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Carnival  作者: ハル
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新たな装備とナルシーの噂

「お待たせ。これが約束のウルフ装備一式ね」


 俺よりも若干遅れたヘレンさんがトレードを申し込んできた。

 すでに素材とお金も渡しているから、後はこれを受け取ることだ。


「ありがとうございます、ヘレンさん!」


 新しい装備。どれくらいの効果なのか。


右手:なし

左手:なし

頭:狼革のフード

胴:狼革のベスト

腕:狼革のグローブ

足:狼革のブーツ

アクセ:狼牙のネックレス

アクセ:なし



――狼革のフード

狼革で仕上げられたフード。意外とモコモコである。

DEF+25

AGI+1


――狼革のベスト

狼革で仕上げられたベスト。暖かく、防寒にも向いている。

DEF+30

MDEF+15

AGI+2


――狼革のグローブ

狼革で仕上げられたグローブ。見た目は一級品。

DEF+20

AGI+1


――狼革のブーツ

狼革で仕上げられたブーツ。俊足な気分になれる。

DEF+20

AGI+1


――狼牙のネックレス

狼の牙から作られた首飾り。お守りにもなっている。

AGI+2


セット効果:AGI+3、移動速度微上昇


 まじか。見事に全ての装備品にAGIの補正値がついている。

 ステータスの補正が付いている装備はそれだけで優秀なものなのだ。当然それを製作できるヘレンの腕も一流なのが分かる。

 しかも頼んでいなかったアクセまで一つ付いていた。


「最近≪骨細工≫も取ってね。ネックレスの方は練習用なんだけど、タクトくんアクセサリー持ってないって言ってたからこれは私からのプレゼント」

「いいんですか?」

「いいのよ。それにそんなに強くないから」


 俺からすれば十分強いんだけどな。しかもセット効果なんてのも付いてるし。全部合わせればAGIが10も上がっている。普通に強いだろ、これ。


「本当に助かりました」

「気に入ってくれたならいいのよ」


 いや、ホント女神。俺なんかに声を掛けてくれたおかげでこの装備も手に入ったし、それに見合うような成果もちゃんと果たさないとな。


「いいな、タクト。俺もヘレンさんに装備を製作して欲しいくらいだ」


 一緒にここまで来たエッジさんまでもが素直にそう言ってくれるのだから本当に大したものなんだろう。


「残念ね。エッジさんのは私の≪革細工≫じゃ無理だもの。それにあなたの装備を勝手に作ったらアイリーンさんに怒られるわ」

「いやいや……」


 ヘレンさんの言葉はからかいを含んだものであったが、エッジさんは明らかに嫌そうな顔をしている。

 彼らの間に度々上がるアイリーンという名前は――当然ギルド名からしてもギルマスと想像される――どうにも人物像を掴めない。少なくとも大変に癖のある人物なのは分かっている。なにせエッジさんがこうして嫌がる顔を見せるくらいだからな。


「それで、タクトくんはすぐに地下水路へ行くの?」

「いえ、まだパーティーが後一人足りなくて」


 ヘレンさんには俺の予定も話しているので、ただ興味本位に聞いてきたんだろう。そこにエッジさんも一緒なのだと知ると少し驚いてもいたが。


「そういや、タクト。さっき追われてるって言ってたのはもう大丈夫なのか?」

「追われてる?」


 そこ蒸し返します?普通に忘れ去ってたのに。しかもヘレンさんの目が鋭くなったのが分かったし。

 これは誤魔化しが効きそうにもないな……。


「どういうこと、タクトくん?お姉さんに説明して欲しいわ」

「いやまあ、大した話じゃないんですが……」


 仕方がなく、喫茶店で出会ったプレイヤーの話をした。

 無視したのは確かに悪かったけど、あれは避けられなかったのだ。もし普通に対応してたら今ごろ精神的に殺されていた気がするくらいだからな。

 しかし思わぬところで情報が得られた。俺が見たプレイヤーの特徴を少し話しただけのはずが、ヘレンさんは当たり前のようにその存在を特定したのだ。


「あぁ。【ナルシー】のことね」


 え?【ナルシー】??

 俺の頭は一瞬無になった。

 その言葉の意味はエッジさんにも伝わったようだ。


「そういや聞いたことあるな。【ナルシー】って名前」

「まあ一応有名プレイヤーだもの」

「えっと……有名なんですか?しかも【ナルシー】って二つ名ですよね?てことは実は強い人なんですか?」

「ううん。有名は有名だけど、強くはないはずよ」


 あっけらかんとヘレンさんはそう口にした。

 あれ?二つ名ってのは有名な強いプレイヤーに付けられるんじゃないのか?

 そんな疑問を抱いたのだが、ヘレンさんがそれを説明してくれた。


「まあ大体はそうなんだけどね。でも実際はどっちかと言うと有名なプレイヤーってのが正解ね。【ナルシー】はその有名だけど強くはないっていう最たる人物。他にも戦闘を見たことがない未知数な【情報屋】とかもいるわ」


 なるほど。【ナルシー】っていうのは勿論、ナルシストってことだよな。めちゃくちゃそれっぽかったし。

 インパクト絶大だもんな。そりゃ強いとかどうの以前に有名にもなるわ。


「とにかくタクトくんが逃げたのは正解かもね。【ナルシー】は話が通じないってことでも有名だし。まあいろんな意味で話題には欠けないから人気はあるにはあるんだけどね」


 ヘレンさん。その言葉で俺の罪は浄化されました。ありがとうございます。

 しかしそんな有名な人だったとはな。あの時に何を言っていたかすらもう覚えていない。

 まあ関わることはなさそうだし、俺も遠くから見守らせてもらうことにしよう。

 そう思ったのも束の間――


「ああっっ!!見つけたぞ、さっきの少年よ!!」


 なんか、ちょっと聞いた声が聞こえてきた。やけに脳内に響く声だ。


「あら?噂をすれば、かしら……」

「もしかしてあれが……?」


 ヘレンさんとエッジさんは二人してその声の主を見ていた。

 いや、俺は見ない。見ないぞ。

 その男の登場に、周囲は一変。男を対象に興味と野次が一斉に降りかかっていた。そんな男は狙いを定めるかのように真っ直ぐ、真っ直ぐと、


「少年!そう照れるもんじゃない!僕の視線が美しすぎて逸らしたいのは分かるがまだ話は終わってないぞ?」


 そう、俺の肩を掴んでいた。


キャラクター紹介 ヘレン

性別:女

身長:163cm

レベル:24

スタイル:革職人

スキル:≪革細工≫≪生産≫≪器用さ増加≫≪運増加≫≪採取≫≪伐採≫≪骨細工≫≪杖≫≪土魔法≫≪魔力増加≫


王都で出会った≪革細工≫を得意とする生産プレイヤー。しっかりとしたお姉さんタイプで、タクトのことを気にかけている。

本当は滅多にいない格闘スタイルとして見ており、それに関連とした装備を製作したい一面もある。

生産ギルドアイリーン商会に所属。


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