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最強魔導士の星婚《ステラリガーレ》~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~  作者: 源朝浪
第一部・第四章 それは世界を紡ぐ我らが賜る星の祝福

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第五十三話 再戦

 激しい閃光を天に舞い上げる精霊石のお守りは。その途中で入った亀裂から徐々に形を失い。弾け、光り、細かな粒子となって、舞い踊る。


 その粒子は徐々に集まり、形を成して。


 水の大精霊ウェンディーヌを、この場所に顕現(けんげん)させた。


 ウェンディーヌはこちらを見て優しく微笑(ほほえ)むと。契約通り、その大いなる力の一端(いったん)(もっ)て、古代遺産(アーティファクト)の放つ魅了の紫光(しこう)を絡め取り。(よこしま)たる光の一切(いっさい)を、大量の水とともに遥か上空に吹き飛ばす。


「……契約は果たした。これで、よいのだな? ライオット=ノールディ?」

「……ああ。ありがとう。ウェンディーヌ」

「礼には及ばん。わらわの意思で交わした誓いじゃ」

「それでも、だ。ありがとうと、俺は言うよ」

「……律儀な()()じゃの。じゃが、そこが良い。ますます気に入った」


 ウェンディーヌは俺の頬に触れ、額にそっと口づけをして。不敵に微笑む。


「また、わらわの神殿に来い。その時は大いに歓迎するし、そなたの妾となって、特別な守護を授けよう」

「ああ~、それは……。ごめん。前にも言ったけど。俺には、もう心に決めた女性(ひと)がいるから――」

「……ふむ。英雄たる者、少しは自ら色を好むべきじゃとも思うが――。まぁ、そなたの意思を無碍(むげ)にするつもりはない。気が向いたらでよいから、いつでも来るのじゃぞ? その時は、熱い一夜をともに過ごそうではないか。わらわとも、星婚(ステラリガーレ)(むす)ぼうぞ?」


 そう言い残して。水の大精霊――ウェンディーヌは、水となって形を崩し。この場から姿を消した。


(冗談で言ってるように見えなかったのが、ちょっと怖いけど……。ここ一番って時に助けてくれたんだし、手土産を持って遊びに行くくらいは、してもいいかな)


 ウェンディーヌが去った後の静けさの中。俺はハヤトを見据える。


 あとに残ったのは砕け散った精霊石の欠片と。魅了の力を持った紫光(しこう)を天空に舞い上げた水が、優しい雨となって降り注いでいるという事実だけ。


「なっ!? どういうことだ! 何故大精霊が、お前なんかに力を貸す!?」


 ハヤトは混乱し、狼狽(ろうばい)し、(いきどお)った。


 自らの秘策が、こんなあっけない形で破られたのだから。


「まぁ、こっちにもいろいろとあったんだよ。仮にお前があの神殿に行っても、こうはならなかったと思うけどな?」


 もう誰に(はばか)ることもない。俺は、俺が一番大切にしなければならないことを見つけて。そのために過去を切り捨て、今を生き、望んだ未来を掴むのだと。


 だから、ハヤトに負い目や引け目を感じることもない。


 フィオナが俺を裏切ったことも、ハヤトが俺の恋人を奪ったことも。何もかもがどうでもよくて。今の俺にも、未来の俺にも必要ないことになった。


 これからの俺は、誰が相手だろうと、自分の意思をはっきりと伝えるし。相手がそれに反発するなら、自分の正当性を押し通すために戦う。


 俺が愛するべきはウィルテイシアで。俺を愛して欲しいのもウィルテイシアだ。それだけが真実。それだけが真理。


(そして俺の予想が正しければ……)


 この義眼の古代遺産(アーティファクト)は、大きな効果を生みたいほどにチャージに時間がかかる。そういう、連発の効かないタイプで。


 だからこそ。彼は、ここぞというタイミングが来るまで、それを温存していたのだと。


 温存された分だけ威力の増した魅了だからこそ、ウィルテイシアを――。彼女の清く、強い精神すら、(むしば)んで見せたのだ。


 そういうことならば。


 その最初の一発さえ防ぐことができれば。少なくとも、この戦いの中で、二度目はない。


 このチャンスを逃す訳にはいかないと。


 俺は、ここぞとばかりにハヤトの懐に飛び込み、槍代わりにした杖の一撃で、その義眼を突き砕いてやった。


「がぁぁぁああああああっ! 眼が! 俺の義眼がぁ!」


 今更嘆いたところで、もう遅い。


 切り札はつぶした。あとは、正面から叩き伏せ、奴の心を完全に折れば、この勝負は俺たちの勝ちである。


(ウィルテイシア! 見ているか! 君の無念は、君の怒りは、この俺が! このライオットが十倍にして、奴に叩きこんでやったぞ!)


 今はもう会えない、星の胎内に残った彼女に。心の中でそう伝えて。俺は、今ここにいるウィルテイシアに、声をかけた。


「ウィルテイシア! 好機だ! この因縁、ここで断ち切らせてもらう!」


 ここにいる彼女には、俺がその言葉に込めた本当の意味までは、伝わり切ってはいないだろうけど。それでも――。


 ここにいる彼女だったら、きっと俺の手助けをしてくれるだろうと。そう信じて。


「ああ! ライオット! 勝とう! 私と貴方(あなた)の未来のために!」


 だからこそ。その返事を聞いた時。俺は――。あの場に残してきてしまったウィルテイシアへの想いが溢れて。


 涙を流しながら、この因縁の対決の。俺とハヤトの最終決戦へと、身を投じることとなった。


「くそがぁ~! 俺の物にならない女ならいらない! 何がエルフだ! 何が大精霊だ! 異種族同士の絆が何だ! 異種族同士の恋愛が何だ! そんなものなくても、俺は強い! 俺は負けない! 俺はアルガトラム王国が誇る勇者で! 俺が、俺こそが! 世界最強なんだぁ~っ!」


 ハヤトが雄たけびを上げる。彼の眼は、まだ死んでいない。


 ならば俺が、俺たちが、この手で引導を渡してくれよう。人の道から外れた者を、勇者として認める訳にはいかないのだから。


「ハヤト! 俺が、今ここで! お前の旅を終わらせてやる!」

「やれるもんならやってみろよ! 魅了が防がれたところで、接近戦なら俺の方に分がある! 大人しく俺に殺されろ、ライオット!」


 ハヤトの罵詈雑言は止まらない。ここまで来ると憐れと言うか。


 以前は彼の周りにはパーティーの(みんな)がいて、俺が独りぼっちだったけど。


 今、独りぼっちなのは彼の方で、俺にはウィルテイシアがいる。


「お前を殺した後で、そのエルフを捕まえて! 恥ずかしめて! 犯しつくして! 尊厳(そんげん)をぶち壊してやってから! お前と同じあの世に送ってやるよぉ!」


 安い挑発だ。


 そんな言葉では、今の俺の心は揺らがない。


 太陽のように熱く魂を燃やし、氷の大地のように冷静に思考する、今の俺は。


 ハヤトのその言葉に、彼の限界を見て。


「そうはならないよ、ハヤト。言っただろ、お前の旅は、ここで終わる……」


 あえて静かに、落ち着いた声でそう言ってやると。彼は、怒号のような雄たけびを上げて、剣を振りかざし。一直線に俺に向かって来た。


(動きが単調過ぎる。完全に怒りに我を忘れてるな……)


 神経を研ぎ澄ます必要もない。そんなことをしなくても、俺の左手に発現した星痕(ステラインデクス)は、俺に絶大な力を与えてくれている。


 星婚(ステラリガーレ)は、ここに示された。


 世界の(ことわり)を超え、星に新たな希望を生むその光を持って、俺は――。


「最後くらい目を覚ませよ! 確かにお前は最初から嫌な奴だったけど! この世界に来たばかりのお前は! 少なくとも、こんな外道ではなかっただろ!」


 そう。彼は勇者として召喚され。最初こそ困惑していた様子だったが。それでもこの世界のために命を()すと、そう誓いを立てたのである。


 それは名誉のためであったり、地位のためであったり、富のためであったりと。結局のところ、女性から好かれたいと言う。彼のくだらない動機から生じたものだったとしても。


 それでも彼は、勇者として一人前になるべく、人一倍努力をして。勇者を名乗るに相応しいだけの力を手に入れたのだ。


 その不純とも言える動機を、俺は否定するつもりはなく。俺だって最初の動機は似たようなものだったのだから。


 むしろ成長した彼を見たからこそ。俺は魔導士として、すぐそばで彼を支えようと、そう思った訳だし。実際にそうしようと思って、俺自身も努力を重ねた。


 それが裏目に出たのは、結果が教えてくれたけど。ハヤトが根っからの悪人でないことは、パーティーの誰もが知っていた訳で。歪んで行く彼を止められなかったのも、俺たち勇者パーティーの至らなかった点でしかなく。


 結局のところ。誰か一人が悪いのではなくて。(みんな)(みんな)、少しずつ間違いを犯したからこそ。この今に繋がってしまった。


(俺が犯した分の間違いは、俺自身正す。だからハヤト……。お前がお前の間違いを自分で正せないと言うのなら、俺が……。俺が代わりに正してやる!)


 決戦は始まり。同時に終わりを迎える時でもあった。


 降り注ぐ雨の中。鬼気迫る勢いのハヤトを、俺は……。


 全力で受け止め、その横っ面に渾身の拳をお見舞いして。彼の眼を覚まさせてやろうと。そして、それが叶わないのなら。せめてこの手で、直接引導を渡してやらねばなるまいと。


  ハヤトの攻撃を真正面から受け止めるべく。杖を構えて、応戦体勢に入った。

読んでいただきありがとうございます。


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