王都を爆破するのは多分わたくしではありません
ドォォォォォン!!!
今日は結婚式。
王都の大聖堂では、新婦ロゼッタ・エル・グランフェル公爵令嬢が、
バージンロードの中央で震えながら叫んでいた。
「普通の結婚式がしたかったですわーーー!!!」
ロゼッタの足元のバージンロードは、両側が爆発する仕掛けがされている。
全ては母の仕業だった。
処刑台へ向かう罪人の顔で、ロゼッタは震える足をまた一歩踏み出した。
隣では、婚約者の第一王子アレンが、ロゼッタを安心させるように優しく微笑みながら静かに頷く。
「安心しろ」
「何をですの!?」
「爆発の導線は把握している」
「だから何なんですのーーー!!!」
2年ほど前
――最悪だ。
目が覚めた瞬間、私はそう悟った。
天井には豪華なシャンデリア。
ふかふかの天蓋付きベッド。
そして、「よかったわぁぁぁぁぁ!!!!!!」
と、目をうるうるさせながら勢いよく突撃してくる女性。
私の母、マリアベル・エル・グランフェル公爵夫人だった。
「心配したのよぉぉぉぉ❤️」
「ぎゃあっ!」
抱き締める勢いが強い。
「ママ!!息が!苦しいですわ!!」
「ああっ、ロゼッタちゃん!ごめんなさいねぇ!!でも、本当に怖かったのよぉ!!」
母は私の肩を掴み、涙目で顔を覗き込んできた。
「お茶会で突然倒れるんですもの!!」
……そうだ。思い出した。
派閥内の貴族令嬢を集めた和やかなお茶会。
そこで突然、前世の記憶を思い出したのだ。
この世界は乙女ゲーム。
そして私は悪役令嬢……らしい。
問題は王都を爆破して追放される未来が待っていることだ。
そして、攻略対象であるアレン王子の婚約者であり、後に婚約まで破棄されてしまう予定だった。
(いや、待って!?)
(王都を爆破って何??)
乙女ゲームはほとんど内容は覚えていない。
あまりの混乱で私は青ざめた。
そんな私を見て、母がさらに慌てる。
「大丈夫よ!安心してぇ!!」
「お茶会に関わった家の者たちは、全員謹慎させていますからね!!」
「…………はい?」
母は優雅に微笑んでつづけた。
「だってぇ……。もしあなたに何かしていたら怖いじゃない❤️」
「だから一応、公爵家として圧をかけておいたの❤️」
「え?」
聖母のような顔でロゼッタの頭を撫でている。
怖いのは、ママの方だった。
「あと令嬢たちには、しっかり基礎を叩き込んでおいたから安心してね❤️」
「何の基礎ですの!?」
「ふふっ、気になる?」
嫌な予感で胸がいっぱいの娘を横目にマリアベルは優雅にぱんっと手を打った
「みんな、入ってらっしゃい〜❤️」
「はいですわぁ!!」
扉が勢いよく開くと、なんだか目がやたらキラキラとした令嬢たちが10人近く、ぞろぞろと入室してきた。
(何ですの!?なんだか怖いですわ?)
「ロゼッタ様!私は鉄扇担当ですわ!!」
シャッ!!っと勢いよく鉄扇が開く。
「私は黒薔薇担当ですわ!!」
バサァ!!っと黒い薔薇が撒かれる。
「“お黙りなさい下民ども”担当ですわ!!」
「誰が使うんですのそれ!?」
「「「もちろんロゼッタ様ですわ!!」」」
全員がキラキラとロゼッタのほうを見ている。
(いりませんわ!!)
「もし足りなかったら爆破担当も増やせるのよ?❤️」
「増やさないでくださいませ!!!!」
「ふふっ、遠慮しなくてもいいのよ?」
その笑顔は気品に溢れ、とてもこんなセリフが出てくるような女性には見えなかった。
ロゼッタは本能で理解した。
王都を爆破するのは多分、私じゃない。
マリアベル「だってぇ……怖かったんだもの〜❤️」




