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最強魔導士の星婚《ステラリガーレ》~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~  作者: 源朝浪
第一部・第四章 それは世界を紡ぐ我らが賜る星の祝福

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第四十九話 星の胎内②

 確かに、ここに来る前に、ウィルテイシアの剣で自分の胸を突いたが、そこから先の記憶は曖昧(あいまい)で。自分がどうやってここに来たのかが、そもそもすっぽりと抜けいている。


「死後の世界ってことは、俺は、死んだのか?」


 純粋な確認のつもりだったのだけど。それにもまた、男性から意外な答えが返って来た。


「そうとも言える。が、そうとも言えない。君は星痕(ステラインデクス)を宿しているからね。遅かれ早かれ、ここに来ることは決まっていた訳だし」


 星痕(ステラインデクス)。魔族――ヴィリュインテーゼの情報があてになるなら、それは俺の左手に浮かんだ、この紋様(もんよう)のことだ。


「これがあると死なないのか?」

「そうじゃないけど。う~ん、そうだな~。わかりやすく言うと。君の死はまだ確定していないんだ」

「……死が、確定していない?」

「そそ。その紋章が存在している地点。つまり君がその紋章を発現させた時点から先のことは、全てが可能性の一つでしかない。今、君が通って来たのは最悪のバッドエンドだったけど。それすらもあらゆる可能性の内の一つなんだ。確定させるつもりはないだろうけど、そういう選択ももちろん可能だよ。そして、ちゃんとした手順を踏めば、君は《《彼女がまだ生きている地点の世界》》に帰ることができる。もちろん、ある程度の代償は必要だけどね?」


 彼の話した内容の全てが理解できた訳じゃない。それでも、かいつまんで言えばこういうことだ。()()()()()()()、あの瞬間を。あの致命的な瞬間を、()()()()()()()()()()()()()()と。


 代償。それがどの程度の物かはわからないけど。ウィルテイシアと二人で帰れるのなら、多少の代償は払ってもいい。


「また思い切りがいいな~。そういう後先考えないところは、僕そっくりだ」


 男性はそう言ってケラケラと笑う。


「……ウィルテイシアと一緒に帰る方法は?」


 話を複雑にしても仕方ないので、俺は端的に質問を投げかけた。


「残念ながら、二人一緒には帰れません。帰れるのは一人だけ。今の貴方(あなた)たちの星婚(ステラリガーレ)の力で引き出せるのは、どちらか片方が返る分の力だけで精一杯でしょう」

「それじゃあ意味がない。二人で帰れないなら、俺は――」

「帰る先が『現在』ではなく、『過去』だとしたら……。どうでしょうか?」


 まったく想定外の答え。 


 過去への移動。そんなことが可能なのだろうか。


 しかし、もし可能だと言うのなら。どちらか一方しか帰れなくても、俺たちの身に起こったことを未然に防げれば、それでいいことになる。


「……その方法は?」

星婚(ステラリガーレ)の力で時を逆巻(さかま)くのです」

「時を逆巻(さかま)く? どうやって?」


 今まで思ったように力が発動したことはない。そんな不確実な能力を頼るのは、はっきり言ってリスクが高過ぎるのではないだろうか。


貴方(あなた)たちは使い方を知らなかっただけ。正しく使うことができれば、その力は伝承通り、世界の在り方すら変えることができますよ」


 彼女が嘘を言っているようには見えない。それに男性の方も、うんうんと頷いている。


「どうやって使う?」

貴方(あなた)たち二人の星痕(ステラインデクス)同士を重ねるのです。身体(からだ)だけでなく、心で、魂で……」

「それが、星婚(ステラリガーレ)の正体ってことか?」

「はい。貴方(あなた)たち二人の絆が、想いが重なる時。星痕(ステラインデクス)は真実の姿を現し、それによって結ばれた星婚(ステラリガーレ)の力は、貴方(あなた)の望む未来を(つむ)ぐでしょう」


 根拠はないはずなのに、説得力がすごい。


 たぶん彼女たちが言っていることは本当で。俺がそれを理解できていないだけなのだと。直感的にわかった。


 だけど、理解できないものは使いようがない。


(これ、実質詰んでないか?)


 俺が視線を逸らすと、女性は小さな声で、しかし力強く言い切った。


「自信がないのですか? あの子への想いに」


 そこだ。俺が躊躇(ちゅうちょ)している点は、まさに。


 俺は確かにウィルテイシアを大切に想っている。でも、それが星婚(ステラリガーレ)を発動させるに足るものなのかがわからないのだ。


 そして、そんな曖昧な想いのままで、星痕(ステラインデクス)(こた)えてくれるはずがないと、そう思っている。だからこそ、彼女の問いに即答できない。


「大丈夫だと思いますよ? この浮気性の彼ですら、私と星婚(ステラリガーレ)(むす)んだのですから」

「あ、それは言わないで欲しかったな~。僕の面目丸つぶれじゃない?」

「それくらいがちょうどいいのでしょう? あなたは?」

「それは……、まぁ。そうだけどさ……」


 話を聞くに、一途な愛でなくても星婚(ステラリガーレ)は成立すると言うことか。


 なら必要となる発動条件は、たぶん……。


「……理解できたようですね」

「……ああ。確証はないけど。やれるだけやるだけだ」

流石(さすが)っ、今どきの若人(わこうど)! それくらい冒険しなきゃ、異種族との恋愛なんて楽しめないからね?」


 これが男神(おがみ)ヒュムシス。かつて多くの種族の神々を束ね、世界を統治していた神々の王の姿か。神々の王と言うには、思いの他、人間くさい人だ。


「あ、そうだ。お前さんが杖として使っていたあれ。実は星婚(ステラリガーレ)を結ぶのに必要な鍵――星婚(ステラリガーレ)装具(アペルトゥーラ)なんだ。他にも形が違うやつがいくつかあるから、必要になったら探してみるといい」

「……はぁ? 探すって、どうやって。あの杖だって、偶然手に入っただけなのに……」


 それでも、彼の表情は揺らがなかった。絶対の自信を持って、俺に言いきって見せる。


「いいや? お前さんがあの杖を手にできたのは、そういう運命を自分で引き寄せたからさ」

「……運命を、引き寄せた?」

「そうそう。お前さんがそれを手に入れたのは、遺跡の探索中に床が崩落したからだろう?」


 まるで見て来たみたいに言いうではないか。見た目が飄々としていて胡散臭いから、まるで信じる気になれない。


「まぁ、見てたんだけどね? 胡散臭いのは生まれつきだからしょうがないとして、だ」


 彼の眼に力が宿る。表情を変えた訳ではない。ただ、眼だけが変わった。


「あの崩落の時。どうしてお前さんは脱出じゃなくて、探索を優先した?」

「それは……」


 俺がこの杖を手に入れたのは、まだ勇者パーティーが旅に出る前。パーティーの練度を上がるためにアルガトラム国内を回っていた時のこと。とうに調査済み遺跡の再探索中の出来事だった。ハヤトがどうしても遺跡の探索がしたいと言うから、仕方なく(みんな)で行っただけで。正直あまり乗り気ではなかったのだけど。


 どうせ探索済みの遺跡だし、今更何が見つかる訳もないだろう。そんな風に思って、サクッと遺跡を見て回って、何もないことを確認して、さっさと帰ろうなどと考えていた時。突如として石畳(いしだたみ)の地面が抜け、地下空洞に落下してしまったのだ。


 脱出か、探索か。そのどちらかを迫られて、俺は探索を優先した。パーティーの安全を考えたら、真っ先に脱出を選択するべきだったのに。ハヤト以上にその状況に興奮して、どうしようもない好奇心に心を奪われてしまったから。


 散々苦労して遺跡のみ発掘区域を進み、仕掛けられていたトラップや、住み着いていた魔物に散々苦労させられた果てに手に入れたのは、売りに出そうとしても二束三文の値しかつかない金属の棒切れ一本。


(今だから特別なものだって言えるけど。当時は本当に無価値なごみ扱いだったもんな~)


 買取交渉をした時の店の店主の、あのやれやれ顔。本来の用途がわからない上に再加工もできない未知の金属なのだから、仕方ないと言えば仕方がなかったのだろうが。


「まぁ、動機は何だっていいのさ。必要だったのは、その決断と行動。()()とは、()()と、()()と、()()、そして()()の先に行き着いた、()()のことを言うんだ。俺の言うことを正しく理解する必要はない。大事なのは、()()()()()()()()()()()んじゃなくて、()()()()()()()()()()()ということ。故に全ては必然。そうなるべくしてなった。元カノにフラれちゃったのは、可愛そうだとは思うけどね?」


 痛いところをついて来る。せっかく忘れかけていたのに、どうして今そこを掘り返してくるのか。


「……それを今、思い出させるのかよ」

「ごめんって! でも、それだって必然だんだよ。君は彼女を本気で想い、その一助となるべく覚悟を決めて、自身を鍛え上げようと決断し、実際に行動して力を得た。その結果が、たまたまフラれるという結果だっただけ。でもおかげで、美人な嫁さんをゲットできただろ?」


 それを言われるとぐぅの音も出ない。


「ああ、それと。杖以外の星婚(ステラリガーレ)装具(アペルトゥーラ)在処(ありか)だけど、必要になったらその都度ヒントをあげるから」

「……ヒントって、いったいどうやって――」

「持ってるだろう? あの読めない魔導書。あれは星婚(ステラリガーレ)について記された由緒正しい書なんだよ? まさか僕が書いた原本が残ってるとは思わなかったけどさ」



「一応、僕が作った小さな村の聖堂の地下に隠しておいたんだけど、いろいろあって発掘されちゃったみたいだ」

「……まさか、その村って」

「……そう。お前さんの故郷だよ。あそここそ、僕が作った楽園だった。戦争もなく、いがみ合いもない。質素で、おおざっぱで、だからこそ自然のありのままの姿で、そこが美しい。なくなっちゃったのは残念だけど。けど、そこから運命が芽吹いた」


 あの魔物の襲撃がなければ、俺は近隣の村に移住しなかったし、フィオナとの交友関係もあそこまで深くならなかっただろう。


 だとすれば、確かに全ての始まりはあの時だった。


「あとはお前さんが知っている通りだよ。お前さんのこれまでの決断が、結果として今を作った。でも失敗は失敗だから、もう一度やり直すといい。お前さんのパートナーと一緒に、二人で……」

「では、あの子のところに送って差し上げますから。あとはあの子と……ね?」


 俺たちの会話が終わるのを待っていてくれたのだろう。ウィルテイシア似の女性はそっと微笑んで、道を示してくれた。


「……わかった。申し訳ない。いきなりやって来て、こんな――」

「いいのいいの! 僕たちにできるのは、道を示すだけ。それを頼りにどう進むかは、今を、そしてこれからを生きるお前さんたちが決めることだ」


 変なおっさんと、それを尻に敷くエルフの仲良し夫婦。


 いつの日か。俺も彼らのように、ウィルテイシアと……。


「それじゃあ行ってあげなさい。あの子も、こんなところに来て、心細い思いをしているでしょうから」


 ウィルテイシア似の彼女が指差した先。そこには白い空間の中にわずかな陰りがあって、穴のようになっているのがわかった。


「最後に、あんたたちの名前を聞いてもいいか?」


 途中から何度か名前が出ていたから今更ではあるけど。どうしても本人の口から聞きたかった。そんな俺の問いに、二人は一層の笑顔で、こう答える。


「僕はヒュムシス。お前さんのご先祖様だよ!」

「わたくしはエルフィオーラ。あの子のご先祖様です」


 俺とウィルテイシアの関係が、古代を生きた神様たちのお墨付きなら。もう迷うことは何もない。


 俺たちは俺たちの道を進んでいいのだと。そう、この二人が教えてくれた。


「それじゃあ、行ってくる!」

「ああ、気を付けて! この先いろいろとあるだろうけど、何があってもくじけるなよ!」

星婚(ステラリガーレ)の光は、いつまでも二人を祝福してくれるでしょう。星の輝きは、常に貴方(あなた)たちとあります。どうか健やかに、末永く、幸せな日々を送られますよう」

「ありがとう。期待に応えられるように、俺なりに精一杯やってみるよ」


 そうして、俺は穴の中に飛び込む。


「待っていてくれ、ウィルテイシア! 今、行くからな!」


 想いが積もる。故に気が()く。


 早く会いたい。こんな俺を愛してくれた。俺が愛している彼女の(もと)へ。

読んでいただきありがとうございます。


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感想、レビューなどあると今後の執筆の励みになりますので、どしどしお送りください。

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