9 ~最終話~
呆然としながらゆっくりと体を起こす俺に、彼女が一歩一歩近づいてくる。
金髪の長い美しい髪が揺れる。
夜の色をもつ瞳からは涙が溢れ出し彼女の滑らかな頬を流れ落ちていく。
「ええ、ただいま。ライオネル・・・私ね、ただのナタリアッサになったの。もう貴族のお嬢様じゃないわ。貴方を愛するだけのただのナタリアッサよ。ねぇ、ライオネル・・・愛してるわ。本当に大好きよ。ずっとずっと・・・愛している・・・」
涙を流しながらも微笑み、愛を囁く彼女の美しさは、この世のものとは思えない
「本当に・・・小説のようだ・・・」
夢のようでいまだに頭が回らない俺から思わず漏れたつぶやきに、ナタリアッサは小首をかしげ俺の前に立った。
「小説・・・?ライオネルったら・・・私は現実の人間よ?愛しい男の前に立ち、私を抱きしめてくれることを願うだけのただの恋する女よ」
「・・・・・・っ!」
考えるよりも先に体が動いた俺はナタリアッサの腕を強引に掴み引っ張りこむと、己の腕の中に彼女を閉じ込めかき抱いた。
彼女の香りが鼻腔をくすぐる。
・・・何も言葉が出なかった。
失ったと思った彼女が腕の中にいる現実をようやく受け入れられた俺は、ただただ咽び泣いた。
そんな俺の背に腕を回した彼女は言う。
「ライオネル・・・ねぇ、教えて?言葉にして?もう身分差なんてないわ。だからいいでしょう?私に言葉をちょうだい。ずっとずっと欲しかったのよ・・・何よりも・・・欲しかったのよ」
部屋の外から様子を伺いにきていたミーシャらは、その光景を目にし止まったはずの涙がまた流れるのを感じた。
愛の言葉を強請る美しい女を、逃がさないとでもいうように強くかき抱きながら、止まらぬ涙とともに長年伝えられなかった想いを言葉にする美しい男。
「・・・っ、愛してます・・・ずっとずっと・・・貴方が欲しかった・・・っ・・・」
その光景はまるで時が止まったかのような幻想を抱かせるほど愛にあふれ美しく尊いものだった。
「・・・私のすべてを貴方にあげるわ ライオネル。」
「ならば絶対にもう離れないでください・・・お嬢様」
「あら ライオネルったら。もう私は貴族じゃないのよ。ナタリーかナタリアッサと呼んでほしいわ」
「そういえばそれは一体どういうことなのですか?もう貴族ではないとは・・・それに何故生きて戻れたのです?」
「・・・全てあとで詳しく説明するわ。それよりも今は貴方の声で私の名が呼ばれるのを聞いてみたいの」
「・・・ナタリアッサ」
名を呼ばれて嬉しそうに、そして幸せそうに笑うナタリアッサにミーシャたちは微笑みながら、そっと扉をしめるのであった。
END
復帰作第1弾
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