お誕生日パーティー
建国1213年9月9日 午後5時
私の1歳の誕生日を祝うパーティに参加する親戚が、我が家にどんどん集まってきた。
その数なんと、ざっと数えただけで既に40人超え。
なぜ普通の町の町長家なのに、こんなに人が来るのか気になってこっそりお父さんに聞いてみた。
「まぁ、そりゃウチの町は王国の中でも数少ない魔石鉱山があるからな、他にも色々な種類の鉱石が採れるからそれ関係の人が多いんだ、それに·····」
『『『姐さん!ご出産おめでとうございやす!』』』
「お母さんがな····· 元々貴族の三女で、鉱山の採掘チームのリーダーをやっててしかも紅一点だったから·····」
「あぁ〜·····」
なんでも、お母さんは元々この町周辺を領地とする貴族の三女で、めちゃくちゃ活発な性格で動くのが好きだったらしく、貴族なのに鉱山で鉱夫たちのリーダーをしていたり、しかも一緒に力仕事をしていたらしい。
そして、町長を任されていた家の長男だったお父さんに惚れて、権力とパワーと既成事実で結婚するに至り、色々な思惑があって『シュテイン』という苗字がウチにも付いたそうだ。
そのため、ウチは貴族ではないが苗字があり、貴族家の庇護下にある家になったらしい。
ちなみに、ここに来ている人の半分はお母さんが鉱山で働いていた頃の同僚らしい。
あと他にいるのは商人の人とか隣町の魔法学校の先生とかその他お偉いさん方らしい。
それと、お母さんのコワモテな子分たちが揃って私の所に来たので、笑顔で歓迎してあげたら凄く喜んでいた。
何でも顔が怖すぎて『泣く子が更に泣く野郎共』なんて呼ばれていた人たちらしく、泣くどころか笑ってくれた事に大喜びしてくれた。
あっ、いかにも元下っ端っぽい奴が『さすが姐さんの娘!姐さんに似て肝が据わってやがるぜ!』とか言って姐さ····· お母さんにぶっ飛ばされた·····
◆
午後6時
この時間になると参加者はほぼ集まったのか、人が増えなくなってきた。
そして私は子供の特権を使って、寝たフリをしながら『千里眼』で外の様子を眺めている。
家の外には5〜6台ほど馬車が停まっている事から、やはり来客者の一部は町の外からやってきたようだ。
その他の人は町内に住んでるのかな?
なんて考えていると、ウチの前に明らかに豪華な馬車が停車し、中から明らかに貴族っぽい、ちょっと痩せ気味のサンタみたいな初老のお爺さんさんと、気品のあるお婆さんが出てきた。
んん?もしかしなくても、あれ私のお爺ちゃんとお婆ちゃんかな?
『千里眼』で見ていると、家の中からお母さんが飛び出して来て親しそうに会話しはじめ、2人とメイドさんをウチの中に·····
ん?もしかして私の所に来る?
◇
しばらくすると、部屋の外が騒がしくなってきた。
どうやらお爺ちゃん一行が到着したらしい。
そして扉が開くと·····
あれ?お母さんだけ入ってきた?
「ソフィ起きてる?起きてるわね、これからあなたのお爺ちゃん達が来るから失礼の無いようにしてね?お爺ちゃんは侯爵なのよ、ソフィは孫だから問題無いし、お爺ちゃんたちは貴族にしては寛容な方だけど一応貴族だから粗相の無いように!」
「わかってる、さくせんどーりに」
「あ、サービスは多めでお願いね?」
「りょーかいっ!」
「·····お 願 い ね?」
「·····はーい」
どうやら私が失礼な事をしないよう先に入って釘を刺しに来たようだ。
というか釘刺しすぎ、もう叩きすぎてめり込んでるから。
私の返事を聞くと、お母さんは扉を開けてお爺ちゃん達を招き入れた。
「リラ!儂の孫は何処だ!?あそこか!?」
「あなた、騒いだらソフィちゃんが泣いちゃうわ」
「大丈夫よお父さん、あの子は滅多な事では泣かないわ····· 泣かなすぎて困るくらいよ·····」
何やらお母さんがボヤいていたが気にしない。
そんな事より私はお爺ちゃんの対応をしなければ·····
「おお!ソフィが居たぞ!会うのは産まれた時以来だ!ほらお爺ちゃんだぞ、覚えてるか?」
·····ん?居たっけ?
あー、思い出してきた、産まれた時にお父さんと一緒に入ってきてた気がするけど、あんまりちゃんと見えてなかったからうろ覚えだ。
だが、ここはサービスだ。
「あぃー♪」
「おっ!?リラ!ソフィが儂の事覚えてるって言ったぞ!!」
「もうお父さんったら、産まれたばかりのソフィがそんな事覚えて····· ルワケナイジャナイ、ホホホホ、ジョウダンハイラナイワヨー」
·····お母さん?
途中から挙動不審の棒読みなんですが?
まぁお母さんの予想通り、もちろん覚えてますけどね?
「あらあら、じゃあソフィちゃん、私の事は覚えてるかしら?」
「あー····· あいー!」
次はお婆ちゃんが覗いて来たが、なんか、その、見覚えあるんだけど思い出せない·····
あ!アレだ!産婆さんだと思ってた人だ!!
めちゃくちゃ早く楽に産まれて、皆が困惑してる時に抱っこしててくれた人だ!
まさか、私のお婆ちゃんだったとは·····
「あら?何だか微妙な反応ね·····」
「タ、タブンタマタマジャナイカナー?」
「にしても、ソフィの成長早くないか?1歳にしては少し大きい気がするのだが·····」
「えっ!?あっえっと、この子、産まれた時くらいから成長促進のスキルを持ってたのよ!そのせいなのよ!」
「何だと!?それは本当か!?」
「そういえばごく稀にスキルを持って産まれてくる子供が居ると聞いた事があるわ」
「え、えーと、その、その話はちゃんと後でするからっ!今はソフィの相手をしてあげて?」
うげっ!?
お母さんが面倒事を押し付けてきやがった!
でもお母さん、『撃っていいのは撃たれる覚悟のあるヤツだけだ』って言葉知ってる?
私はお母さんに仕返しをするため、自力で立ち上がり、お爺ちゃん達の方まで歩いて·····
「じーじ?ばーば?」
「ぬおおおおおおおっ!?!?!ソフィが!ソフィが儂を『じいじ』と呼んでくれたぞ!!」
「あらあら、これは将来有望ね」
「え゛っ!?ちょっと!ソフィ!?」
·····倍返しにするって言ったよね?
初級光魔法『光球』発動!
私は反撃とばかりに『光球』を身体の周りに2つ召喚し、光球をクルクルと回して1人遊びを始めた。
「これは····· 魔法!?」
「まさか、この歳で使えるの!?」
「きゃっきゃっ♪」
「あぁもう!こらっソフィ!魔法を使うのを止めなさい!」
「やー!」
ここで嫌がるフリをして『光球』を1つ追加した所で、私は自分に対して快眠魔法『シエスタ』を掛けて、あたかも魔力切れで気絶したかのように見せる。
「おい!大丈夫か!?リラ!ソフィが光球を3つ出したら倒れ·····た·····」
「ー!?ーーー!?ーー!ーーー!?ー··········」
何やらお母さん達が騒いでいるが、魔力切れ(嘘)をした私には関係無い、もう聞こえない。
ぶっちゃけ、お昼に沢山ご飯を食べたからお腹いっぱいでかなり眠いし、パーティも面倒なので·····
ここぞとばかりに赤ちゃんの特権を使わせてもらって、明日の朝まで爆睡させていただきますっ☆
「すやぁ·····」
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:1歳
状態異常:熟睡
ひと言コメント
「すやぁ·····」
『ソフィ起きなさい!!·····あれ?魔力切れ?』
『まぁまぁ、寝る子は育つと言う、ゆっくり寝かしといてあげなさい』
『そうね、知らない人が沢山来て疲れちゃったのよ、ほんと可愛いわねこの子』
『えっいやっでも普段····· むぐぐ·····』
(無理やり起こしたらまた面倒事を起こすかもしれないわね····· この際寝かしておいたままでもいいかしら?)
なお、ソフィは次の日に気持ちよく目覚めた所を両親に捕まり、しこたま怒られました。
「ふぅん·····? 気になる子ね、怪しいわ····· もしかして転生者かしら?」
·····魔法を使う所を覗き見していた魔法学校のとある先生に見込まれ、勝手に祖父母と両親に進言され魔法学校への入学を貴族権限で確約されてしまい、巡り巡って面倒事が増えるのはもうちょっとあとの話。




