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魔物使いはめんどくさがりながらも相棒と異世界で生きていく  作者: 千歳
1章~別名説明回とも言う~
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冒険者の街ラパーム2

 THE中世ヨーロッパ。ラパームの街並みはそんな感じだ。

 レンガ造りの家々と石畳。街中を馬車、引いているのは馬とは限らないが、行き交っており、商店からは客を呼び込もうと怒鳴り声に近いものが飛び交う。

 慎二の想像した異世界の街がそこにあった。

 

「改めまして、ようこそ、ラパームへ。是非この街を堪能してください」

「ええ、そうさせてもらいます。それにしても、ありがとうございました。なんか口を聞いてもらったみたいで」

 

 慎二は門番から受け取ったフラフープ程の大きさの首輪をフェンにかける。それをフェンの首の辺りまで通し、指定のボタンを押すとどんどんと縮んでいき、ちょうどいい大きさになった。

 これは騎獣などが街に入る際に着けることを義務付けられている首輪、従魔の証だ。

 この首輪には主人の意思で収縮し、万が一従魔が暴れた場合それを押さえつける効果がある。それと同時に主人となる者の所有物であることを示し、傷付けることは禁止されている。

 慎二は従魔や所有物という言い方がやや気に触ったが、第三者から見ればそう思うのも仕方ないとはわかっているのでとやかくは言わない。少なくとも説明してくれたヴァレンは慎二の表情からそれを察してくれたし、ヴァレンを怒ってもどうにもならないことだ。

 

「いいんですよ。フェン君とシンジさんを門の外で野宿させるのも忍びないですから。さて、フェン君と離れるのは本当に、本当に名残惜しいのですが、私もまだ仕事がありますので店に戻らなくては。宿は決まってないと思うので、そうですね、どこがいいと思います?ゴレンさん」

 

 ラパームは冒険者の街というだけあり、多くの宿屋がある。それこそ貴族も利用するような贅を凝らしたものから蜘蛛の巣が張りほこりが舞うようなボロい店まで。まさにピンキリだ。

 

「そうですね…予算はいくらだ?」

 

 ゴレンはぶっきらぼうに慎二に声をかける。彼らからすれば慎二は客の客であり、金を貰っているわけでもない。慎二のことも護衛してきたのはヴァレンの顔を立てたに過ぎないのだ。

 慎二もそれを自覚しているので、ゴレンの様子を怒る気もないし、むしろ申し訳なく思っている。

 

「4000え…いえ、銀貨4枚以下で2食付きがいいなぁなんて」

「銀貨4枚か、ひいらぎ亭だな。ボロい宿だが、ちゃんと掃除されてて外見ほど中は汚くねぇ。それに料理もうまいしな。見てくれがあれだから泊まるやつも少ねぇ。あそこならこの時間でも部屋はあるだろう」

「わかりました。行ってみます」

「では我々はこれで。是非私の店にも顔を出してください」

「ええ、近いうちに。何から何まで御世話になりました」

 

 ヴァレン達を見送ると慎二とフェンは紹介されたひいらぎ亭に向かう。

 いくつかの通りを跨いで寂れた路地裏にそれはあった。

 

「言われた場所はここか…幽霊でも出そうだ。まさか嫌がらせで紹介したんじゃないよな」

 

 可能性はなきにしもあらず。

 しかし、ラパームはそれなりの規模の街であり、門からこのひいらぎ亭までも迷いながらだったため30分近く歩いた。既に日は沈み、街灯のないこの路地は一寸先は闇状態だ。そのため、今から新たに宿を探すのは難しい。

 

「仕方ない、とりあえず入ってみるか」

 

 慎二は覚悟を決めてギィギィとなる扉をくぐる。

 

「良かった。中は本当にまともだ。なんとか今日も野宿せずに済みそうで良かったな、フェン」

「ウォウ」

「え、うわぁぁぁ、ま、ま、魔物ぉぉぉぉ」

 

 フェンの返事でカウンターで舟をこいでいた少女が飛び起きる。やや、赤みがかった茶髪の女の子、年齢は10歳前後だ。

 

「なんだいなんだい、魔物なんかにびびってんじゃ…テレサ、よく見な。人がいるだろう。ってことはあれは従魔で、その隣の人は魔物使いだろうさ。そんくらい分からなきゃ宿屋の看板娘なんてなれやしないよ、このバカ娘が」

 

 奥から出てきた女性がポコリなんて可愛いものではなく、ボコッと低い音を鳴らしてテレサと呼ばれる少女の頭に拳骨が落ちる。少女は目を潤ませながら頭を押さえた。

 慎二も前世の記憶が蘇り、無意識に頭に手が伸びてしまった。

 

「っとすまないね。お客さん…でいいんだよね?」

「あ、え、ええ」

「そりゃ良かった。すまないね、客がめったに来ない上に魔物使いなんて珍しいからさ。ささ、そんなとこ突っ立ってないでこっちに来な」

 

 呼ばれるまま慎二はところどところ破けているソファーに座る。フェンは慎二の足元で丸くなった。

 

「その()も良い子だね。うちのバカ娘よりよっぽど落ち着いてるよ」

「ありがとうございます」

「頭なんか下げなくていいんだよ。もっと気楽にしな。(あたし)はアリサ。一応この宿の女将だよ。こっちがテレサ。宜しくね」

 

 アリサはテレサと同じ色の髪を後ろで纏めている。そして、言葉遣いとは似合わない可愛いげのある顔の美人。

 こういう宿屋の女性は恰幅のいいという先入観をいい方向に裏切ってくれた。

 ただ、中身に関しては想像通りで慎二が「旅をして来た」と言うと「若いのに大したもんだ」なんて言いながらバシバシと慎二の肩を叩く。

 その間にアリサの隣に座ったテレサはチラチラとフェンを見ていた。それに気付いたフェンはそれとなくテレサの足元に尻尾を投げ出す。

 テレサは恐る恐る尻尾に触り、大丈夫だと思ったのか、背中などをなで始めた。

 そこでようやくフェンは手などをなめ始める。

 押すだけでなく引いて待つテクニックに慎二は舌を巻いてしまった。

 

「へぇ、ゴレンの紹介でねぇ。あいつにこんな若くて可愛い友達がいるなんて知らなかったよ」

「いえ、友達というほどでは…道中御世話になりまして」

「そうかいそうかい。ぶっきらぼうなだけじゃなかったのか。まぁいいさ。それで何泊していく?うちは泊まりで1泊2食で銀貨3枚半。フェンって言ったね。その子も合わせて4枚だね。5泊以上なら銀貨1枚分まけるよ」

「じゃあ、とりあえず5泊で」

 

 慎二としてもまけてくれるのは喜ばしいことだ。収入の目処をたてるのも日数がかかることが予想される上アリサは-物理的に-強力なボディタッチが多いことを含めても気のいい女性だ。

 アリサとのやりとりのほっこりするもので母も姉妹もいなかった慎二に母娘(おやこ)とはこういうものかと思わせてくれる。

 テレサもいつのまにかフェンに顔を舐められても大丈夫になっていた。

 

「夕飯まだだろ?じゃあ、部屋に行く前に食べちまいな。うちの飯はうまいよ」

 

 通された食堂もテーブルと椅子のセットがいくつか置いてあるだけだ。しかし、念入りに掃除されており、不衛生なようには全く見えない。

 出された食事も豪華とは程遠いが手間をかけているのがわかるものだった。

 スープは薄味だが野菜や肉の味が十分引き出されており、塩っからい干し肉はエールに良く合う。

 それを作った人物はゴレンと並ぶほど強面な上無口で威圧感が半端ではなかったが。

 

「どうだい、旨かっただろ?旦那(あのひと)は料理だけは器用になんでも旨くしちまうのさ。まぁ料理(それ)とあっち以外ポンコツで困っちまうけどね」

「ハハ」

 

 それからもなんやかんやと言いつつ慎二はアリサののろけ話を長々と聞かされた。

 慎二は他人の夫婦事情ほど聞いてて苦しいものはないと学んだ。

 

 

次回は5日0時更新です。

そろそろ熱い展開を書きたい…けどもう少し先になります。


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