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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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098(M) トルガナン王国の祝日となるか


「オランブル王国は中々良い人材を送って頂きました。行政官という役職も1代限りとして使う分には良さそうな名前ですね」

「我が王国を見習って貴族の削減に努めたようです。貴族に送られる報酬が、民生政策に生かされますから、良い王国になると思いますよ。一応、オランブル王国に反旗を示した貴族ですが、トルガナン王国でなら手腕を振るうことも可能でしょう」


 俺の言葉に、笑顔で頷いている。

 政治の世界は奥が深いようだ。使える者は使うということに、あまり頓着はしないんだな。


「彼らに副官を与えて指導をしてもらおうと考えています。それは私の一存で宜しいでしょうか?」

「カリネラムの裁量に任せる。内政はカリネラムに任せたいと言った以上、俺に諮らずとも十分だ。国庫の管理については互いに相談しなければなるまいが。そういえば、子供達の教育はどうなっているんだろう? 確か教会に任せているはずだが?」

「一度、状況報告を行うように伝えておきましょう。確かに、それは失念しておりました」


 それだけ忙しかったに違いない。

 子供もそろそろ生まれそうだから、乳母の手配だって必要だろう。代理者を早めに決めるように伝えたところで、王族3人の夕食を終える。


 翌日は執務室にジャミルとマデリーを副官を交えて呼び寄せた。

 いつまでも、前線にいるようでは困るからな。そろそろ俺の副官に戻って欲しいところでもある。

 クリスティは通信方法を考えると言っていたから、任せておけば良いだろう。


 4人を前にして、テーブルに地図を広げる。

 東のラーメル王国から西のトーレス王国を含む地図には、北のコキュートスまで描かれている。現時点では、これ以上大きく周辺地図を描いたものは無い。


「トルガナン王国は以前と比べて3倍になったが、ここで終わることも無いだろう。北にはラズラム山脈に繋がる辺境の豪族いるし、その奥には魔族の版図だ。東西の王国も間接的ではあるがトルガナン王国に影響を与えていたことは確かだ」

「先ずは、リオンではなかったのか?」

「先ずはリオン、ということになるな。次はトーレスを攻めたい。トーレスに軍を移動することになれば、後ろのリオン達が気になる」


 何とかせねばなるまい。だが、失敗すれば大きく戦力を失うことになる。自ずと派遣できる戦力は限られてしまうのだ。


「現在、徴募兵を集めている。2個大隊を作っても、直ぐに戦線に立たせることはできんぞ!」

「それぐらいは分かっているさ。副官まで呼んだのは外でもない。ジャミルとマデリーの副官に指揮を任せて、新たな部隊の創設を手伝ってくれ。海兵を作る!」


 俺の言葉に、地図から顔を上げて4人が俺を注視した。


「陸は騎馬隊と装甲車、それに将軍達の部隊である従来の部隊で十分だ。新たに設けるのは、大型貿易船3隻を軍船として使うために必要になる。装甲艦はクリスティ達に任せれば形になるだろう。装甲艦の攻撃の下で2隻の軍船から小型船で上陸する部隊を作る」


 場合によっては海兵の運搬用に通常の交易船を使っても良いだろう。最低1個大隊は必要だ。2個大隊であれば色々と応用も効くだろう。


「現在辺境に移動したオランブル王国軍を陸地から攻撃させ、海兵を海から投入する。オランブルの貴族私兵を最初に投入して、その後が海兵だ。少しは損耗を抑制できるだろう」


 ジャミルの竜騎兵とマデリーの軽騎兵は温存しておくに限る。副官を部隊長に昇進させて、新たに副官を見つければ将来はもう1つぐらいは軽騎兵を作れるに違いない。陸の戦闘は流星火と銃を使った機動戦に勝るものは無い。

 敵の足止めは、装甲車を使うことになるだろうな。海兵を鍛えれば、3方向から敵に迫れるに違いない。


「そうなると、新たな副官を見つけねばならんな」

「そうしてくれ。海兵も直ぐに副官達に引き継ぐことが前提だ。ジャミルとマデリーには1個中隊を指揮して王都に常駐して貰いたい」


 単なる幕僚ではジャミル達が承知しないだろう。1個中隊の規模なら、救援部隊としても役に立つ。

 

「リオン次第でトーレス王国への進軍が遅れそうだな。俺には攻めても辛勝となるように思えるのだが……」

「俺個人としては、リオンは放っておいても構わんと思っている。だが、マデリーを思うとそうもいくまい。仲間に傷を負わせたのだ。それに引合う戦はせねばなるまい」


 ジャミルがニヤリと笑みを浮かべる。マデリーは俺を見つめたままだ。

 副官達は、これからの戦を思い浮かべているのだろう。唇を噛みしめている。


「確かに、黙って見過ごせないな。次の戦、マデリーの為にも頑張らねばならん」

「マデリーにも、言っておく。たぶん戦には勝てるだろう。だが、次のトーレス進軍に改めて兵士を徴募することが無いようにしてくれ」


「兵をあまり失わないように……、そういうこと?」

「そうだ。2個大隊で北を攻めて白兵戦にもつれ込んでいる。リオン達の戦力が少なければ、俺達の進攻で受けた痛手を回復するにはかなりの時間が掛かる。トーレスを叩けば、あの島を常時包囲することでリオンの動きを止めることも可能だ」


 2個中隊は必要かもしれないが、十分に阻止は可能だ。島に釘付けなら、島を発展させることも出来ないだろう。

 周辺国を平定すれば、行動に移さずとも軍門に下ってくれるだろう。

 だが、それまで待ってはマデリーも心の整理が付かないのは俺のも理解できる。

 そういう意味で、この戦はマデリーの為に行うというのが正しい言い方なのかもしれない。トーレス王国への進軍位では、リオンが島から出てくるとは思えない。

 

 翌日、俺の執務室にやって来たのはジャミルだけだった。マデリーは、徴募兵を自ら選択しているらしい。


「あいつらしいな。次はリオンを……、と考えてるに違いない」

「ジャミルには申し訳ないが、マデリーが上陸することを阻止して貰うぞ。2個大隊に2個中隊を運んでも、戻ってくるのは1個大隊だろう。だが、畑や村にたっぷりと流星火を撃ち込むことはできる。リオン支配下の領民に恐怖を与えれば十分だ」


 俺の言葉にジャミルが苦笑いをしている。理由は、勝つことができないと俺が思っているからだろう。

 リオンに勝っても次に繋がらなければ意味がない。

 痛手を与えてさっさと引き上げるのが一番いいのだが、戦略上の勝利を説明しても理解して貰えんだろうな。


「銃の威力を上げるのは難しいのか?」

「現状では銃が爆発してしまいそうだ。大砲なら肉厚にできるが銃は持ち運びを考える以上、現状で我慢する外にない」

 

 ジャミルにしてみれば一撃離脱の効果を高めたいということなんだろう。

 ならば、銃を2丁持たせても良さそうだ。待てよ……、銃身を2連装にした場合はどうなんだろう?

 試作してみて、使えそうなら竜騎兵に持たせても良さそうだ。交換した銃を使って新たな軽装歩兵も作れるだろうし、海兵達にも銃位は支給させておきたい。


 2連装の銃についてジャミルと仕様を話し合っていた時だ。

 軽く通路を走る音が聞こえて来たかと思ったら、扉が叩かれた。ノックの仕方は侍女特有のものだから、直ぐに執務室に待機している近衛兵が扉を開けると、倒れ込むようにして侍女が執務室に飛び込んできた。


「陛下、お后様が……、お生まれが近づいております。先の御妃様と宮殿のシスターがお后様の部屋に向かわれたそうです!」

「何だと!」


 思わずテーブルを叩きつけるようにして椅子から立ち上がって侍女を見据えた。

 侍女は怯えた表情で、苦しそうに息を吐いている。


「すまん。取り乱した。……そうか。良く知らせてくれた。とはいえ、お産に私が立ち会うことはできまい。ここで無事を祈ることにしよう。妃にも、私が

ここで祈っていると伝えてほしい」

「分かりました。お生まれになられましたら、再びお知らせいたします」


 俺が頷くのを見て、お辞儀をすると執務室を出て行った。

 侍女の出て行く姿を見て、ゆっくりと椅子に腰を下ろす。ジャミルが席を立つと戸棚からワインとカップを持ってきた。数が多いと思っていたら、部屋にいた近衛兵達にもカップを配っている。


「さあ、前祝だ。どちらが生まれても新たな王家の一員が誕生するんだからな」

 ジャミルの言葉に、俺達は祝杯を掲げる。

 お産だけは手伝うわけにはいくまい。出来れば王子が生まれてほしいが、王女でも構わない。優秀な男を伴侶にすればこの王国が益々栄えるだろう。王子が生まれても凡庸であったなら優秀な取り巻きを早めに確保せねばなるまい。

 王座に座っているだけの存在でも、王国が栄える仕組みを考えれば良いのだ。

 

「掛けは、王子だと配当が低いんだ……」

「掛けをしてるのか?」

「まあ、それだけ国民の注目を集めていると思えば良いだろう。身を滅ぼさぬ程度の掛けなら大目に見るべきだな」


 国民の楽しみか……。王宮が国民に娯楽を提供すると考えれば良いのだろうが、あまり気持ちの良いものではないな。

 それほど娯楽に飢えているなら、何か考えるのもおもしろそうだ。

 王国軍の兵士の武技を競わせてみるか? ご婦人方なら音楽会や観劇もあり得るな。カリネラムが床を上げるようになればサロンで考えて貰っても良さそうだ。

 とはいえ、実行する前に先の御妃様に相談してみよう。案外おもしろそうな催しを考えてくれるかも知れないぞ。

 


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