邂逅
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「——王国訪問は中止する」
静かな声だった。
だが、その場にいた全員の空気が張り詰める。
「殿下……しかし、それでは——」
護衛の一人が言いかける。
ユーヴァスは視線を上げた。
「襲撃を受けた」
ただそれだけで、十分だった。
「この時点で、情報は漏れている」
「それにただの賊じゃない。統率がしっかりとられていた」
言葉に迷いがない。
十二歳とは思えない判断。
誰も、反論できなかった。
「帝国へ戻る」
その一言で、方針は決まった。
準備は早かった。
隊列は反転し、進路は帝国へ。
ルクスは少し離れた場所で、それを眺めていた。
(……帰る、のか)
当然だと思う。
襲撃された以上、進む理由はない。
だが。
「……お前はどうする」
声をかけられ、振り向く。
ユーヴァスだった。
ルクスは、少しだけ考えた。
行く場所はない。
帰る場所も、ない。
沈黙。
だが、ユーヴァスはそれを否定しなかった。
「なら、来い」
当たり前のように言う。
「帝国へ」
ルクスは目を見開く。
「……いいのか?」
「構わない」
即答だった。
「力を持つ者を拒まない。それが帝国だ」
その言葉は、あまりにも自然だった。
王国とは、違う。
「……分かった」
ルクスは小さく頷いた。
その選択が、どれほど大きな意味を持つのか——まだ知らないまま。
行軍は再開された。
森を抜け、街道へ。
だが。
ルクスは、ある違和感に気づく。
(……人が、いない?)
主要街道のはずなのに、異様に静かだ。
その時だった。
「——止まれ」
ユーヴァスが手を上げる。
全員が止まる。
空気が、張り詰める。
次の瞬間。
「ほう」
頭上から、声が降ってきた。
ルクスが反射的に見上げる。
そこにいたのは、一人の男。
木の枝に立っている。
音もなく。
気配もなく。
「予定変更、か。賢明だな、殿下」
軽い口調。
だが、異様な圧。
「……ガルか」
ユーヴァスが静かに告げる。
男は笑った。
「ええ。状況確認と——選別を」
そして——視線がルクスに向く。
「そっちのガキ」
「さっきの、見てたぞ」
空気が凍る。
(……見てた?)
あの戦いを。
「面白いな」
男は、ゆっくりと降りてきた。
「帝国に連れてくなら——」
剣のような視線。
「“試す”必要があるだろ?」
その瞬間。
ルクスの視界に、光が走る。
——《外部干渉を確認》
——《権能反応を強制起動》
(……またか!)
心臓が跳ねる。
男が一歩踏み出す。
「来いよ」
圧が、叩きつけられる。
ルクスは、剣を握った。
(……やるしかない)
ユーヴァスは、動かない。
止めない。
ただ、見ている。
(……試されている)
帝国に行く資格。
それを。
ルクスは、一歩踏み出した。
ガルは帝国の人間で皇太子に忠誠を誓っている部下です!本名はガルディス・ヘスティオールです。
■の適合者です。




