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カタストロフ  作者: ボヤージュ
1/8

第1話

初投稿作品です。

ゆっくり執筆していこうかと思っています。

「はぁはぁ…。」



暑い、疲れた。

ちょっと今日は欲張り過ぎたか?



俺は、太陽が傾き始めた、空を仰ぎ見て休んでいる時間はないと判断する。



大きく縦に長い、これでもかと膨らんだ袋を担ぎなおし、ヒビが入ったアスファルトの道を踏み締めて先を急いだ。



紫外線や放射能から身を守るとは言ってもこの防護服のおかげで暑いし息が詰まる。

それでも俺みたいな探索者は防護服を着ないと地上では活動できない。



若干茶色がかった視界にもうんざりする。



ガスマスクと呼ばれる類の頭に装着している、ヘルメットに俺は片手をやり、視界確保の為に付着していた埃や土の汚れを撫でるように落とした。



それによって色が鮮明に付く光景に僅かな解放感を覚え、俺は腕に装着している腕時計を見る。



「なんとか夜までに辿り着かないと。」



苦労して集めたこのお宝達をむざむざ、放り出す訳にはいかない。



見渡す限り、半壊したビルや住宅、打ち捨てられた乗り物の数々が瓦礫の街を形成している。

俺は厚手の防護服の上から装着している腕時計に備わった予備機能を実行する為の小さなボタンを押す。



すると、腕時計から発せられた緑色の光が周辺の立体地図を映し出した。

赤く点滅しているのが現在地。つまり俺だ。

そして、この瓦礫の街の北東にもう少し進んだ所に目的地がある。



地図で見ると近く感じるが実際は徒歩で約1時間ぐらいだろう。



俺が腕時計に映し出れた立体地図で道を確認していると、カランカランと缶が転がるような音が聴こえてくる。



直ぐに腰にあるホルスターから拳銃を抜き、音がした方角に片腕で抜いた銃を構えた。



視線と銃を音が鳴った方角から離さず、ゆっくりと肩に担いだ荷物を地面に下ろし、両手で拳銃を構え直す。



今の音は気のせいか?いや、確実に音はした。

風か?それとも鳥か?それ以外だったら……ゴクッ。



唾を飲む音が嫌に大きく、心臓の鼓動が速さを増して、その音が俺の耳まで届く。



俺の予想とは違ったが、瓦礫の隙間からぞろぞろと5人の人間が両手を挙げて出てきた。



「だ、誰だ。」



俺は銃の矛先を先頭に立つ人物に向けて震えた声で問う。



一番初めに頭に過ぎったのは盗賊という野蛮な連中だった。

話に聞いた事はある。

探索者を狩って持ち物を奪う最悪の連中だ。



「御坊ちゃまお迎えにあがりました。」



先頭の人物がそう言うと俺は安堵の息を漏らし、向けていた銃を下ろす。



「親父の差し金か。なんで俺の居場所が分かった?」



「御父様は貴方の腕時計に発信機を付けていましたから我々はそれを追ってきたのです。」



淡々と答える男性に対し舌打ちをした俺は下ろしていた荷物を先頭の人物に投げる。



「お宝だ。持っててくれ。」



それだけ言うと、防護服を着た5人のライフル銃を持った者達を一瞥し、拳銃をホルスターに戻すと歩き出す。



「どちらへ?私達は無理矢理連れて帰る許可も御父様から頂いておりますが。」



「帰るに決まってるだろ。」



それを聞いてか聞かずか荷物を投げた人物以外の4人が俺の周りを囲んで歩く。



いい加減鬱陶しい。

そんな事を思い舌打ちをする俺は歩く速度を上げる。



暫く歩くと瓦礫のビルの合間に見上げる程の金属の壁が見えてきた。



その下には二台の全自動で動く、迎撃用固定レーザーが来るものを静かに見張っている。



近づく者のIDを半径300mから識別し、登録が無い者には警告を発し、或いは犯罪者として登録された者や人間ではない者を蜂の巣に変える。



俺達はその2台の合間にある金属の壁の窪みへと入る。



”IDスキャン、網膜スキャン、身体チェックを開始”



すると抑揚の無い機械的な音声が流れ、俺を含む6人に緑色の光の線が全身に当てられた。



”放射能汚染規定値、認証完了。”



その音声が流れた直後に目の前の鉄の壁がスライドする。



俺達6人はそのスライドした壁の先にある部屋に入ると、先程スライドした鉄の壁が閉まり四方を壁で囲まれた部屋で、ただ次のアクションを待っていた。



少しその場で待っていると機械の駆動音が聴こえ、押し上げられるような感覚を身体で感じる。



「このエレベーターはもっと広く改装するべきだな。」



6人が入ると狭く感じる空間に俺は皮肉を漏らす。



「失礼ながら御坊ちゃまそれは無理です。このエレベーターを地下に通した際の設計がこれなので、地上から地下までの穴を更に広げるのはかなり無理があるかと。」



そんなことは分かってるんだよ。

俺が言わんとしてる事はそんな事ではない。



「あ、それコレクションに加える物と売り用の物もあるから、袋ごと俺の部屋に運んどいてくれ。」



それを言い終わるとタイミングよく扉がスライドし、白一色の両脇に細長い窓がある通路が現れた。



両脇の細長い窓の先に見えるのは作業服を着たエンジニアと、銃を持った兵士だ。



「進んで下さい。」



通路にマイクを使った男性の言葉が流れ、言われた通りに進んで行く。



「止まって防護服を脱いで下さい。」



俺や後ろに控える5人は指示に無言で応え手に持った荷物と銃を床に置き、防護服を脱いだ。



「はあっ!やっと息苦しさから解放された!」



その場で俺は解放感から背伸びをし、深呼吸をする。



「では除染を開始します。」



両脇の壁に取り付けてある小さなパイプのような突起物から白い煙が噴射される。



時間にして数十秒それが全身に隈なく吹きかけられ、噴射が止まると「除染は完了しました。お帰りなさい。」という言葉と共に通路の先の扉が開かれる。



「防護服を預けたら直ぐに御父様が来るようにとの伝言を預かっています。」



並んで歩き出した荷物を持った筋肉質な男性が話しかけてくる。



「ああ。」



扉の先も見慣れた白一色の通路が続き、扉をくぐって少し広い場所の脇に座っている係員の前の机に腕時計とホルスターを外した防護服を置いた。



「もう少し動きやすい防護服はないのか?」



係員は此方を見て「これ以上薄くすると死にますよ。」という言葉が返ってくる。



「御坊ちゃまお言葉ですが「分かってるから、冗談だ。」」



親父の差し金である男はこう言いたいのだろう。

これ以上地上に出るなと。



ああ。うざい、息苦しくて堪らない。



俺はなにも言わずに歩き出した。

後ろから5人の足音が聞こえてくる。



親父はもっと息子に自由を謳歌させるべきだ。

こんな壁に囲まれた場所になにがあるって言うんだ。


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