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十三話 戦闘開始。 集う四人衆





 戦闘開始直後、先に動いたのはフェンリル傭兵団の面々だった。


「全力でいくさね!」

【術式:〝紅蓮乱舞〟発動】

空中画面の表示と共に、紅は炎に包まれた。めらめらと燃える炎は、熱風となって周囲を威圧する。


「火炎系術式か!」


 戦士たちの一人が言った。彼らは前面に長方形の半透明型防御術式を展開し、防御の構えを取る。

 彼女の仲間も各々防御術式を展開した。皆、攻撃に移る気配はまだ見せない。


「焼け焦げな!」


 紅は拳に炎を集中させ、猛然と突進し戦士たちと激突した。

防御術式と炎が衝突。爆炎とスパークが発生し、風塵が舞う。しかし、炎の威力はかき消され、紅の拳がむき出しになった。

直後、紅の上段から弓状の刃が襲いかかる。なんとか身をひねる事で回避した彼女だったが直後、横薙ぎの刃が紅に迫った。


「……くっ!」


 刃が身に当たる寸前、突如斧の軌道が変わった。力を失ったように地に落ちたのだ。


「……!」


他の戦士が見たのは、膝をおり崩れ落ちる仲間と、その横にたたずむ男だった。

黒髪をなびかせ、たたずむ男の表情には薄い笑み。


「先走りすぎだよ、姉さん」

「弟を信用してやってんだ。これも作戦の内ってね」

「また都合のいいことを……」


 軽快な会話をする二人とは別に、他の戦士たちは驚愕を得ていた。


「まさか、攻撃の隙をついて懐に潜りこんだのか!?」

「バカな、こんな密集陣形だぞ!? しかもさっきまでそこに……」


 しかし、驚愕も一瞬だった。戦士たちは陣形を組み直し、崩れた仲間を後方へさげていく。表情も引き締まったものになっていた。


「もう切り替えたのか。流石はベテンラン集団ってことかな。――ちなみにさっきのは、ただの〝技術〟さ。姉さんに意識がいってる間に防御術式を解除、踏み込んで懐に潜っただけ」

「バカげてる……」

 

攻撃が入り乱れる密集陣形で、しかも、その先頭者の懐に潜り込むなんてまともではない。


「あんまり、俺たちを舐めないでね? じゃなきゃ死ぬのはそっちだよ?」


 言葉と同時、黒は駆けた。人の合間を縫って移動し、拳で相手の装甲を強打する。衝撃は鎧を貫き、屈強な筋肉までもを揺るがす。

攻撃を受けた戦士は身を折り、数歩後ろへよろけた。


「おおおらぁあああああ!!」


 紅も黒に合わせる形で突進を開始。術式による炎を拳に纏わせ、殴打を繰り返す。


「姉さん、もっと賢くやろうよ。それじゃ通力の無駄だよ?」

「こっちの方が性にあってんのさ。無駄口叩いてないで、ちょっとは数を減らせるよう努力しな」

「はいはい……!」


 軽口を投げ合いながらも、二人の動きは止まらないし鈍らない。確実に手じかな獲物を素手で無力化していく。しかし、熟練の戦士たちも負けてはいない。


「火炎は防御術式で無効化できる、拳も覚悟していれば大した威力ではない! 陣形を立て直し、攻撃に移れ!」


 一人の声に皆が応じる。崩れかけていた陣形は正統性を得て、戦況がふりだしに戻った。

「お待たせしました!」

「ようやく参戦!」


 途端に七華と鷹人が、術式陣を掲げて戦線に加わる。二人が展開しているのは雷撃系術式。先ほど真冬が使った暴徒鎮圧術式の実践タイプだ。


「なるほど、先の二人は術式発動の時間稼ぎか。戦術的には間違っていないな」


 ドミニクの高圧的な発言を無視。鷹人と七華は術式を発動する。

【術式:電儡(でんらい) 発動】

 二人は手のひらの術式陣を地面に叩きつけた。同時に、青白い線が鋭利な軌道を描く。

並の人間なら後遺症を残すレベルの高圧電流が、地面という伝導体を通して敵へ向かう。

戦士たちは即座に防御術式を発動するが、電撃のほうが早い。十数人の赤鎧たちは、全身に青白い帯を纏わせ、声を上げる。

この術式は、帯電性を持つ。そのため、苦しみは一瞬で終わらない。

 これで戦士たちはしばらく動けないはずだ。


「なっ……!?」


 しかし、現実はそう簡単にはいかなかった。

戦士達は、最初こそ苦しんでいたものの、次の瞬間には瞳に闘志が戻ったのだ。


「おぉおおおおおおおおおおおおッ!!」


そのまま武器なしの突進の構えを取ると、鷹人たちに突っ込む。全員急な出来事に回避しきれず、まともに食らった。


「がぁあ……ッ!」


 相手に絡みついていた電気と衝撃が鷹人たちを襲う。戦士たちは彼らに抱きつくような姿勢を取り、絶対に離さない。

 

「こ、のやろ!」


 紅は術式を再度展開。全身に炎を纏わせ、一気に爆発させる。熱風が吹き荒れ轟音が大空に響く。 

 至近距離での爆発。赤鎧たちは投げ出される姿勢で吹き飛ばされた。

鷹人、七華、黒の三人に纏わりついていた戦士も爆風の煽りを受けて飛ばされる。三人は何とか踏ん張った。周りを戦士に囲まれていたおかげでもあるだろう。


「これはキツイですね……」


 七華が立て直しかけている敵を見て呟く。


「泣き言は後にしようぜ。それに、俺はまだまだ余裕だ」

「同感。通力もまだあるし、気力もある」

「……こういう時は二人共男らしいんですよねー」

「同感さね。普段もこうだといいんだが」


 辛いときこそ、軽口を投げ合っておく必要がある。

現状、お互いが疲弊したまま、ほとんど何の成果もなく戦闘が続いているのだ。精神的にもキツイ。


「この数でも押し切れないか、柊での活躍も嘘ではなかったんだな」

「しかも武器なしって。この歳でどんだけ修練積んだんだか……」


 敵勢からもちらほらと声が聞こえた。

ベテラン集団には常識的な人間が多いようだ。

 両者一拍の間を得たあと構えを取り、臨戦体勢に入る。第二ラウンドが始まろうとしていた。

場の緊張は高まりを見せ、音一つない。あるのは風と視線だけである。


誰かが息を吐いた。

瞬間、全員が動き出し、咆哮を響かせ得物を振りかざす。紛れもない戦いだ。

 各々術式を展開し、身体強化や攻撃術、防御術を発動させながら敵へ突進していく。


「ひひひっ、手こずってるぜアイツら。手を貸すか兄弟?」

「何言ってんだ兄弟。手を貸すんじゃなくて獲物を横取りするんだよ」

 

 が、乱入してきた声があった。同時に凄まじい圧力(プレッシャー)。物理的なものではなく、狂気と通力による本能を刺激させる威圧だ。

そのせいで状況が一時中断。全員が背後へ跳躍し一旦距離を取る

声の方角には二つの影。身長さのあるペアで、この場の全員が彼らの名を知っている。


「バルディス兄弟ただいま参上……! ひひっ」


          ●


「バルディス兄弟がなぜここに!?」


 驚愕の声の中、変わらずニヒルな声と笑いを浮かべているは、背の低いモグラ顔の男、四人衆第四席『デン・バルディス』 

冷静で落ち着きのある、背の高い険しい顔の男は、四人衆第三席『メレッタ。バルディス』だ

 

彼らは、アルべガリア傭兵団の〝四人衆〟と呼ばれる幹部の二人だ。四人衆は全員纏めれば一都市の軍に値すると言われる程の実力である。

彼ら四人衆は戦いを快楽とする。数多の争いに自ら首を突っ込み、力のみで強引に解決しているのだ。性格は様々で、捉えにくい者達ではあるが、腕は一流。


「ひひひ、驚いてる驚いてる」

「何故って、馬鹿かお前ら。ヨシュア様の式典の祝いに来た決まってるだろ」

   

 ケラケラと笑うモグラ顔の男など目もくれず、冷静な男は無機質な声で戦士たちに言った。

 ドミニクは呆れた口調で二人を見る。


「なんだお前ら、もう着いたのか。式典はまだだと言ったろうに」

「そんなつれない事言うなよ団長ー。俺ら四人衆がわざわざ急いで駆け付けただぜー?」


 ひひっ、と肩で笑ったデンは、ふと視線を変え鷹人たちの方をみた。

その目はまるで新しいおもちゃを見つけた子供のように、無邪気だった。


「何だ楽しそうじゃん。アイツら殺してねえな! そう思わねえか兄弟!?」

「早まるな兄弟。女は犯し、男は全裸で吊るしながら拷問し、自ら『殺してくれ』と懇願するまで遊ぶのが作法と言うものだろう」

「ひひひ、俺よりぶっ飛んでんな! 流石兄弟!」

 

淡々と言葉を並べるメレッタに、デンは変わらず笑う。

常人ではない。


「厄介なのがきたね」

「ハッキリ言ってピンチだよな、これ」

「わかってるんだから言わなくていいさね。で、どうする?」

「撤退、も無理そうですね……」


 七華の後ろ向きの視線を見れば、一組の男女が立っていた。


「四人衆第二席『ゲレーナ・ハーデス』と、第一席『ホートン・マキエス』ですか……」


 ホートンは、黒い肌に禿頭の大柄で執事服を身に纏い、ゲレーナは艶のある長い金髪、切れ目の長身で品のいいドレスを着ていて、お嬢様の様な雰囲気がある。

ゲレーナの後ろにホートンが付く形で、鷹人たちの退路を塞いでいた。

……全然気づかなかった

鷹人が内心で驚きを作る。


「汝ら。なかなか面白いのお。是非ともコレクションに加えたいものじゃ」

「ゲレーナ様、そのお趣味はいい加減御止めになられた方がよろしいかと。ヨシュア様にも嫌われますよ?」

「黙れ」

 

ゲレーナの鋭い肘付きがホートンの下腹に入る。早すぎて、攻撃の後しか見えなかった。

執事は吹き飛び、背後の瓦礫に激突する。

ドレスの女はそちらに目向きもせず、七華に視線を向けた。


「汝、なかなかいい身体をしておる。どれ、ちょいとその腕をち千切ってワシにくれんかの? さすれば、ワシから危害は加えん」

「お断りします」

 

即答だった。七華を見れば心底嫌そうな顔をしていた。相当苦手なタイプなのだろう。


「―――で、団長と四人衆がそろったわけですが、どうするのです、フェンリル傭兵団のみなさん?」


 いつの間にかゲレーナの隣に戻っていたホートンが問う。いつ戻ったのか誰も気が付かなかった。

問いに意味はない。どうせ彼らは殺すだろう。それに、鷹人の答えは決まっている。


「誰が降伏するかよ」

「そうですか」


 一瞬目を伏せたホートン。そして彼の姿が消える。


「残念です」


 ホートンの声が聞こえた瞬間、鷹人が右にぶっ飛んだ。


「鷹人!?」


 戦闘地点の外で真冬が悲鳴を上げる。鷹人は数メートル転がり、地を這うような姿勢で着地した。


「か、はっ……!」


 鷹人の元いた場所の隣に立っていたのは、ホートンだった。

周りの仲間たちも驚いている。


「降伏しないと言うのなら殺すだけですね」


 無情な宣告が静かに響いた。







どうも、浅野です! 

今回の神様の行進曲はいかがだったでしょうか?

まだまだ続きますよ、戦闘回。


今までろくに戦闘シーンなんて書いたことなかったので、うまくできているかは不安ですが、お楽しみいただけたら嬉しいです。


ではでは、誤字脱字、感想等のメッセージお待ちしております!

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