ラパーム南区3
仲間集め編と言いながら未だ正式な仲間が増えない不思議
慎二はルーベンスに連れられて奴隷達を眺める。
奴隷達の控える部屋は8畳ほどの部屋に檻がつけられ、中が見通せるようになっている。
檻の脇には動物園の説明板のように種族や教育がどの程度まで進んでいるか、それとスキルが書かれている。
どのようにスキルを調べたのか聞くと答えは単純明快。奴隷術によってステータスを強制的に開かせたのだ。
この世界においてステータスの開示というのは人道に反する行為だ。見せるのは家族、あるいは裁判などで厳格な本人確認を要求された場合のみだ。
しかし、奴隷、特に亜人の奴隷はガンタルシアにおいて人ではない。
奴隷に関する法律では主人は奴隷に対して衣食住の保障や性行為の強要、暴力などを禁じているが、実際にはそれは一部の破産や身売りした人族の奴隷にのみに適用される。
亜人奴隷も無駄に浪費することは誉められることではないが、仮に倒錯した趣味の末に遺体になったとしても「気を付けてくださいね」と言われるだけらしい。
慎二からすれば吐き気のする思いだ。
奴隷となったものには憐れみもあるし、同情もする。
しかし、それだけだ。
奴隷制度を糾弾しようと声高に叫ぶようなことはしない。
ラパームで生活してわかったことは奴隷達なくして生活が成り立たないということだ。
街での公共事業や溜まった糞便の処理、水汲み、荷運びや身の回りの世話まで街の運営から個人の生活まで基礎的な部分の多くを奴隷に依存している。ミーアのように事務的な仕事ならば相当以上に恵まれているのが実情だ。
他の街でも概ね同じらしい。
つまり、奴隷解放を叫ぶのはガンタルシア王国に対する革命運動に等しい。
慎二はそんな正義感に溢れた人間ではない。
更に言えば奴隷を買いに来ている慎二の言えたことでもないだろう。
だから慎二に出来ることは自分の元に来た者はそれなりの生活をさせてやることだけだ。健康で文化的な生活というやつだ。
前世の倫理観で言えば偽善ですらない身勝手な自己満足だろう。
(らしくないな)
元々慎二はそういったことを考える人間ではない。
それがこういったことを考えるということは前世での倫理観から奴隷を買う自分を無意識に弁護しようとしているのだろう。
自分とフェン、周りの人の安全と幸せのために使える物は使う。
それが父が死んだときに得た教訓であり、その教訓を目の前の欲に駆られて忘れかけていたせいで命を落としたのだ。
もう見失うまい。そう堅く決意していた。冒険者という死と隣り合わせの職業についたからにはなおさらだ。
そのためにも人選はしっかりとしなければならない。
値段的にも奴隷は高価。前世で言えば車ほどの値段がするのだ。
慎二がルーベンスに出した希望は二つ。
1つ目は料理を始め、家事など慎二とフェンの身の回りの世話が出来ること。
この世界では男性は金を稼ぐものという考えが大きい。農作業しかり、商売しかりだ。そして家の中のことは女性にお任せ。
故にこの条件を満たすのは必然的に女性となる。
断じて夜のお世話もしてほしいからではない。
2つ目は若いこと。
今後旅に出るかは未定だとしても冒険者としての仕事には同行してもらうことになる。
当然パーティーの戦力になることが望ましい。
ダマスカスクラスに上がったことで依頼で討伐することになる魔物の種類は大幅に増えた。変異種を相手にすることなど当たり前だ。
もしかしたら慎二の拳が通用しない相手がいないとも限らない。
そうなれば当然パーティーを組む必要が出てくる。ノクシーやディバリー・ティバリーと正式に組もうかとも考えている。
だが、先日の件でそれには決定的に足りないものがあるとわかった。
それはパーティーを守る"盾"だ。
慎二もフェンも矛としては強力なことは間違いない。
しかし、後衛を守れるかと言われると首を傾げざるを得ない。
なので、騎士経験者など即戦力を求めようとした。
しかし、希望は無情にも砕けた。
というのも、戦闘でも商売でも即戦力になるような人物はべらぼうに高いとヴァレンに聞いたのだ。
日本円換算すれば数千万はする。エクストラスキルなどを持っていれば億を越えることも珍しくないという。
慎二も短期間で小金持ちにはなったが、さすがにそんな大金をポンとは出せない。
前回の報酬は禁呪関連で魔石も回収されたため、口止め料も含め相当な金額だったが、それでもだ。
それにノクシーの勧めで魔道具もいくつか入手したい。
ならば、比較的安価で、成長の余地のある若者をと考えたのだ。
つまり、総合すると慎二の希望は若い女性。
念押しだが、断じて、断じて夜のお世話をしてほしいからではない。
重要なポイントの強調は大事なことだ。
それに奴隷法があるというのもそうだが、女性に行為を強要するなど論外だ。
例え、黙認される亜人奴隷であったとしても。
いやだからこそ、だ。
上の立場になるからこそ自制心が重要だ。
それを欠いてはいつかは足元を掬われる。
なにより、慎二自身の倫理にもとる行為だ。
外聞はそこまで気にしないし、多少グレーだろうが気が乗らなかろうが使える物は使うし、やれることはやる。
しかし、それでも越えてはならない一線があると慎二は考えている。
邪道は構わないが、外道にだけはなりたくない。
それが唯一慎二の正義だ。
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