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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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097(R) ブルゴス再興を計るには


 タタラ炉に火が入ると、まるでお祭り騒ぎのようになってしまった。

 フイゴによって炉から高く上がる炎は、俺達を興奮へといざなう魔力を秘めているのかも知れない。

 午前中掛かって十分に炉内温度が高まって来た時、砂鉄と木炭が交互に投入される。

 炉内の状況は分からないから、炉の上に舞う炎の色と形が唯一の手掛かりになる。俺にはさっぱりだから、バドスが持つドワーフ族の知恵に期待することになる。

 まだまだ騒ぎが収まらないタタラ炉を収めた納屋を出ると、1人、入り江の砦に向かって歩いていく。


 村にも人影が無い。ワイワイ騒いでいる子供達も、村人と共に見学に出掛けたのだろう。

 種蒔きの終えた段々畑を見ながら砦に続く通りを歩いていくと、俺の姿を見たのだろう、兵士が砦の中に走っていくのが見えた。


 いつもは無人の門に今日は兵士が立っていた。

 俺が近づくと、騎士の礼を綺麗に決める。この辺りは元近衛兵だからなんだろうな。

 感心してみていると、砦の2回の方からラジアンが降りて来た。

 最初から、2回のテラスの向かう道を進めば良かったのかもしれない。


「パンドラ様がお待ちです。どうぞこちらに」

 ラジアンの案内で、テラスに向かう。小さなテーブルセットにベンチをいくつか置いてあるから、農家の人達もたまにやって来てお弁当を広げるようだ。すぐ目の前には穏やかな入り江があるし、夏には子供達が大勢遊ぶからね。その監視場所にも使われている。


「ようこそ、おいでくださいました」

 王女が席を立って頭を下げる。俺も小さく頭を下げてこたえた。俺の肩書きは男爵だから、元王女の方が各上になるんだけどね。


 王女が腰を下ろしたのを確認したところで、俺も椅子を引いて腰を下ろす。

 近くに用意したコンロで王女付の侍女が俺達にお茶を出してくれた。風向きを考えて火種を用意して貰う。

 腰に差したパイプを取り出して、王女に顔を向けると笑顔で頷いてくれたから、この場での喫煙は問題なさそうだ。


「小さな島ですが、リオン殿の働きは目目をみはるばかりです。リオン殿がブルゴス王国に居てくれたならと、思わぬ日はありません」

「至って普通の男です。あまり買被りしないでください。本来は世間話をしながらゆっくりと本題に入るのでしょうが、互いに色々と用事もあるでしょう……」


 俺の言葉を聞き漏らすまいと、王女が俺の顔を見つめる。ラジアンも少し離れた場所に立って俺達の成り行きをっ守るつもりのようだ。


「話が長くなるかもしれん。ラジアン、椅子を用意してテーブルに座ってくれ。場合によってはラジアンの意見も確認する必要も出てくるだろう」


 俺の言葉に、王女がラジアンに目くばせをして頷いている。ラジアンは頭を下げると、テラスの片隅にあった椅子を持って俺の左隣の席に着く。

 これで、話を始められるな。

 侍女が小さなカップにワインを注いで俺達の前に置く。

 一口飲んで、王女の顔を見た。


「トルガナン王国は西のオランブル王国を下しました。結果的には王家は存続していますが貴族の半数を粛清し、オランブル王国の軍事を掌握した以上、実質的にはトルガナン王国に組みこまれたものと推定しています。

 この状態であれば、早くて来年、遅くとも3年以内にはこの島にトルガナン王国の軍勢が押し寄せて来るでしょう。

 この島にブルゴス王国の王女がいるならば、万が一の時には粛清されかねません。俺達は全員で迎え撃つ覚悟を持っていますが、王女様達はどうしますか?」


 王女はしばらく俺の顔を見ていたが、どうやら考えがまとまったようだ。


「たとえこの地で果てようとも、トルガナン王国に一矢報いようと思っております。その決意はこの地に迎え入れられてから変わることはありません」

 王女の言葉に、ラジアンも頷いている。俺の取り越し苦労なのかもしれないな。


「その決意は立派ですが、王国の再興は考えないのですか?」

「王国の盛衰は世の常と申します。王国を広げることに思いを寄せた結果でしょう。自らの殻に合わせた国造りをなぜに出来なかったのかと。かつてのブルゴス王国の民が新たな王国の傘下に入って幸せならば、王国の再興はせぬ方が良いのです」


 確かにそれは言えるな。王国再興の狼煙を上げれば再び国土が戦場になってしまう。マルデウスの治政に不満が無ければ、新たな戦をせぬ方が良いに決まっている。


「とはいえ、選択肢を早々に閉ざすこともありますまい。もし、この島に人が溢れるようなことがあれば、北に拠点を作るぐらいは出来そうです。俺が先のトルガナン国王から賜った土地は、この島以外に海の道が通る陸地があります。南北50Rd(7.5km)、東西100Rd(15km)、その地を新たなブルゴス王国の出発点となされては?」


 この島の3倍以上の土地だ。土地の広さから言えば中流貴族に匹敵するだろう。


「土地を譲ってくださると?」

「譲りはしますが、現状では簡単に潰されますよ。次のトルガナン王国との戦はかなりの激戦になります。戦次第では我等に目を向けること等できなくなる可能性があるでしょう。可能な限り相手の戦力を削げば、向こうから戦の手を引くことになります」

 

 トルガナン王国の戦力を削げば、東西の王国が動き出すだろう。

 果たして、その動きに耐えられる戦力を残せるだろうか? 場合によっては王国の版図が縮小されかねない。新たに兵を募集しても既存の兵士程には使えないだろう。


「トルガナン王国の戦力削減の為に、リオン殿は危険を冒すつもりですか?」

「たぶん、最初で最後のぶつかり合いをすることになる。それまでは俺達は陸地に居を構えることができない」


「耐えるための島だったんですね。我等が陸地を版図にすれば、この島の安全はかなり高くなります。それも狙いですか?」

「そうだ。それだけの価値は十分にあると思うが?」


 その時には恒久的な海の道を作っても良さそうだ。帰る場所があるなら、陸地に住む農民だって増えるに違いない。土地の大きさ的には2つぐらい村が作れると思う。


「リオン殿の一存で我等に約束してもよろしいのですか?」

「反対する者はいないだろう。だが、商人の来訪は認めてほしいな。それと、焚き木に砂鉄は、そちらの産業にもなるだろう。森の西を流れる川から水を引けば農地だって広げられる。かつての国境となった東の川まで伸ばしても、マルデウスは文句を言えまい」


 さて、どう出るかな?

 これだけの領地ではあるが問題は山積だ。それにどれぐらい気が付くだろう。


「将来的に我等の領土とするなら、魅力的なお話です。ですが現状ではかなり問題もありそうですね」

「それだけの領地ではあるが、戦力が足りない……。いかんともしがたい話です。少なくとも大隊規模の戦力が無ければ潰されるでしょう。とはいえ、簡単に戦力は増えません」


「王女様。ブルゴス国内に潜伏しているかつての兵士を呼び寄せましょう。彼等もKのままトルガナン王国の支配下で暮らすのは苦々しく思っているはずです」

「さらに隠れ里……。再度檄を飛ばしてどれだけの兵士が集まってくるか。俺はその中にトルガナン王国の間者が紛れることがないように祈るばかりです」


 急な戦力状況には必ず落とし穴があるはずだ。

 その辺りをきちんと見極めなければ、自分達の寝首を掻かれてしまう。


「集まっても1個中隊にはなりませんね。リオン殿の危惧したことは、私達も十分に考える必要があります。リオン殿のように農民を集めて、彼らの中から兵士を育てるのが一番なのでしょうが、時間が掛かり過ぎます」


 王女がおらたちのカップにワインが無いのを知って、立ち上がってワインを注いでくれた。

 パイプを黄綬に見せて、頷くのを確認したところで熾火で火を点ける。

 さて、これからが大事なところだ。


「先ずは、陸地に所領を持って頂くことは、了承して頂けますね。全てはここから始まります。

 次に、マルデウスの攻撃を凌いだところで、一気に陸地に砦を築きます。大きさはこの砦より少し大き目ぐらいが良いでしょう。同時に、陸地までの海の道を満潮時にも渡れるように土盛りをします。これで、万が一にも砦が落ちるような時には島に逃げ帰れます。後は少しずつ、長城を築くことで何とかできるでしょう」


 高さ2m程の石塀でぐるりと領地を囲んでしまう。かなりの労力を使うことになるが、ブロックを活用すれば出来ない話ではない。

 手前に空堀を掘り、その土を石塀の内側に盛り上げれば、相手より高い位置で攻撃を行えるだろう。

 それ以上版図を広げられないのが残念だけどね。


 翌日は、石塀の作り方と空堀の関係について説明する。

 から大きくすることはないだろう。砦を大きく囲むように1km程の長城で良いはずだ。それを足掛かりに少しずつ規模を大きくすれば良い。


「これなら小隊規模でも十分に守れるでしょう。ですが、それには大砲が不可欠です」

「1Rd(150m)おきに、このような広場を作ります。これが大砲の射点になるでしょう。荷車に大砲を乗せれば2門を必要に応じて配置できます」


 さらにロケット弾の発射装置を持てば十分じゃないだろうか? 数は負けても、飛距離では十分に勝っている。

 それに北の玄関の戦力を削減できるから、ケーニッヒ達を騎馬隊とすれば1個小隊の増援も可能だ。


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