゃない?
というわけで丁度晴れ間が上に見えたので思いつくままに息を大きく吸い込んでぇ
「………?」
何か俺の口の前にクソデカ魔方陣が出てるけど気にしないキニシナーイ。
「リアジュウナンテ地獄ノげろびーむニ撃チ貫カレテシマエバイイ!!」
文字通り何もない天空に向かってマジで出てきた極太ビーム入りの叫び。
あー……スッキリした。いい感じで腹も減ったし、昼飯パート2の為に早く帰ろ。
<食後本番>
足もスキルも全力だ。姿を確認した段階で「もう逃げろ」と本能が泣き喚いた。
「駄目だ…! アレはダメだ…! 地上に…! この世界に…!
存在してはいけないナニカだ!!」
ギルドは無論のこと、依頼主である剣聖様と聖女様父娘に賢者様と…
とにかく話が通せそうなお偉方全員に! 伝えなくてはならない!!
「リアジュウナンテ地獄ノゲロビームニウチツラヌカレテシマエバイイ!!」
あのバケモノが叫んだ言葉の意味は大半が分からなかったが、
「地獄」と聞き取ることが出来た。姿を確認するまではロクに気配さえ
感じさせないことがあのバケモノの恐ろしさをイヤでも理解させられた。
そしてあのバケモノが居た位置らしき場所から…魔術は落第生な私でも分かる。
アレは間違いなく禁呪クラスだ! 空を焼きつくさんというあのバケモノの
憎しみさえ感じ取れそうな輝きだった!
「聖女様…! 少しでも疑って申し訳ありませんでした…!」
そして今日ほどスカウト職で良かった! アレは無理だ! 一度発見されれば
逆立ちしようが土下座しようが逃げ切れるとは思えん!! 私は奔走った。
もう人類でいがみ合っている場合じゃない! 世界の存亡が掛かっている!!