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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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082(M) 装甲車


 概略ではあるがリオン達の住む島の地図を手に入れたことは、今後の作戦計画に大いに役立つはずだ。

 本来であれば、直ぐにでもリオン達を攻めたいが、今はオランブル王国を考えねばならない。

 オランブルの貴族同士の争いに介入することは当初の目論見通りで良いだろうが、トーレス王国の動向も気になるところだ。

 俺達の介入を知れば直ぐに軍を投入するのは目に見えている。

 かといって、トーレス王国の介入を待つとなれば、王都を先に攻略されかねない。


 トルガナン王国とオランブル王国それにトーレス王国のⅢか国を1つの地図にしたものを作らせてテーブルに広げてはいるのだが、縮尺がいい加減だからな。電撃戦を行うには心もとない限りだ。

 町や村を結ぶ街道は描かれているが、その距離を歩く日数で表現するのがこの世界に地図だ。戦を行うにはもっと正確な地図が欲しいところだな。

 待てよ……。徒歩で1日の距離を200Rd(30km)として、町や村の位置関係を図にすれば少しは良くなるかもしれないな。方向はこのままにするしかなさそうだが、それでも少しは全体像が掴めそうだ。


 クリスティを呼びだして俺の考えを伝えると、笑いながらも了解してくれた。そんな事を考えるのは俺だけだと言っていたから、東西の戦が終わったところで正確な地図を作るのもおもしろそうだ。

 耕作面積が分かれば、そこから得られる税収も計算できるだろう。


「ところで、前にしていた話だけど……。こんな物になりそうよ。私としてはあまり役立つようにも思えないけど」


 クリスティの見せてくれたスケッチは荷車に鉄板で覆われた箱を乗せたような代物だった。

 銃弾を弾くとなれば鉄板以外にないだろう。斜めに装甲板を張り、天井にも張ってある。天上板は銃弾ではなく矢を防ぐためなのだろうが、これを動かすのは馬でも牛でもなく、人力によるものだった。8人が中に入って押すことになる。


「連発銃を前面に付ければ十分でしょう。荷車を押す連中にも銃を支給すれば、数台並べて拠点化することも出来そうよ」


 発想は良いな。だが、全体に装甲版を張らなくても良いだろう。全面と屋根、それに側面は半分程度で十分だ。さらに側面の板を横に張りだせるようにしておけば、それを柵としても使用できるだろう。鉄板ではなく板で十分だ。他の荷車も同じように側面の板を横に張り出すことで、20Cb(6m)ほどの柵を作れる。荷車の横幅を7Cb(2.1m)とするならば、5台もあれば100Cb(30m)ほどの堅固な防衛陣を構築したと同じことになる。


「屋根に流星火の発射台を乗せても良さそうだ。左右に横木を出して車を押せる人数を増やすのも手だな」

「正面に出すの!」

「そうでなくてはおもしろくあるまい? 流星火の発射台の荷車を転用しても良いぞ。あれは、この装甲車の内側から撃てば良いだろう。それとだ、この中から、大砲が撃てるかを確認してほしい。それが可能なら、半数には大砲を積込みたい」

「規模は1個中隊というところかしら?」

「動かすだけで2個分隊は必要だろう。1個小隊で2台になるだろうな。20台は欲しいから部隊の編成を少し変えねばなるまい」


 出来れば1個小隊で4台を率いて貰いたいところだ。これも砲兵隊の中に組み込めば良いだろう。今までは後方に位置していた部隊が先陣に位置を変えるのだ。戦の概念ががらりと変わりそうだな。


「地図の方は数日で出来そうだけど、装甲車と貴方が名付けた方は少し時間が掛かるわよ」

「とはいえ、西の状況が見えんところがある。出番は速そうだぞ」


 俺の言葉ににこりと笑顔を見せたのがクリスティの答えなんだろう。さて、間に合うのかどうかだな。

 

 昼食を食べていると、近衛兵が商人からの書状を届けにきた。

 オランブルの港に拠点を作ったトルガナンの商会に所属している商人だが、裏の顔は情報収集を一手に引き受けている男だ。

 取引上の書簡は毎日のように2つの王国を行きかっているから、誰も不審に思う者はいないだろう。

 封を開けてみると、書状は1枚だけだ。

 中身は……。ほう! 貴族の動きが表面化してきたようだ。

 下級貴族の乗った馬車が襲われて世継ぎが殺された話と、貴族街の一角で不審火が2件発生したということだな。

 王都の食料が少し値上がりしたということは、次の行動に備えるためだろうか?

 

 オランブル王国の貴族の派閥の関係を図で確認しながら、事故に遭った貴族の派閥を確認する。

 どうやら、王族派のようだ。これは国王としても見過ごすことはできないだろう。

王都内での不審者取り締まりは厳しいものになったはずだ。

 となれば、不審火を作ったのはトルガナン派か、トーレス派になるはずだが、どちらの派閥も下級貴族の館になっている。

 王族派が行ったのだろうか? 現状維持を主張する保守派のはずだから、被害を受けることはあっても与えることはしないだろう……。


 これは被害を受けた貴族の、その後を確認する必要がありそうだな。

 調査依頼の内容をしたためたところで、近衛兵に書状を商会に届けてもらう。

                  ・

                  ・

                  ・

 数日後、ジャミルとマデリーが副官を伴って執務室にやって来た。大きな丸めた紙を持ってきたのだが、テーブルに広げると、俺がクリスティに依頼した地図だった。


「忙しいから持って行ってくれと頼まれたのだが、前の地図とだいぶ変わっているな。町や村の位置がまるで異なるぞ」

「これは距離を重点に描いたものだ。前の地図で徒歩での日数が書かれていたが、それを具体的な数字に変えて作ってある。方向は違っているのかもしれないが、距離については大まか正しいと言えるだろう」


 俺が喜んでいる理由は2人には理解できないのかもしれないな。互いに顔を見合わせて首を横に振っている。


「それと、例の商会からの書状だ。オランブルに動きがあったということだろう?」

「少し前に届いた書状から、少し調査を依頼した」


 そういえば2人には内容を知らせていなかったな。テーブル席から立ち上がって執務机の引き出しから書状を取ってくると、2人に書状を読ませる。

 その間に、返事を確認しよう……。


 今回も、1枚だけだが俺にはこれで十分だ。

 殺された次期当主は放蕩息子だったらしい。次男の格上げを当主自身が喜んでいるとは困ったものだな。意外と、家族に殺されたのかもしれない。そのまま当主になれば没落は確定だとの噂だったらしい。

 2件の不審火はいまだに犯人が分からないとのことだ。となると、かなり根が深そうだ。王都の夜間警備はかなり厳しくなったらしいが、その後も1件の不審火が報告されている。

 今回の被害者は商人らしい。この商人が出入りする派閥は……、トーレス派になるぞ。

 

「動いたということでしょうか?」

「今日の書状がこれだ。まだ表面化したとは言えないな。単なる強盗、恨みとも取れそうだ。貴族の殺害は、放蕩息子の処分ということにもとれる。いちおう、商会にはトーレス王国を探るように指示を出しているから、現状で俺達が動く事はしないでおこう」


 部隊を派遣するための大義名分がない。トーレス王国が動かないのも、たぶん同じことだろう。


「だが、準備は始めなければなるまい。一応、部隊を西に駐屯させてはいるが、あのまま進めば旧ブルゴス派の貴族の領地を通ることになる。最初から戦が始まりかねない」

「先に王都に向かうことが必要だな。幸いにもジャミル達の騎馬隊を俺達は持っている。将軍達にはゆっくり進んでもらうことになりそうだ。だが、このルートには俺達に敵対する貴族の派閥はいない。1個大隊に砲兵隊は貿易港の確保を主眼とする」


「2方面で戦をするのか? トーレス王国が最初から港を目指すことも考えられるぞ! ましてや、港町には防壁もない」

「そのためにクリスティが努力してくれてるよ。万が一、トーレス軍が王都に向かわねば、騎馬隊で背後を襲える。もっとも、将軍達が王都に入場してからの事だけどね」


「挟撃すれば大きな損害を与えられるでしょうが、それには将軍達の王都入りを早めねばなりません」

「数日の猶予はあるだろう。港よりも王都の方が近いからな。それに、貴族の私兵であれば1個小隊にも満たないだろう。傭兵を雇ったとしても2個小隊ほどだ。派閥貴族の私兵を全て王都に至る街道に展開したと想定しても2個中隊には届かない。3個大隊で蹴散らせないようなら、将軍として失格だ」


 街道からの進攻は将軍達に任せて、騎馬隊の進むルートと港を制圧した後の防衛陣に付いて話し合う。

 小競り合いが何時大きな形で表面化するかは分からないが、それほど遠い話ではないだろう。

 早めに決着を付けて、その余勢をかってリオン達の島を攻略したいものだ。

 待てよ……。中型船を装甲で覆ったらどうだろう?

 銃弾を弾くのであれば近接して砦に砲撃が出来るんじゃないかな。

 リオン達の戦は常に防衛線だ。入り江の砦の破壊こそが勝敗を分けることになるんじゃあないかな。



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