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戸惑う彼女

彼と元カノを見て、急いで行ってしまった彼女。そのとき、彼は。

好きだと自覚した!なんて宣言したってさ、私3年前に振られてるのよね…

好き好きアピールしたって嫌われそうだし、どうすればいいんだろ。






彼の歓迎会が終わって、同期3人と一緒に別の店でグダグダしていた。

3人とも、彼がいない間も私を心配してくれて、あれこれ面倒を見てくれてた。

キツイことも言ってくれる、頼もしい同期。

「そんなこと言っても、そこから3年たってるじゃない」

同期の贔屓目を差し引いても、整った顔立ちの真弓。

実は彼の同期・沼田さんと最近になって付き合い始めたと、さっき教えられた。

…正直、びっくり。

「振られたなんて、とりあえず置いといていいんじゃないの」

「そうだよ。でも」

酒豪の美智子が大ジョッキのビールを、ぐいっとあおる。

「主任の気持ち、ちゃんと分かるまでは様子見がいいと思うな」

「ちょっと待って。そんなことしてていいの」

アイドルオタ歴10年以上のさやかが、眉を寄せる。

「主任、なんか更にカッコ良くなってるでしょ。元カノと元サヤとか新たなライバルとか、出て来たらどうすんの」

「さやか、ネット漫画読みすぎじゃないの」

今度は、読書家の美智子が眉を寄せた。

「まあ、確かに主任は私たちから見てもそこそこカッコいいよ…あ、ごめん」

そこそこに苦笑いした私に、律儀に美智子が謝ってくれる。

無駄に律儀なのが美智子の素敵なところ。

「でも、そんなマメじゃなさそうだし…あ、研修期間中美幸にはマメだったね」

「まあ、指導役だからね」

「そう、普段はマメじゃなさそうだし、急にワラワラとライバル来た!なんてことはないと思うけどな。だから、様子見が一番よ。今のところ」

「それでいいんじゃない」

「ん~そう言われるとそうなのかもね~」

真弓とさやかも同調してくれたので、『様子見』がいいよ、という助言にまとまった。

同期って、ほんとありがたい。

正直、今何か行動するのは怖い。

だって1回振られたんだもの。

3年たっても傷口はまだあるの。




そんな訳で、特に彼の姿を追うこともせず、でも顔を合わせたら挨拶…と思ってた。

でも。

歓迎会を過ぎた日から、気づけば彼と目が合っている気がする。

仕事中、ふっと顔を上げると彼が見てる。

外回りから帰って来て、何気なくフロアを見渡すと、彼と目が合う。

まだ、彼と目が合うと『えっ』とびっくりしてしまう。

なのに、その度に彼は私の大好きな笑顔を見せてくれた。

…やだ。

こんなことされたら、平静な気持ちで様子見出来ないよ。

もっと見たいと思う、笑顔を見せないで。

また、欲張りになって振られるのはいやだ。

彼が笑ってくれてるのに、私は強張った顔ばかりしてしまっていた。




数日後、仕事が終わると明日から始まる山の上の公園のイルミネーションの話になった。

例年、クリスマス前に始まって、クリスマス当日は来客数がピークになる。

この辺りでは冬の一大イベントだ。

…今の私には、縁のないイベントだけど。

真弓は沼田さんと行くらしい。

「美幸も行かない?」

気を使って誘ってくれたけど、付き合い始めの二人の邪魔なんてしたくない。

「ラブラブカップルの邪魔はしないよ。でも、誘ってくれてありがと。週末は一人でのんびりする」

「ラブラブ…私たち、そんなんじゃないけどね。ま、無理強いはしないよ。じゃあね」

「うん、じゃあ、お疲れ」

エレベーターで下に降り、セキュリティゲートを通る。

出口を目指しながらふと、横を向いた。

…彼と女の人。

前の、彼女だ。

さやかの『元カノと元サヤ』の言葉が、頭に浮かんだ。

美智子が『ネット漫画の見すぎ』って言ってたことが、ほんとに起こってるの?

急いで歩いてたつもりだったのに、私の足は止まってしまっていた。

そこで、彼がこちらに顔を向けた。

…急いで笑ってる?

いつもの笑顔じゃなくて、頑張って笑ってる顔に見えた。

そんな顔、見たくない。

顔をそむけ、出口へ急ぐ。

もう、目尻に涙が溜まっていた。

堪えきれずにぽとっと一筋落ちたところで、声が聞こえた。

「待って!」

え?これ、彼の声?

「松丘さん、、」

走る音が聞こえ、近づくとぐっと腕を掴まれた。

びっくりして、涙を拭くことも忘れて振り返ってしまった。

息を切らして、立っている彼の姿。

髪が乱れ、頬が紅潮して、コートの前が乱れて。

でも、間近で見る彼はやっぱり素敵だ。

私にとっては『そこそこ』じゃない。

そう思ったら、また涙がぽとっと落ちた。

「どうしたの?泣いてる…」

そう言われても、言葉が出て来ない。

俯きそうになった時に、彼の手が近づいて来た。

指が伸びて私の目元に触れて、そっと、涙を拭ってくれる。

「本当は3年前に、こうしたかったんだ」

え、とびっくりして彼を見た。

照れた笑顔。

さっきの作った顔じゃなかった。

「明日、公園のイルミネーションを見に行かない?」

穏やかな眼差しで言われて、気持ちが落ち着いて来た。

「…はい。私、見てみたかったんです」

「…良かった!嫌がられてないかって心配してたんだ」

「嫌がってなんて…ごめんなさい」

「謝らないで。ほんと、良かった。じゃあ明日駅前に17時でいい?大丈夫?」

「大丈夫です」

明日、と言って手をひらひらさせながら、彼は行った。

たくさん、心配してたこと。

もう心配しなくてもいいのかな。

私の目元に触れた、彼の指が彼の気持ちなのかな。

明日はどんな気持ちで、彼とイルミネーションを見るんだろう。

もう、涙は止まっていた。












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