表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Carnival  作者: ハル
9/68

体術と蛙

 次の日は足早に狩りへと出かける。

 一度ローラさんのもとに向かった後で、事前に酒場でクエストを受けてきた。まず最初の目標はラビットだ。

 酒場のクエストはプレイヤーレベルによって自動的にオススメが更新されるらしく、今日行ったらラビットの討伐はなくなって新たにトードの討伐が増えていた。

 ラビットはないかと二葉さんに聞いたら、オススメに表示されないだけでクエスト自体は受けれるらしい。

 ラビット、ストレイドッグ、トードの討伐クエストと、ストレイドッグの肉の調達を受けて再びハーク平野へとやってきたのだ。

 この三体は全部ハーク平野に出現するモンスターだ。レベル上げと同時に新しく取得した≪体術≫スキルの試しも兼ねている。

 ちなみにBPの10はSTRでなく、AGIに振った。心なしか、素早くなったのはきっと気のせいではないはずだ。


「さて、≪体術≫のレベル1スキルは強パンチか……」


 ――≪体術≫ 技能スキル

 素手での戦いを得意とする格闘術。

 レベル1 強パンチ

 適正武器 すで


 ――強パンチ ≪体術≫スキル ただのパンチではない。力を込めたパンチだ。

 対象単体にダメージを与える。基本値30 消費MP5



 ≪体術≫のスキル項目を見ながら、なんとなしに頷く。果たしてこの強パンチ、昨日のただのパンチとどこまで違うのか。

 スキルは基本的にMPを消費するが、強パンチの消費MPは5だ。≪歌≫に比べればなんてこともない。

 そういや、≪歌≫もレベルが5になって新しいスキルを覚えていた。


――魔攻の歌 ≪歌≫スキル その歌は聞く者の魔力を引き上げる。

パーティー全体のINTを増加させる。基本値5% 効果時間3分 消費MP30


 力の歌の魔力バージョンだな。俺には関係ないけど、レベル上げの一環で力の歌と同じように効果が切れたら使うようにするか。

 それじゃ、早速ラビットからいきますか。

 まだまだプレイヤーで溢れかえるハーク平野だ。昨日と同じように僻地へと行ってラビットを探す。

 やっぱこの辺まで来るとプレイヤーも少ない。

 そのおかげでやりやすい。

 最初のラビットを発見して先制攻撃を仕掛ける。


「力の歌!魔攻の歌!」


 歌スキルを掛けながらラビットへと走っていく。

 そもそもラビットへ殴ることに対して抵抗が少しあるのは、動物であることより前に、ノンアクティブが原因なんだよな。

 向こうから敵意を剥き出しにしてくれば、反撃することに抵抗も感じることはないだろうし。

 そんなことを思いつつ、初の体術スキルを使う。


「強パンチ!」


 当たり前だが、俺のパンチはラビットを捉える。

 昨日のようにただ殴るとは違い、頭の中でスキルを発動することをイメージしたそのパンチはラビットに当たった瞬間エフェクトが発生してラビットはのけぞった。


「これが攻撃スキルか……」


 一瞬エフェクトにビビったが、問題はない。

 肝心のラビットのHPは三割くらい減っていた。

 おぉ!昨日が一割だったから、三倍の威力か。さすがスキルだけあるな。

 心の中でニヤッとしながらも、ラビットが戦闘態勢になるのを観察していた。

 もはや単調なラビットの攻撃など恐れるには足らない。

 そのまま強パンチを二回与えて、最後に普通に殴れば予想通りラビットは消滅していった。


「よし、これならレベル上げも少しは良くなりそうだな」


 ≪体術≫は正解だな。まあ早計な考えでもあるけど。

 とりあえずラビットを後9体狩ったら、今度はストレイドッグに行こう。







 結論から言えば、ストレイドッグも楽に勝てることが出来た。

 強パンチで四割くらい削れたので、三回当てれば倒せるのだ。未だにあの可愛い鳴き声に戸惑うこともあるが、攻撃パターンは体当たりと噛みつきの二種類しかない。

 そうと分かれば、対処するのも簡単だ。

 AGIを上げたことも効果が出たのか、攻撃も若干避けやすく感じたしな。

 やっぱSTRよりAGI優先のが良さそうかな?

 スタイルの都合上、HPやVITを上げる気はさらさらない。そう考えると、AGIを上げて回避を優先すべきだと思ったからSTRは保留にしたんだ。いくら一発が重たくても、モンスターからダメージを喰らって死んだら意味ないしな。

 それにステータスの中でも命中や回避は隠れステータスとして存在している。

 どちらも主に効果が重くなるのはプレイヤースキルによるものなのだ。

 同じ攻撃でも、運動神経が良い人と悪い人では当たったり当たらなかったりする。それでもシステム的な絶対的に当たる攻撃や回避も存在するらしい。

 だけどそういうことから、現実でも運動神経が良くない人は後衛になるスタイルを選ぶ傾向にあると聞いた。

 その点、俺は得意というわけではないが、悪いわけでもない。特に相手のパターンを読み切れば避けるのは容易いのだ。ここは回避よりに選択したのも悪くないはず。

 そして肝心のストレイドッグは割と簡単に10体倒すことが出来た。昨日とは明らかに効率も違う。MP回復も一回間を挟んだだけだし。

 だが、落とし穴だったのはクエストの一つ、ストレイドッグの肉の調達だった。

 昨日の兄貴と行った食事処で食べた肉がストレイドッグのものだと知った時、いろんな衝撃があったもんだ。

 まさか、野良犬の肉を食べる日が来るとは……。

 いやまあ、本当に犬肉の味かどうかは分からないけど。

 でも美味かったんだよな。それはもう、もう一度食べたいくらいには。

 だから興味本位でクエスト欄にあったから受けたんだが、それはもうドロップ率が低い。

 10体狩って2個しかドロップしなかった。

 必要なのは10個なので、あと約40体は倒すことになったのだ。

 あれこそ苦行の他ならない。おかげで≪体術≫もレベル5になって新しくスキルを覚えたからいいんだけどさ。

 覚えたのは強キック。説明することもない、パンチがキックになっただけだ。

 ちょっと微妙に思ったが、バリエーションが増えたことには変わらない。プレイヤーレベルも5まで上がったし、良しとしよう。

 そんな楽観的な考えから、次の目的であるトードの生息地までやってきていた。


「蛙……と言ってもいいのか?」


 現実の数倍以上はあるよな。逆に現実のサイズだったら攻撃が当てにくいからこれくらいでいいんだけども。

 体長30センチぐらいのトードは呑気にゲコゲコと鳴いていた。

 どうやらこいつもノンアクティブモンスターらしい。

 艶のある体皮を観察していると、確かにこれを直接殴ることを憚る人は多いことだろう。俺もちょっと遠慮はしたい。

 でもまあ攻撃手段が殴ることしかないし、そのためなら殴れるだろう。後、蹴るか。

 トードの生息地はハーク平野の東にある小川が流れている地帯にあった。

 綺麗な川と裏腹に、トードは広く分布している。

 とりあえず戦ってみないとな。

 文字色は緑。つまりはレベル的には互角ということだ。歌を掛けて、攻撃を仕掛ける。


「強パンチ!」


 エフェクトと共にトードは後ろへ吹き飛ばされる。けれどHPバーは二割削れただけだ。

 さすが、ストレイドッグより上だけはあるってことか。

 まあ多分俺が弱いだけでもあると思うけど。

 トードは臨戦態勢に入りながらも未だゲコゲコ鳴いている。

 舐めてんのか?

 そう思った瞬間、トードの口から小さな泡が飛んでくる。


「……ッ!?」


 意外と早く、避ける間もなかった。

 その攻撃を喰らうと俺のHPは四割減っていた。

 強ッ!?

 初の遠距離攻撃だ。驚かない方が無理だろ。

 トードは呑気に鳴いている。


「くそっ、こんなんで倒れるわけにはいかないだろ!」


 泡の攻撃に気を付けながら再度トードに接近して、今度は強キックをかました。

 削れるHPは強パンチとそう変わらない。そのまま追撃して強パンチを入れる。

 それと同時にトードは起き上がり攻撃の姿勢を見せた。

 また泡か?

 そう警戒するのは当然だったが、トードの攻撃は同じ口からであったが、今度は長い舌が出てきたのだ。


「うぇっ…!」


 気持ち悪ッ!

 舌が俺を舐めていったが、それは攻撃判定だった。泡ほどでもないが、二割削れる。

 鳥肌が立ったような気分だった。


「ったく……こんな相手に苦戦するなんて」

 

 俺のHPは約四割だ。最初の泡の攻撃を喰らったら死ぬかもしれない。

 余計に注意をしながらも、また強パンチを繰り出す。

 幸い素早さは低いらしい。攻撃はよく当たるし、よくよく観察してみると泡の攻撃と舌の攻撃でモーションが少し違っていた。

 それを見切った後はもう楽なモンスターに成り果てる。

 もはや俺の敵ではでなかった。

 最初の苦戦を忘れるほど、楽に10体の討伐を終えたのだった。


スキル紹介 ≪瞑想≫


――≪瞑想≫ アビリティスキル

瞑想することにより、最大MPの20%を回復させる。

CT:10分

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ