表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物使いはめんどくさがりながらも相棒と異世界で生きていく  作者: 千歳
2章~仲間集め編とも言う~
22/42

兆し3

 慎二達は感覚を空けつつ、森のなかを捜索していく。

 慎二を頂点に[聴覚強化]持ちのディバリーと[気配探知]持ちのティバリー、最後方にフェンがそれぞれ30mほど離れて菱形になるような形。その中心にノクシーを置き、それぞれの声をノクシーが魔術で仲介してくれているため何かあればすぐに連携が取れる。

 なんだかんだ言ったがノクシーがいてこその布陣だ。

 

 明け方に森に入ってから数時間。気温も上がってきた。

 

「きりがないな」

 

 慎二は(たか)ってくるゴブリンを鎧袖一触で払いのけて進む。ディバリーとティバリーのところも同じような状態。最低でも金クラスの彼らにとってゴブリンの数匹程度は敵ではない。連携を取るまでもない。

 しかし、ひっきりなしに襲いかかって来られるとやはり精神的に疲れる。

 面倒なことこの上ないが仕事なので仕方がない。

 

「僕らを狙ってきているというよりは村に向かっている途中で人間がいることに気付いて遭遇したから襲ってきてるって感じだね。やっぱり変異種のいる感じじゃないよ」

 

 ディバリーの見解に一同は同意する。ミニオークの群れを討伐してからも数匹の変異種を相手にしたが、やはり変異種を中心とした群れには雑ながら策のようなものを感じた。仲間を呼ぼうとすることしかり、包囲するように接近することしかりだ。

 しかし、襲ってくるゴブリンにはその様子は見受けられない。

 

「やっぱり迂回して進んだほうが良かったか?」

 

「それはダメですよ、シンジ兄様。テイマーギルドからは調査ということで依頼が出されていますが、そもそも上からは間引きということで依頼が出ているのですから。一応そちらもこなしておかないといなかった時が大変ですよ?」

 

「確かにそうなんだけどなぁ」

 

 ティバリーの言うことは最もだ。

 調査はテイマーギルドが出した独自の依頼であり、冒険者ギルドからはゴブリン討伐で依頼が出されている。

 つまり、冒険者ギルドはいない可能性も考慮してとりあえず対症療法として間引きという形にしているのだ。

 だからもし、上位種ないしは変異種がいませんでしたということになった時、調査に専念していたので間引きはしてませんとは言いにくい。

 

「逆に言えばこのゴブリンの来る方向を辿れば巣に近づけるとも言えなくもありませんね」

 

「まぁそうとも言えるけど…」

 

「この際、フェンも前に出して進む速度を速めたらどうなのよ。こんなんじゃ、いつたどり着けるかもわからないわ」

 

「わかった。とりあえず、一回集合しよう。そろそろ時間的にも昼時だ」


「「了解」」

 

 一行が集合すると慎二はマジックパックから食料を取り出す。

 不馴れな慎二と違い、ディバリーは簡易トラップを、ティバリーは枯れ枝を、ノクシーは魔術で枯れ葉を集め、ものの数分でひとまずの拠点が出来上がった。

 本来は魔術師は結界を張ることも多いらしいがノクシー曰く、

 

「これだけ探知持ちがいるのに、わざわざ燃費の悪い結界なんて張らないわよ。寝るわけでもないし」

 

 とのことだ。

 なので土魔術で土を盛り上げ、外から少し見えにくいように壁を作る。

 

「はぁ、ほんとにこれで3日も生活しなきゃいけないなんて嫌になるな」

 

 昼食は堅パンにしょっぱい干し肉を水で煮ただけのスープ。

 あとはディバリーが拾ってきたどんぐりのような木ノ実。

 あまりの酷さについつい愚痴が出る。

 日本の非常食がいかに優れていたことか、慎二はしみじみと感じていた。

 

「だったら、早く料理の出来る奴隷を買いなさいよ。あたしだって嫌よ」

 

「金が貯まったら買うよ。そんなこと言うならノクシーが買えばいいじゃん。俺より白金クラス長いんだし金あるだろ?」

 

「…うるさいわね。女の子はいろいろとお金がかかるのよ」

 

「女の"子"ねぇ」

 

「な、なによ」

 

「まぁまぁ落ち着いてください。それよりも今は目の前のことを話しましょう」

 

 ティバリーがすかさず話を変える。

 もしかしたらティバリーもノクシーの年齢に気付いているのかもしれない。

 

「皆さん何かここまでで気付いたことはありませんか?」

 

「ゴブリンの数が増えたのはいいとして、なんかあいつらの様子おかしくない?普通、仲間が瞬殺されるの見たら逃げるでしょ。なのにあいつらお構いなしに突っ込んで来るし。まぁ変に逃がすよりは楽でいいんだけどさ」

 

「確かにディバリーのいう通りだな。俺もそれは変に思ってた」

 

「私もです」

 

「それは…確かにおかしいわね。もしかしてなんらかの精神状態異常?」

 

「だとすれば恐慌状態か狂乱状態ですが…鬼種が"あれ"を使うなんて聞いたことがありません」

 

「"あれ"?」

 

「まだ決まったわけじゃないわ。とにかく確認してみないと。ちょっと1体生け捕りにして頂戴。調べてみたいわ」

 

「ノクシーさん、使えるのですか?」

 

「少しだけね」

 

 ノクシーの言葉にディバリーとティバリーは驚いた様子。

 慎二には何がなんだかわからない。

 ノクシーがフェンにゴブリン捕獲の指示を出す。

 フェンは5分もかからずに戻ってきた。

 ノクシーは魔術でゴブリンを拘束するといくつもの呪文を唱え始めた。

 ノクシーは常用する魔術のほとんどを無詠唱化していると自慢していた。わざわざ呪文を唱えるということはかなり珍しい魔術を使っているに違いない。

 その度にゴブリンの体から微かに発光し、確かに魔術が使われていることが見てとれる。

 その間にもゴブリンは慎二達に襲いかかろうと体をもじる。

 

「これは思ったより大事かもしれないわね」

 

「どういうことだ?」

 

「呪術よ。しかも、恐慌や狂乱なんかより悪質ね」

 

「それらより上ってことは、もしかして…」

 

「禁呪、ってことね。恐らく」


 ティバリーは唖然とした顔でノクシーを見つめ、それからゴブリンへと目をやる。

 拘束された四肢を外そうとするあまり、既に片腕は肩が外れ、足首は皮膚が破れて筋肉が見えている。

 それでもゴブリンがもがき続ける様は何が起こっているのかわからない慎二にさえ言い知れぬ不安を感じさせる。

次回16日0時更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ