表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者としゃもじの冒険  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/9

第七話:整えるか、斬るか

村に入った瞬間、空気が重かった。

人の気配はあるのに、活気がない。

視線だけが、こちらを追ってくる。

「……怯えてるな」

レイグが呟く。

「違う」

俺は即答した。

「壊れてる」

レイグ

「は?」

正面から否定された。

レイグ

「いやどう見ても襲撃の跡だろ」

「違う」

しゃもじで地面を軽く突く。

「壊れた後、放置してる」

「それは……」

「整えてない 村そのものが」

その言葉に、村人の一人がびくりと肩を震わせた。

「まずは確認だ」


まずは井戸だ

俺はしゃもじを軽く回す。

「水」

レイグ

「井戸か」

井戸の前。

覗き込む。

濁っている。

底が見えない。

「毒か?」

「違う」

俺はしゃもじを水面に触れさせる。

ぷるん。

スライムが一匹、沈む。

数秒後。

ぼこっ。

黒い泥を抱えて浮かび上がる。

「腐ってるだけだ」

「……飲んでたのか、これを」

レイグが顔をしかめる。

「これ飲んでたら、戦う前に倒れる」

「……それは」

「だから先に整える」

しゃもじを軽く振る。

ぷるん。

スライムたちが井戸へ潜る。

「ちょっ、何して――」

「濾過だ」

「ろか?」

水の中で、スライムが広がる。

不純物を絡め取り、

押し上げる。

数分後。

水面が透き通る。

「……透明になってる」

「飲める」

商人の一人が恐る恐る口にする。

「……うまい」

「マジかよ」

レイグが呟く。

「次だ」

「もう行くのかよ」


俺は歩く。

「畑」

畑は畑は固く、乾ききっていた。

ひび割れた土。

折れた支柱。

レイグが言う。

「なんだこりゃ これじゃ作物が育たねぇぞ」

「食料がないと終わる だから整える。」

しゃもじを地面に軽く差す。

ぷるん。

スライムが地中へ潜る。

ぐにゅ。

土が“起きる”。

ひびが消え、

空気が入り、

柔らかくなる。

「……耕してるのか?」

「整えてる」

「言い方の問題じゃねぇ」

レイグが頭をかく。

「普通、何日かかる作業だぞこれ」

「もうすぐ終わる」

「……は?」


その瞬間。

「うわあああ!!」

森の方から叫び声。

「来たな」

レイグが剣に手をかける。

「ゴブリンか」

「数は?」

「多い!」

村人が叫ぶ。

森の影から、数十体。

「ここからが本番だ」

レイグが一歩出る。

「任せろ」

剣が抜かれる。

「遅い」

俺はしゃもじを振った。

地面が、沈む。

ずぶっ。

「ギャッ!?」

先頭が足を取られる。

次がぶつかる。

崩れる。

「……落とし穴?」

「違う」

スライムが地中で網のように広がっている。

「捕獲だ」

「は?」

「逃がさない」

ぬるり。

ゴブリンの足が絡まる。

動けない。

「今だ!」

レイグが踏み込む。

「だから遅い」

さらにスライムが動く。

武器の動きも制限される。

「……何これ」

レイグが止まる。

「戦えねぇ」

「戦わせない」

俺は淡々と言う。

数分後。

全員、地面に正座。

「なんでだよ!!」

ゴブリンが叫んだ。

「俺たちまだ何もしてねぇぞゴブ!!」

「してる」

ゴブリン

「してねぇゴブ!!」

「来た」

それだけで十分だ。

沈黙。

レイグが剣を納める。

「……お前、本当に戦ってねぇな」

「必要ないだけだ」

「いや逆に怖いわ」

風が吹く。

整い始めた村。

だがレイグは小さく笑った。

「でもまあ」

「?」

「楽だな、これ」

「だろ」

「ただし」

剣を軽く叩く。

「強いのが来たら別だ」

「その時は勝手にしろ」

「了解」

村の奥。

少しずつ、人が顔を出し始める。

「……なんか」

誰かが呟く。

「戦い、終わってね?」

違う。

まだ始まってすらいない。

ただ――

整えただけだ。

俺はしゃもじを肩に乗せる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ