第6章 大空の散歩 その3
そんな魔王を見て、サツキも後を追おうとしたが、ヒルダに止められた。
「大丈夫よ、少しヤキモチを焼いてるみたいね。」
「ヤキモチですか?」
「ええ、私にあなたを取られて感じがするのだと思うわ。」
「それはないと思いますが。」
「ふふ、今はわからなくてもいいのよ。今日は疲れているでしょう?部屋に案内するわ。」
ヒルダはそういい、サツキを立ち上がらせると手をとって部屋を出た。
部屋の外はところどころに明かりが付いているが誰もいなかった。
「ここは、少し特別な場所なの。だから、誰もいないのよ。」
サツキの考えていることがわかったのかヒルダは、教えてくれた。
「あの、お聞きしたいことがあるんですが。」
「あら、何かしら?なんでも聞いてちょうだい。すべて教えるわ。」
ヒルダはサツキに笑いかけながらも、廊下を歩いて行く。
「えっと、天空神殿の・・・。」
「ああ、ヒルダと呼んでちょうだい。」
「ええっと、ヒルダ様は・・。」
「違うわ、ヒルダよ。」
「さすがに呼び捨ては無理です。じゃあ、ヒルダさんでいいですか?」
「仕方ないわね、我慢するわ。」
「じゃあ、改めて。ヒルダさんは魔王のことを知っているんですよね?」
「ええ、知っているわ。私がここの主になる前から魔王ですもの。」
「魔王の立場って、どうなんですか?やっぱり、嫌われてたりするんでしょうか?」
その問いにヒルダは微笑んだ。
「気になるのかしら?そうね、その話をすると少し長くなるわ。イイかしら?」
「構いません。」
サツキの答えにヒルダは一つの扉の前で立ち止まった。
「今日はここで休んで頂戴。明日、また迎えにくるわ。」
「あの、お話は。」
「長旅で疲れているでしょう?大丈夫よ、明日きちんとお話するから。今日はゆっくり休んでちょうだい。」
ヒルダはそういい、サツキを残して立ち去った。
一人残されたサツキはため息をついて部屋の中へと入っていった。
部屋はいつも寝ている部屋と変わらず豪華であった。
「とりあえず、どうしよう?お風呂入ろうかな?」
扉の前でサツキが考えていたとき、扉を叩く音がした。
「ん?誰だろ?ヒルダさんかな?」
「俺だ。」
「え?魔王?どうしたの?」
魔王の声にサツキは驚き扉を開けた。
そこには、先ほどと変わらない姿の魔王がいた。
「とりあえず、入って?」
扉を大きくあけて魔王を中に招いた。
魔王はそのまま部屋の中に入り、部屋の中をグルリと見た。
「大丈夫そうだな。」
「何が?」
「魔力遮断結界だ。アイツが用意したんだろ。」
「ああ、そうか。ロキの城ほどじゃないけど、こっちにも魔力があるんだっけ?」
「ちょっと気になったから見に来たんだ。」
魔力にまだ慣れていないサツキが心配になって、魔王は見に来たのだった。
「じゃ、ゆっくり休めよ。」
魔王はそういい部屋を出ようとした。
出ていこうとする魔王をサツキはとっさに引き止めていた。
「あの、お茶でもどう?」
「あ?疲れてるんだろ?」
「うん、そうだけど。」
「じゃあ、ゆっくり休めよ。それとも何か?」
ここで魔王は一度言葉を切りニヤリと笑いサツキに近付き、耳元で囁いた。
「俺がいないと寝れないのか?」
魔王の言葉にサツキは顔を赤らめて、魔王から離れた。
「そ、そんなんじゃ。」
「安心しろ。何かあれば呼べ。すぐにくるから。」
サツキの頭をポンポンと叩き、魔王は部屋を出ていった。
「もう、ちょっとドキッとしたじゃない。」
頬に手をあてゆっくり息をはいた。
そして、パチンと頬を叩く。
「さて、とりあえず汗を流して寝よう。うん、それが一番だ。」
自らに言い聞かせるようにサツキは呟き、行動をおこした。
そして、フカフカの布団に包まれるとサツキは眠りの園に旅立った。
サツキは何も知らないまま、夢を見る。
ゆっくり、ゆっくりと。
そして、全ての謎が解き明かされる。




