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最強魔導士の星婚《ステラリガーレ》~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~  作者: 源朝浪
第一部・第二章 精霊と魔族と星痕《ステラインデクス》

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第二十三話 エルフの住む森

 あれ以来、今まで以上に頻繁(ひんぱん)身体(からだ)を密着させて来るようになったウィルテイシア。ただテンションが高いという訳でもなく、かと言って、俺に対して何か不満を抱えて物申したそうにしている訳でもなく。


 理由がわからないまま、理性をすり減らし続けるのは少しきついので、もうじきエルフの里がある森だという辺りの平原で、俺は思い切って(たず)ねてみることにした。


「ウィルテイシア。あんまりくっつかれると、その……。ちょっと困るんだけど……」

「……私は思ったんだ。貴方(あなた)には、もっとはっきりと、直接的に。この好意を伝えるべきだとな」


 それは大変ありがたいし、正直悪い気はしない。


 しかし、俺はどうしようもなく()で。彼女の豊満な胸の感触は、いささか刺激が強過ぎる。ただでさえ、元カノとそういうことをしなくなってから日が()いていて、いろいろと()まっているのだから。


「それに、貴方(あなた)とくっついていると、何だか強くなっていく気がするんだ!」


 接触することで力を増す。


 それは、俺にも心当たりがない訳でもない。


 精霊たちが言っていた星婚(ステラリガーレ)と、何か関係があるのか。精霊たちは、俺たちの仲が深まれば深まるほど、星婚(ステラリガーレ)恩恵(おんけい)は、大きく強くなっていくと言っていたけれど。


「それを実感できるような戦闘は、今のところないじゃないか」


 そうなのである。精霊の泉をあとにして以降。俺たちは戦闘らしい戦闘をしていない。


 あの時は、たまたま魔族が精霊狩りをしに来たというだけで。魔王の配下が軍勢を率いて現れたということはなかったのである。正直、あの神秘的な精霊たちの光の舞の下で、彼女と交わした会話も。それを危惧して集中し切れない部分も多少はあった訳だけど……。


「いいじゃないか。精霊たちも言っていただろう? 私たちがもっと仲良くなれば、より大きな力が得られると」

「それはそうだけど、あんまり密着されると歩きづらいし……。何かあった時に即応できないだろ?」

「……ライオットは、私に抱き着かれるのは嫌か?」


 俺より幾分低い位置にある彼女の両目が、上目遣いで俺に向けられる。そのついでなのかはわからないが、俺の腕に当たっている柔らかい感触も、より強くなった。


 意識してやっている策士なのか。それとも知らずにやっている天然なのか。


 どちらにせよ、男としては悪い気はしないものの。やはり誰に見られるかわからない状況でこういったことをするのは、俺としては気が引けるところ。


「嫌じゃないけど……、さ。ウィルテイシアは恥ずかしくないの? 俺が抱きしめる時はいつも恥ずかしそうにしてるじゃん」

「それはそれ、これはこれ、だ。それに、普段釣れないくせに、時々急にガバッと攻めてくるライオットが悪い。ああいうのは心臓に悪いから、できれば普段からして優しく欲しいぞ?」


 どこまでも可愛いことを言う我が旅の相棒。正直たまらない。


 勇者について行ってしまった幼馴染のことは、今でもたまに思い出してしまうけど。それを言ったらウィルテイシアに失礼だろから、彼女には言っていない。それが後ろめたさを感じる要因であることは、俺も自覚しているのだが……。


「でもさ、いつも同じじゃ飽きるって言うだろ? そういう意味では普段はそこそこで、ここぞって時に目いっぱい愛でる方がいいんじゃないか?」


 そんな適当な言葉で茶を濁すしか、今の俺にはできなかった。


「いいや! 目いっぱい()でて貰えるタイミングも重要だが! それはそれとして! 私は! もっと! たくさん! 普段から! ライオットに()でて欲しい!」


 耳まで真っ赤になっているから、言っている途中で恥ずかしくなったのだろう。こういう時にピコピコとせわしなく動く耳も、可愛くてたまらない訳で。


「わかったよ。人前であんまり恥ずかしい真似はできないけど、ウィルテイシアに満足してもらえるように、もう少しわかりやすく可愛がることにするから」

「……う、うむ。わかってくれれば、それでいいんだ」


 今頃、彼女の頭の中では、いったいどう愛でてもらえるのかと、妄想が膨らんでいるのだろう。顔がほころび、同時に行き過ぎた妄想をしてしまった様子で、時々頭を沸騰させている。


 緩んだ頬が、今にも溶けて落ちそうなほど。彼女の顔からは、出会った当初の大英雄らしい勇ましさは抜けいていた。


「それで、ウィルテイシアの故郷まで、あとどれくらいなんだ?」


 周囲にはそれらしい森は見当たらない。まだずっと先なのか、それとも精霊の泉と同じように、結界か何かで隠されているのか。


「あ、ああ……。もうすぐだ。少し先に川が見えるだろ? あの川を渡って少し行くと、小さな林があるんだが。そこが里の入り口になっているんだ」

「林? 森じゃなくて?」

「精霊の泉と同じだよ。結界で隠されているんだ。もちろんエルフの里はうちだけではないが、在り方としては、どこも同じだと思ってくれていい」

「……なるほどね」


 確かにそれなら、他種族に見つかることも少ないだろう。


 基本的に異種族同士の交流がないこの世界においては、完璧な守りを見せつけるか誰にも見つからないように隠れるか。そのどちらかが最も有効な自衛手段なのだから、そうなるのも当然の話。人間は前者を、エルフは後者を選びがちということなら、種族間の価値観の違いとしても受け入れやすい。


 そういった異種族間の交流が、星婚(ステラリガーレ)の鍵を握っていることなど、今となっては誰も知らないのだろう。長寿と言われるウィルテイシアたちエルフの間ですら、星婚(ステラリガーレ)についての情報を、持っていなかったのだから。




 それなりに川幅のある川だったが、魔法があれば濡れずに渡るのは造作もないこと。今回は周辺の地形や、エルフの里への気遣いとして、土魔法で橋を作るのではなく、風魔法で川を飛び越える方を選んだ。ウィルテイシアを抱きかかえて、足元に風を生み出し、一気に飛び越える。


 どさくさに紛れて、ウィルテイシアが俺の首筋のにおいを()いでいたが、あえて指摘することもなかろうと、何も言わずにおく。


 まぁ、俺も、風に乗った時に流れて来た、ウィルテイシアの髪のいいにおいを、軽くだが堪能させて貰ったのだから、これについてはお互い様だ。


 よく手入れされたウィルテイシアのきれいな髪をなびかせながら、俺は川の対岸に着地する。抱えていたウィルテイシアを下ろそうとしたが、彼女は名残惜し気に目を伏せてから、俺の首に手を回し、俺の頬にほんのりと唇を当てる。


 キスと呼ぶにはささやかで、甘えただけにしてはしっかりと。彼女がどこぞの金持ちの女性のように唇に紅を指していたのなら、俺の頬にはくっきりと、その跡が残っていたことだろう。


「ウィルテイシア。いつまでもこのままじゃ困るぞ?」

「わかっている。でも、もう少しだけ……」


 彼女が何を思っているのか。正確なところは本人に聞かなければわからない。けれど、せっかくくっついたのだから離れがたい、という気持ちになったというのなら、それはわからないでもなかった。


 まだ彼女に出会ってから、さほど時間が経っている訳でもないのに。幼馴染としてずっと一緒に過ごしてきたフィオナといた時間よりも、今の方が充実しているように感じるのだから。人生何が起こるかわかったものではない。


 ともあれ、歩みを再開して一時間も経たないうちに、ウィルテイシアが立ち止まる。


 視線の先には、確かに森と呼ぶには寂しい木々の集まり。なるほど、これは確かに林と言うべきだろう。


「ここだ、ライオット」


 ウィルテイシアが一度こちらを向いたあと、正面に向き直って、何もない空間に手をかざす。すると周囲の木々が騒ぎ出し、空間が歪んだ。


 風もなく、音もない。


 時間にしてほんの数秒の出来事。


 ぽっかりと口を開けた空間の穴の向こうに、鬱蒼(うっそう)と広がる森が、その姿を現したのだった。

読んでいただきありがとうございます。


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