表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
83/171

083(M) 一度は会いたいところだ


 オランブル侵攻の基本計画ができれば、それを元にジャミルと副官達が会合で詳細な作戦計画にまとめ上げる作業に取り掛かる。

 商会の連中も参加するから、兵站に問題が生じることはあるまい。

 唯一の課題は、クリスティ達の作ろうとしている装甲車がまだ完成していないことだ。装甲車の移動速度によっては、作戦計画が大きく変わる可能性もあるようだ。

 早めに作らねば作戦が頓挫しかねないな。


 どうしたものかと考えている時に、マデリーがカルデアン公爵からの使者が届けてくれた書状を持ってきた。

 返書は後ほどにとのことだから、銀貨を10枚程渡しておいたと教えてくれたが、使者はそんな余禄があるんだな。当然、公爵からも頂いているんだろう。


 侍女が入れてくれたお茶のカップを片手に持ちながら、書状を確認する。

 いつもなら装飾文字で美辞麗句が並べられているのだが……、今日は少し違うようだ。誰かに書かせたものではなく、公爵自らが書いたと思われる。字が下手だから少し読みずらいし、誤字がかなりあるぞ。

 文字を習ったのだろうが、自ら書いたことが殆どないという感じにも見える。


「マデリー、ジャミルとクリスティを至急呼んでくれ。年内にも始まりそうだぞ!」


 途中まで読んだところで、おとなしくお茶を飲んでいたマデリーに指示した。

 直ぐに部屋を飛び出した姿を確認したところで、書状の先を読み進める。


 ブルゴス派の2つの貴族がトーレス軍とみられる部隊を引き連れてオランブル王国に戻ったらしい。

 部隊の数は1個小隊ほどだから傭兵と偽ってはいるようだが、傭兵とは身支度や装備が明らかに異なるらしい。

 とはいえ、自らを傭兵であると報告している以上は、オランブル王国としても捕縛するわけにはいかないらしい。貴族に私兵を認めている以上仕方のないことだろうな。

 今のところはおとなしくしているようだが、時が過ぎれば他の貴族の私兵と諍いが起るのは目に見えている。

 公爵は、傭兵部隊をトーレス軍の先行偵察部隊と見ているようだ。俺もその意見には賛成だが、そうなると1個小隊を分隊規模であちこちに派遣しそうだな。

 そんな行動を起こし始めたら、間違いなく先行偵察部隊と見て間違いなさそうだ。3か月も経たずに大軍が押し寄せて来るに違いない。


 ジャミル達が戻ったところで、書状の内容と俺の意見を聞かせた。

 頷いているところを見ると、彼らも同じことを危惧したのだろう。


「問題は書状の末尾です。トルガナン王国より事前に軍を動かせないかと読めますが?」

「公式な書状だから明確に書くのは問題だと思ったに違いない。オランブル王国軍との共同訓練とはおもしろい考えだな。これならオランブル国王に提言しても叱責を受けることはない」


 おもしろい考えであり、それなりに効果もあるだろうが、ここは断ることで良いだろう。これでは事前にオランブル王国に派遣できる戦力が2個中隊程度になる。トルガナン兵士をオランブル王国の為に失うなど出来るものではないからな。

 

「断ると?」

「仮にも隣国に軍をおくるのはどうかと……。次期国王殿下の妃の母国であればなおさらの事だということではどうかな?」

「でも、公爵に傭兵を送るぐらいはできるわよ。書状と傭兵2個小隊。傭兵部隊はそれぐらい残ってるんでしょう?」


 リオンの島ですり潰す考えで、中隊規模を維持している。辺境の守りを依頼してはいるが、彼等なら元が傭兵、惜しくはない。それに傭兵ならではの情報収集も期待できそうだ。


「武装は以前のままだな。銃や流星火を知らない連中なら都合がいい。公爵の指示に従うことはもちろんだが、トーレスからの傭兵を見張るのが彼らの仕事だ」

「特別給与を弾まねばなりませんね」

「1人、銀貨10枚を渡してやれ。仕事いかんではさらに弾んでも良いぞ。……それと、装甲車の試作はまだなのか? 動かしてみねば分からんことが多すぎる」


「1台は完成したわ。2日後には3台が完成するけど」

「ジャミル、クリスティの工房を知ってるな。直ぐに取り入って、砲兵達に使わせてみろ。両側の側板を展開するのは、3台ほど出来上がってからでいい。先ずは進行速度と操作人員、それに連発銃や背中の流星火が撃てることが重要だ」


 ジャミルが俺の指示に頷いて席を立とうとしたところで、クリスティが待ったをかけた。


「そんなに急いでるんだったら、王都の一角に武器専用の工房を作りたいわ。流星火、火薬、大砲……、色々とあるんだけど、ドワーフ族の工房はあちこちに分散してるのよね」

「生産効率が上がるならクリスティに任せる。場所は?」

「ドワーフ達はあまり工房を移動したがらないから、この辺りが良いわね。この館は貰って良いでしょう? 周辺を監視するための部隊も展開しておけば他国に模擬されることも無いわよ」


 王宮の西か……。下級貴族の館と、数軒の工房があるだけだが、それを拡充するのだろう。貴族の館の敷地を使えるだろうし、警備兵達の屯所としても使えそうだ。

 とはいえ、クリスティは王宮から出るつもりはないのだろう。配下の何人かをこの場所に派遣して監督することになるのだろうな。


「引っ越しは、装甲車の数を揃えてからにするわ。それまで工事ができるでしょうからね」

「十分だ。とりあえずそれでいってくれ」


 魔導士であり学者でもあるクリスティ―の立ち位置は微妙だが、俺達に協力してくれれば特に問題はないな。結果は俺達の役立つ物ばかりだから、もっと優遇しても良いのだが、本人は自由気ままに仕事をするのが好きなようだ。


「私は、部屋に戻るわよ」と言って、クリスティが執務室を出ていく。残ったマデリーに返書と傭兵部隊の人選を頼んだところで、今日の会合はお開きになった。


 それにしても、トーレス王国が東に野望を持つとは思わなかったな。

 今は音沙汰もない北も魔族も気になるし、ブルゴスの東の連中も気になるところだ。

 オランブル王国を手中にしたところで、俺の覇道を見直すことも必要だろう。

 当初の3倍以上の国土を持つ大トルガナン王国となるのだ。部隊間の連絡手段をましなものにすれば他国から侵略されることも無いだろう。10個大隊程度に軍隊が大きくなるだろうし、方面軍としての考えを持つことも必要になってくる。

 その時になった困らぬように政治体制も考えねばなるまい。

 再び貴族のような特権階級の登場を抑制する方法も考えねばならん。

 全く国王とは休みの無い仕事が続くものだ。


 ブルゴス侵攻の作戦計画は俺の手を離れてジャミル達が検討を始めている。

 とりあえず手が空いたから、かつて俺が住んでいた世界の政治の仕組みを考えるのもおもしろそうだ。

 ワイン片手に君主政治の仕組みを描いてみたが、貴族を無くすとブルジョア階級ができてしまいそうだ。

 ブルジョアも悪くはないだろう。特権を持たせねば良いのだが、金で取引をしないとも限らないな……。

 そうなると、官僚組織と言うことになるが、これも自らの特権を作りかねない。特権を作ること自体は問題ではないが、それを自らのものだと考えるようでは貴族と同じことになりかねない。

 金を儲けたい。楽をしたい……。人間の性だな。聖職者を登用することも問題だろう。

 

 ここは、必要悪をある程度認めることになるんだろうか?

 それがどんどんと増えて王国を蝕むようになっては困るのだが……。

 とりあえずは、計画と行動、それに評価の3つの部署を作れば良いだろう。軍隊は国王に直轄とすれば良い。軍を動かせるのは国王のみとして、私兵制度は廃絶する。それでも商人達の荷を奪う盗賊はいるだろうから、商人達に限って護衛を認め、所持する武器を限定すれば良い。これで反乱をかなり抑制することができる。

 

 次に計画だが、上位と下位を設けるか……。下位の計画立案部署は議会制としても良いだろう。農民、商人、職人……、広範囲から人を集めてその意見を聞けば王国内の治政の偏りが見えてくるんじゃないか?

 そこで出た意見を吟味する組織を上位に据えれば良い。これはそれほど人を集めなくても何とかなりそうだ。

 行動は予算の分配を計画に合わせて行う部署とすればよい。教会での教育がどこまで進むかでこの部署の未来が決まりそうだ。

 評価に付いては、俺の直属とすれば良いのかもしれない。計画と行動に齟齬が無いことを確認して、賞罰を決めれば良いだろう。罪人の処罰もこの部署で良いんじゃないか。

 軍隊に付いても、これを適用すれば将軍達の監視も可能になるだろう。近衛兵を監察軍として使っても良さそうだ。


 そんな事を考えながら時を過ごす。

 動きが無ければ俺がすることはそれほど多くはない。リオン達はこんな問題をどのように対処しているのだろう?

 人口が少ないから、試験的に色々とやっているのだろうか? そうだとすれば、向こうの状況も知りたいところだな。


 一度会ってみるか……。毒殺しそこなったから、今でも恨んではいるだろうが、総攻撃をすると会うことは出来ないだろうからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ