表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Carnival  作者: ハル
6/68

次のモンスター

 やっと終わった。

 思いの外時間は掛かったもので、ラビット10体の討伐はようやく終わりを告げた。

 戦闘時間もそうだけど、HPとMPの回復が予想外だったな。戦闘中に自然回復しないのは知っていたけど、合間の休憩でこんなに長く掛かるとは。回復量が微々たるもんだったし。

 というか、歌のスキルの消費MPが多すぎんだよ。30ってなんだよ、3回しか使えねぇじゃないか。

 いや、4回か。レベルも上がったし。

 ラビット10体でレベルは3まで上がった。自動的にMPも20上がって120だ。

 けどこの先のスキルも考えると絶対少ない気がする。BPが20あるしどうするか。

 まだまだレベルも上がりやすいし、とりあえず全部MPにでも振っとくか。それでストレスも少しは発散出来るはず。


MP 290/320


 よし、これで満足。歌のレベルも上げやすいはずだ。

 スキルも見たら≪歌Lv4≫≪声量Lv4≫≪魅力増加Lv3≫となっていた。もうすぐで≪歌≫もLv5か。

 区切りもいいし、そこまで上げてこうかな。

 そうと決まれば善は急げ。

 どうせなら別のモンスターに挑戦しよう。ハーク平野だとラビットの他は確かストレイドッグとトードだったはずだ。

 まずはストレイドッグか?

 二葉さんが示したクエストにトードはなかったはずだから、きっとストレイドッグの方が弱いと当たりをつける。

 けどもうちょい奥の方かな。この辺はラビットしか見てないし。マップの探索がてら、歩くか。

 しかし、こうして見るとプレイヤーだらけだな。正式サービスから数時間しか経ってないのだから当たり前っちゃ当たり前だけどさ。

 至る所にプレイヤーが狩りをしている。その大体がやっぱりスタンダードな武器を扱っていた。

一番多いのは剣か。次いで魔法使い。やっぱりこの二つは圧倒的に多い。後は槍や弓、短剣を使ってるプレイヤーが散見した。

 イサナギの言っていた通りだ。いくら人それぞれのスタイルがあるといっても、どうしてもスタンダードの枠組みにあたる人がほとんどだ。俺みたいなマイナーなタイプはきっと少ないのだろう。

 そんな時、ふと一人のプレイヤーに目がいった。


「……ギター?」


 間違いない。そのプレイヤーはギターを振り回してラビットと戦っていた。

 金髪の、いかにも今風な男。けれど年は同じくらいか。一見近寄りがたいが、その明らかなマイナーな雰囲気に興味があった。

 そういえば、まだ知らないプレイヤーと声を交わしたことはなかったな。

 プレイヤーならイサナギとミカンだけだ。後はローラさんたちNPCだけ。

 せっかくのVRMMMOだし、話しかけてみてもいいよな?ちょっと緊張するけど。

 そう思って戦闘中の男に近づこうとしたら。


「あ」


 ラビットの体当たりが見事に男に当たった。

 瞬間、男はポリゴンエフェクトのように消えてその場からいなくなる。

 ラビットは初めから何もなかったのように、草と遊んでいた。


「……」


 よし、見なかったことにしよう。

 あれが他人から見えるプレイヤーのがやられる場面だったとしてもだ。

 なんだか惨めで仕方ない。

 ちなみにこのゲームのデスペナルティは30分間、ステータス半減、状態異常疲労となる。疲労は文字通り行動に関して重しを課されたような動きになってしまうらしい。VRだからこそ、状態異常はかなり厄介だと聞いた。


「さて、ストレイドッグを探すか」


 俺は何も見てないしな。

 多分だけど、あっちの木々が生えている辺りがあやしい。今いるエリアより雰囲気が違うように思えたからだ。

 そこまで歩くと、予想は的中。ストレイドッグを狩るプレイヤーたちの姿が見えてきた。

 ここも盛況のようである。

 さて、やっぱり人の少なそうな場所でもまずは探すか。この辺りは人がいっぱいいてどうしても戸惑ってしまう。

 少し離れ、一匹で歩いているストレイドッグを発見する。


「あいつにするか」


 ターゲットを決めたと同時に、ストレイドッグも俺の方を向いた。その瞬間に奴は走ってくる。

 アクティブモンスターか!


「力の歌!」


 迎撃するように俺は構えた。といっても、攻撃手段は最初から何も変わりはしない。ストレイドッグの攻撃を避け、殴るだけだ。

 だけどこの時点で俺は相手を見くびっていた。


「うぉっ!?」


 気づいた時にはストレイドッグは眼前に迫っていたのだ。ラビットとはスピードが大違いだ。

 体当たりをしてきたストレイドッグをかろうじて避けたが、相手はそのまま数メートル先に走り去って、再びこっちへ向く。

 殴る暇すらなかった。


「一気に難易度上がりすぎじゃね?」


 そもそもにラビットが弱すぎたのか。

 ストレイドッグは再び走り出し、体当たりの姿勢を見せた。

 今度こそ、反撃を入れようと身構える。

 ストレイドッグが跳び上がった瞬間に、俺は態勢をずらして奴目掛けて思いっきり殴った。兎に比べれば、殴りやすい相手だ。慈悲もなかった。

 まぁ、当たらなかったわけだが。


「早すぎだっつの!」


 本当にこいつ野良犬かよ。むしろ俺の速さに問題があるのか?AGIはからっきしだし。否定できないとこが怪しい。このゲームはステータスやスキルでシステム的な補正も受けるみたいだし。

 とりあえずもう一回だ。

 馬鹿の一つ覚えのように三度目の体当たりを仕掛けてきた。今度は早めにっと。


「キャンッ」


 当たった!でも……


「可愛い声で鳴くんじゃねぇ!やり辛いだろうが!」


 ストレイドッグのHPバーを見たら二割ぐらい減っていた。

 ん?もしかしてラビットより防御力は少ないのか?その分素早さが高いってやつ?

 あと四発ってとこか。

 攻撃が当たったからか、若干奴は警戒の姿勢を見せている。

 今度はこっちから行くか。

 体当たりに注意しながら、俺は走り出してストレイドッグへと振りかぶる。


「おら!」


 攻撃は当たった。けれど、反撃とばかりにストレイドッグは俺の肩に噛みついてきた。

 痛みは大して感じはしない。痛覚がある程度遮断されているからだ。けれど俺のHPは六割ぐらいに削られている。


「ラビットに比べたら攻撃と素早さが高い分防御は低いってことか」


 死ぬリスクは高まるが、慣れれば一体の戦闘時間はこっちの方が短そうだな。

 さすがはストレイドッグだ。

 互いにあと二、三発入れた方が勝利する。単純明快な話。


「負けねぇ!」


 なんか変なスイッチが入ってるのは認めよう。だがここは男として引けん。

 野良犬とのタイマンマッチが幕を開けた。




 まぁ、すぐに閉じたけど。

 辛勝したのは俺だ。

 おかげでプレイヤーレベルが4に上がり、≪歌≫もLv5へと上がっていた。



キャラクター紹介 ローラ

性別:女

年齢:29

身長:158cm


始まりの街でタクトが出会った女性NPC。歌に対して何かしらの想いを抱いている。

六歳の双子の兄妹と三人で暮らしているが、王都には愛妻家の夫がいる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ