帝国
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森を抜けた先、視界が開けた。
ルクスは足を止める。
「……でか」
巨大な城壁。
だが、それ以上に目を引いたのは——
人の多さだった。
門の前。
中へ入ろうとする人々の列。
農具を持った者。
荷を引く者。
子どもを連れた家族。
城壁の中に入ると——
空気が変わる。
騒がしい。
活気がある。
笑い声。
呼び声。
生活の音。
それなのに——
思わず深く息を吸いたくなるほど、空気が澄んでいた。
戦う者の気配はない。
訓練された兵でもない。
ただの人間。
それでも——
「安心してる、だろ」
ユーヴァスが言う。
ルクスは少し驚く。
「……分かるのか」
「見ればな」
軽く返す。
通りの端。
子どもが走る。
それを、母親が笑いながら追う。
誰も怯えていない。
誰も警戒していない。
「ここはさ」
ユーヴァスが続ける。
「“守られてる”って分かってる場所なんだよ」
その言葉に、ルクスは黙る。
(……王国は違った)
あっちは、違う。
強さが求められる。
結果が求められる。
役に立つかどうか。
それが全てだった。
「弱くていい」
ユーヴァスはあっさり言う。
「守るのはこっちの役目だから」
軽い口調。
だが、その言葉は重い。
「そのための席次だしな」
ルクスの胸が、わずかに揺れる。
(……そういう、国なのか)
その時。
通りの奥。
一人の女が立ち止まる。
こちらを見ている。
静かな目。
だが——
民を見る目とは違う。
(……こいつは、強い)
直感で分かる。
「ヴァス」
女が声をかける。
「帰ってきたんだ」
軽い口調。
だが視線はルクスに向いたまま。
「……それ」
間。
「何?」
ルクスの視界に、光が走る。
——《外部観測を検知》
女は、わずかに眉をひそめる。
「……変」
一言。
「守る側でも、守られる側でもない」
その言葉が、刺さる。
ルクスは無意識に拳を握る。
女は続ける。
「でも——」
少しだけ興味を示す。
「どっちにもなれる」
その評価に、ユーヴァスが笑う。
「だろ?」
軽い声。
「拾い物」
ルクスは顔をしかめる。
「物扱いすんな」
ユーヴァスは笑う。
「冗談だって」
だが、その目は真剣だった。
「でもまあ——」
少しだけ間。
「守る側に来いよ」
その言葉は——
どこまでも自然だった。




