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魔物使いはめんどくさがりながらも相棒と異世界で生きていく  作者: 千歳
2章~仲間集め編とも言う~
30/42

ラパーム南区

0時更新とはなんだったのか

いえ、努力はしているのです。

結果が伴わないだけで

 慎二はラパームの表通りを東に向けて歩く。

 ラパームの街は半径3kmほど。円形の街は大きく五つの地区に分けられている。

 一つ目が中央地区。

 領主のいるラパーム城を中心に貴族や有力商人などの富裕層が住んでいる。

 そこは治安が最も良く、排他的。

 そこらの平民階級にはほとんど縁がなく、そもそも中央エリアへ繋がる通りには衛兵がおり、用事もなく入れない。

 次が西と東。それぞれに門があり、西は小鬼の森などがあるため、冒険者が集まる。そのため宿屋や武器屋などの店が並ぶ。冒険者ギルドや、テイマーギルドなどもこの地区だ。

 対して東地区は王都や、他の領からの出入りが盛んで商人が中心となるエリア。

 商人ギルドの他、既に何度か訪れたヴァレンのモーラス商会も東地区に店舗を構えている。

 北地区は大きな建物が多い。領軍の宿舎や演習場、各商会の倉庫などだ。こちらも慎二にはあまり馴染みがない。

 そして最も混沌としているのが南地区だ。

 南地区でも西側には歓楽街。もちろん慎二も何度も通っている。

 東側には魔術師ギルドがある。

 その間は怪しい店が軒を連ねており、最南端にはスラムがある。

 そして今慎二が向かっているのはその南エリアだ。


 慎二は歓楽街で馴染みのお姉さん達に挨拶をしながら、南へと向かう。

 今歩いている辺りは健全な大人の遊び場。通りや店周りは他にもまして清潔で、道行く女性たちも身なりがいい。

 当然彼女(しょうふ)達に暗い雰囲気はない。何故なら彼女達は娼婦という仕事を"選んだ"者達だからだ。

 この世界で男が一発当てられる職業はと言われたら1番に出てくるのは冒険者。現在は戦争が少ない時代だが、あれば傭兵が並ぶ。次が商人だろう。

 対して女性が一発当てられる職業はと言ったら娼婦、特に高級店はまさにそれだ。

 高級店の顔となれば下手な貴族を上回る収入があるとも言われ、気にいられれば妻に迎えられることもある。

 男性からしてもそういった店に顔が利くことはステータスだ。

 政治、経済ともに男性優位のこの世界において娼婦は女性が上の階級に上がれる最も現実的な職業であり、手段なのだ。

 これらは全てヴァレンの受け売りだが。

 

「あら、シンジさん、どうしたのこんな時間に。まだ日暮れには早いですよ?」

 

 声を掛けてきた女性はシンジに近寄ると「すけべね」と言って胸を突っつく。

 そしてフェンの頭を軽く撫でた。

 人懐っこく、甘え上手なフェンは歓楽街でも既にアイドルだ。

 最近では彼女達にせがまれて店に遊びにくるときにフェンも連れてくる。

 フェンも遊び相手とおやつが手に入るのでノリノリだ。


「あぁ、パルヘさん。こんにちわ。今日はお店に遊びに来たわけでは…」

 

 最近慎二はパルヘを指名している。

 彼女は背は150前後と小柄で顔もべらぼうに美人というわけではない。むしろ、娼婦の中では地味だろう。

 だが一部だけは身長に不釣り合いなほど派手だ。

 慎二の理想の体型と言ってもいい。

 なにより、前世の影響か彼女の髪は黒に近い茶髪なのが一緒にいて落ち着く。

 

「あら、そうなの?残念。てっきり私が恋しくて仕方なかったのかと思っちゃった」

 

「ハハハ」

 

 女性に免疫のない慎二にとってこう言った会話は返し方がわからない。

 パルヘのほうもわざと困らせて慎二の反応を楽しんでいる節がある。

 そういう意味では特に意識せずに話せるノクシーやアリサは貴重な存在かもしれない。

 無論面と向かって言えば命を落としかねないが。

 

「パルヘさんもどこかにお出かけですか?」

 

「いえ、私はこれから帰るところです。新しいお菓子が東区のお店に出たみたいだから買いにいったんだけど、この時間じゃさすがになかったわ」

 

 この世界におけるデザートは高い。前世の倍はするだろう。それを新しいからという理由で買いにいけるのは彼女の人気の証拠だろう。

 

(そういえばノクシーもスイーツを奢るって約束しちゃったな…)

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、いえ、それは残念でしたね。良ければ今度お土産に持っていきますよ」

 

「ほんと?二つ名持ちの冒険者様にプレゼントを貰えるなんて嬉しいわ」

 

 そう。慎二は晴れて二つ名が認められた。

 以前から"狼星"と呼ばれていたがそれが正式に冒険者ギルドに認められたのだ。

 二つ名が付いたからといって特別報酬が増えたりというわけではない。

 ただ、ギルドが二つ名を認めたということはギルドが実力を認めたということだ。

 当然指名なども増える。

 合わせてダマスカスへの昇格も果たした。ラパーム支部では魔鉱クラスまでの最速記録だそうだ。

 このラパームにおいて二つ名持ちは一種の特権階級だ。

 慎二は微塵も興味がないが、軍へ志願すればほぼ騎士爵が貰える。ようは準貴族のようなものなのだ。

 当然娼婦側からしても客に二つ名持ちがいるというのはステータスだ。

 

「たまたまですよ。戦士ギルドの人達がいたらわからなかったですから」

 

「いえいえ、それもまた実力ですよ。実際力があっても上に上がれない人というのはいますから」

 

 娼婦は多くの人々と接するため、事情通が多い。

 この世界では知りたいことがあれば、一に酒場、二に娼館、三に商人と言うことわざがあるくらいなのだ。

 パルヘも例外ではなく、そういった人々を見てきたのだろう。

 謙遜は美徳だが、過ぎれば驕りだ。

 

「そうですね。運も実力のうちと言いますからね」

 

「そういうことです。ところでシンジさんはどちらへ?」

 

「ええ、ルーベンス商会へ行こうかと」

 

 ルーベンス商会はヴァレンに紹介してもらった奴隷商だ。

 

「あぁ、なるほど。シンジさんももう一流の冒険者ですからね。奴隷の一人くらい買ってもおかしくないですね。もしかして女の子を…」

 

「え、なんて?」

 

「いえ、あのお店は値段の割に教育もしっかりしていて評判いいって聞きましたよ」

 

「ええ、僕もそう聞きました」

 

 ラパームには奴隷商が全部で6つある。

 内高級店が2つ。

 中堅が3つ。

 安価な店が1つ。

 実際にはもう1つあるそうだが、それは非合法。つまり、"裏"の店だ。

 ルーベンス商会は中堅に入る。

 

「でも、気を付けてくださいね。あまり奥に入るとノールールですから。シンジさんにはいらない心配かもしれませんけど」

 

「いえ、気を付けます。…っと、すみません、もうすぐ約束の時間ですので行きますね」

 

 約束まであと20分もない。移動は15分もあれば十分だが、5分前行動は社会人の基本だ。

 例え客側だとしても。

 この世界では前世にもまして信用と信頼というのが重要なのだ。

 

「あ、ついお話が楽しくて…気がつかなくてごめんなさい」

 

「いえいえ、僕のほうこそ。では」

 

 慎二は頭を下げて歩き出す。

 その瞬間抱きつかれパルヘが耳元に口を寄せた。

 

「もし女の子を買っても私にも会いに来てくださいね?」

 

 使い古された手法かもしれない。

 パルヘも商売としてやっているのだろう。

 しかし、素人童貞には効果テキメンだ。

 奴隷を買ったらいくら手元に残るだろうか。

 そんな計算をしながら慎二は南地区に足を踏み入れた。

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