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死んでも君を愛し続け、異世界まで追いかけて来た俺は、君の結婚を祝福する。─この嘘は貫き通す。君の為に強くなった俺は別の女性にすべてを世話される─  作者: 一斗
侵攻の足音。揺れる誓いの行方編

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引き千切られる前哨基地。フィジカルアップを纏った転移者の、血に飢えた咆哮。

皇帝の冷徹な警告を背に、帝国の最凶勇者・大久保拓真は、ターゲットであるエドワード王子の暗殺、そしてその傍らにいるという聖女「ミヅキ」の略奪へ向けて動き出す。

 

 数日後、王国北方の国境線は、地平を埋め尽くす帝国の漆黒の軍勢によって地獄へと変貌した。

 故郷を守るため、震える手で遺書を認め、決死の奇襲で時間を稼ごうとする王国兵たち。しかし、フィジカルアップの力を得た拓真の圧倒的な暴力を前に、彼らは抵抗の甲斐なく、物言わぬ肉塊へと変えられていく。

 

 返り血を浴び、人を殺す感覚に恍惚の笑みを浮かべる拓真。

 演習場の高台からその様子を見つめていた皇帝が、重々しく口を開いた。


「……拓真殿の成長は著しい。だが、ここ数日は伸び悩んでいるようだな」


 傍らに控える大臣たちに告げる。拓真の力は凄まじいが、実戦の飢えが彼の進化を停滞させていた。皇帝は拓真を呼び寄せると、冷徹な声で「勅命」を下した。


「頃合いだ。拓真殿、貴殿に最初の仕事を授けよう。……ターゲットは、王国の第一王子・エドワードだ」


 拓真の『フィジカルアップ』による超人的な跳躍と速度があれば、王城の堅牢な外壁など壁ですらない。闇に紛れ、瞬く間に侵入し、その心臓を穿つ。


「ああ、いいぜ。やっと退屈しのぎができそうだ」

「……ただし、拓真殿。これだけは肝に銘じておけ。もし、万が一にも『ゼクス』と遭遇したならば――戦おうなどと思わず、即座に逃げろ」


 皇帝の念を押すような言葉に、拓真の眉が跳ねる。


「逃げろ、だと……? 俺に?」

「そうだ。奴を引き剥がすための策は既に動いている。まずは国境付近で我が軍が全面交戦を仕掛け、王国の主力……そして奴を戦線まで誘き出す」


 王国の守護神を国境に縛り付け、守りの薄くなった王城を「狂犬」が襲う。平和への均衡は、暗殺指示によって音を立てて崩れ去った。


「エドワードを殺った後なら、あのミヅキとかいう聖女様は自由にしていいんだよなぁ?」

「……好きにせよ。成果さえ上げればな」


「……けっ、最高じゃねえか」

 もしも俺が知っているあの「美月」なら、楽しいことになりそうだ。拓真は舌先で唇を湿らせ、下卑た笑みを浮かべた。その飢えた瞳の奥には、蹂躙への渇望がどす黒く渦巻いている。


 ────

 数日後。


 王国北方の国境線。連なる山の稜線に、地平を埋め尽くさんばかりの漆黒の軍勢が姿を現した。ガラルド帝国の本隊である。


 前哨基地の兵士たちは、その絶望的な数に息を呑んだ。早馬が砂塵を上げて王都へと走り去る。援軍が来る保証はない。だが、ここで止めなければ、自分たちの故郷が、家族が、蹂躙される。


 兵士たちは震える手で各々遺書を認め、それを基地の奥へと託した。

「……死ぬために戦うんじゃない。時間を稼ぐために、生き残るんだ」

 そう言い聞かせ、彼らは深い山中へと姿を消す。地の利を活かした奇襲。それが、彼らに残された唯一の抵抗だった。


 一晩を開けた場所で野営し進軍を再開する帝国軍。

「ひゃはは! やっと人を殺せるのか。楽しみだなぁ、おい!」


 ラミルの隣で、拓真が歪んだ笑みを浮かべる。

 死角からの魔術攻撃。王国兵による決死の奇襲。それらを受け流し、あるいは正面から粉砕するたび、拓真の瞳は異常な興奮に染まっていく。


「この、生身の人間を本物の剣で斬り殺す感覚……たまらねぇな。癖になりそうだ!」


 返り血を浴び、赤黒く染まった拓真が恍惚とした声を上げる。

 彼にとって戦場はただの「合法的な屠畜場」に過ぎなかった。王国兵たちの捨て身の抵抗は、帝国の進軍を一日ほど停滞させることには成功した。だが、その代償はあまりにも大きく――基地に残った守備隊は一人残らず、拓真達の手によって引き千切られ、物言わぬ肉塊へと変えられていた。


 死屍累々の光景の中、ラミルが淡々と拓真に告げる。

「……拓真殿。ここから先は本隊とは別行動だ。我らは軍を離れ、迂回ルートで王都を目指す」


「はいはい、わかったよ。ちぃと遊び足りねぇが、残りは王都の騎士様達を相手に遊んでやるか」

 拓真は足元に転がる、まだ温かい王国兵の亡骸を無造作に踏み潰す。その背中からは、隠しきれない血の臭いが漂っていた。


 王国軍を誘き出すための、血に飢えた咆哮が戦場に響き渡る。

 帝国の本隊は、あえてその威容を隠すことなく、真っ直ぐに王都を目指してゆっくりと進軍を開始した。それは、王国の守護神であるゼクスを戦場へと引き摺り出すための、巨大な「餌」であった。


 その軍列から離れ、拓真とラミルは夜の静寂に溶け込む。

 闇に紛れ、音もなく。

 狂犬と猟犬は、獲物の首を確実に刈り取るため、防備の薄くなった王都へと牙を剥きながら突き進んでいた。


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