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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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081(R) 擬装商船


 火薬作りをケーニッヒに教えようとしてるのだが、元々興味がないのかあまり乗り気ではないんだよな。

 だけど、俺に万が一のことがあってもケーニッヒが火薬を作れるなら早々この島を攻略できるものではないだろう。

 のんびり何度でも同じことをやせればそのうち一人で出来るようになるかもしれない。


 炭を金属製の挽き臼で細かな粉体にしたところで、テラスに出て2人でパイプを楽しむ。火薬作りに火は厳禁だからね。粉体爆発など経験したくはないところだ。

 そんな俺達にユーリアがお茶を出してくれる。

 農家の連中の働く姿を眺めながら一服を楽しむのが俺のひそかな楽しみでもある。


「リオン、あの船は入り江に向かっていないか?」

「商船だろう? また荷を届けに来たんじゃないか」


 とっさにその船を見て言葉を発したけど、よくよく見るといつもの船と少し形が異なっているな。

 マストが1本のはずだが、あれは2本付いている。帆を張っているのは1本だが、入り江に入るために船の制御を容易にするための方法ということなんだろうか?

 バッグから望遠鏡を取り出して船を観察を始めた。


「リオン、あの船は指定の布をかざしていないぞ!」

「となると不審船になるな。船の大きさからみればそれほど兵隊を乗せられるとも思えん。精々、1個小隊だ。入り江の砦を破ることはできないさ。とはいえ、新たな商人ということもあり得る。取引なら断ることもできるだろうが、向こうの意向も確認しといた方が良さそうだ。ケーニッヒに任せるぞ」


「俺がか?」

 素っ頓狂な声を上げながら俺に顔を向けたけど、ここは任せてみよう。

 俺は引き続き火薬の原料を作らねばならないからな。


「砦に入らせなければ問題はあるまい。砦の前に小さな東屋があるから、そこで商談をすればいいだろう。なるべく早く立ち去って貰いたいが、2日程度の停泊は許可せねばならないだろうな」

「マルデウスの偵察とも取れるな。あまり停泊させるのも考えものだ」


 ケーニッヒが通りを浜に向かって歩いていく姿をしばらく眺めたところで広間に戻る。広間の東にある空き地が火薬作りの仕事場だ。

 今度は硫黄の結晶を集めなければならない。針状の結晶を作れれば、もっと火薬を量産できるのだが今のところは面倒でも小さなスプーンで良いところを掻き集めることになるんだよな。

 面倒でも、良い火薬を作るためには仕方がないところだ。残った硫黄はロケットの推進剤として使えるから無駄にはならない。

 日暮前に作業を終えたが、まだまだ硫黄を入れたタルは半分以上残っているし、別にもう1タルがあるのだ。分別するだけで1か月は掛かるんじゃないかな。


 夕食を終えてワインを飲んでいると、砦や村からも人が集まって来た。

 焚き火を囲んでの話の内容は、新たにやって来た船になる。


「名目上は商船だな。オランブル王国からやって来たらしい。ブルゴスの商船から話を聞いたということなんだが……、積み荷を聞くと、即答できなかったぞ」

「船長であれば積み荷を知らぬということもあるでしょうが、商人が知らぬというのもおかしな話です。荷役商人ということかもしれません」


 ケーニッヒは雑貨屋の主人を同行させたみたいだな。確かに荷役を専門に行うのであれば積荷の中身は気にもしないだろう。大きさと重さで料金を決めるんだからな。

 だが、それにしては船の喫水が浅いようにも思える。

 積荷を届けた帰りなのだろうか? 新たな輸送ルートを開拓すれば、それだけ彼らの利益も上がるはずだ。


「荷役商人であれば取引先と荷の量を聞くのが筋でしょうけど、彼らの最初の質問は島の人口でした」

「ふ~む……、やはりマルデウスの偵察と見るべきだな。適当に交渉をしたところで引き揚げて貰おう。俺達の事は半分で話せば良いだろう。向こうだって偵察要員を船に残しているはずだ。あまり適当な話をして島に上陸されても困るからな」


「もし上がってきたら?」

「上陸は浜までで十分なはずだ。それ以上に上がるには、東西の崖を登るか、クロンギスを突破しなければならん。見つけ次第、殺しても問題はあるまい」

「商品の買い入れは適当で良いぞ。村を装っていれば十分だろう。入り江から村は見えるだろうが、上手い具合に段々畑の一角だ。後ろに何軒あるかまでは分からんだろう」


 2日後に商船は立ち去ったが、どれだけの情報を持ち帰ったかが問題だな。

 真直ぐ西に向かわずに、島の東西をしっかりと確認していったとミーシャが話してくれた。

 となれば、攻め入るための下準備と言うことだろうが、マルデウスはかなり慎重だな。概略の地図が作られたと考えるべきだろう。

 小舟を入り江に出して、彼らが持ち帰った情報を調査したのだが、大まかな建物の配置が明確に分かってしまったようだ。

 段々畑の高さも通りを歩く村人の背丈からおおよその値が分かる。望遠鏡をマルデウスが持っていないことを祈るばかりだ。望遠鏡なら、さらに隠匿した防衛設備まで手に取るように分かってしまっただろう。


 入り江の砦を拡大しているラジアンと砦のテラスで話をする。小舟の漕ぎ手であるケーニッヒも一緒だ。ラジアンは副官のラクダンを同行していた。

 小さなテーブルとベンチを置いてあるから、ここでお茶を頂くのは館よりもいい感じだな。目の前に渚が広がっているから、リゾート地で休息しているような気分になれる。


「どうでしたか? やはり我等の情報が筒抜けでしたでしょうか」

「そうでもないが、大まかな建物の位置関係は知られたとみて間違いない。場合によっては方角と距離を想定して地図を作ることができるだろうな」


 俺の言葉に驚いているようだが、それなりの知識を持った者が船に2日もいればそれぐらいはできるだろう。


「砦から東西に伸ばした柵も知られたはずだ。だが、その後ろにも柵があることまでは知られていないだろうし、移動式の柵は現在作っている最中だからな」

「相手の前進速度を遅らせてその間に射撃をするということは理解しています。接近されたら向こうのクロスボウの餌食になりかねないですからね」


 ラジアンの言葉に俺とケーニッヒが顔を見合わせることになった。

 そういえば、そんな話を商人がしていたな。ブルゴス侵攻にはクロスボウを多用したということらしい。


「そうだったな。となると、100Cb(30m)以上相手との距離を保つことになりそうだ」

「150Cb(45m)と考えておいた方が良いです。それぐらい離れないとプレートアーマーを貫通されてしまいます」

「俺達は革ヨロイだ。さらに距離がいるぞ!」


 ケーニッヒの言葉に俺は首を振った。それほど距離を離す必要もないだろう。離れればそれだけ弾道が下がってしまう。彼等は下から上にボルトを放つのだが、俺達は撃ち下ろす形になる。飛距離が長いのは俺達の方だ。


「少し対策を考えよう。クロスボウはおもしろいことに弓に弱いんだ。20も作っておけば少しは役立つかもしれないな」

「弓ですか?」


 信じられないような表情で俺を皆が見ているけど、弾道に大きな違いがあるから直ぐに分かるはずなんだけどな。

 クロスボウ兵なら、それほど重装備をしていないだろうから、あの故事を再現しても良さそうだ。

 他の王国が真似をしても困るから、バドスに頼んで作って貰おう。

 腕力があれば使えそうだから、農民兵に装備させるのも良いかもしれないな。


「北の砦では手槍が有効だった。人数分は渡せるようにするから、最初から白兵戦を考えないでくれよ。だが、長剣を振るう事態になった時は慣れた武器で対処してくれ」

「「心得ております」」


 2人の大きな返答が帰って来た。

 この砦は彼らに任せておけば安心できそうだな。

 大砲を1門と小型の大砲が3門運ばれている。このテラスから小型の大砲を放てば入り江に入る軍船は全て射程内だ。どんな戦になるかは想定できないが、激戦になる事だけは間違いない。

 大軍は上陸する前に叩くのが鉄則だからな。さらに近づいたなら、段々畑から小型のロケット弾を発射すれば良いだろう。

 次は北の玄関の様子を見てみるか。あっちはハリウス達が色々とやっているはずだ。


 浜の砦で昼食を頂き、今度は北の玄関へと足を運ぶ。

 両方とも1個小隊の守りだが、ハリウスの2個分隊は予備軍としても使える。とりあえずは1個分隊ずつ割り振ることになるだろうが、臨機応変に部隊を移動することになるだろうな。

 元気の良い獣人族が主体だから、移動はさして問題にはならないが、彼らの持つ銃は、俺達の銃よりも口径が小さいのが難点ではある。


「ほう、だいぶ石垣を高くしたようだぞ」

「石垣の上の通路よりも身長分高そうだ。あれだと梯子を上っても下りるのが面倒だな」


 擁壁をさらに高くしているようだ。理由はそれだけ取りつく兵士が多かったということだが、いくらなんでも高すぎるんじゃないか?

 さらに近寄ってみると、左右の広場には擁壁の高さに合わせた櫓まで作られている。ブロック作りがこんなところで役に立つとは思わなかったな。


「様子を見に来たのか? どうだ、これで少しは楽になるぞ」

 俺達を見つけたハリウスが自慢そうに言ったけど、俺とケーニッヒは呆れて声も出ないというのが本当のところだ。


「擁壁は高くして補強したから崩されることはないだろう。銃眼も作ってあるし、何といっても乗り越えるのは一苦労だ。下から20Cb(6m)近くなっているから、ハシゴの調達も難しかろう」

「あの櫓は物置にも使えるのか?」


 俺が指さした櫓を見て、ハリウスが笑いながら頷いた。

「物置だけじゃないぞ。どちらかと言うと小型の大砲の砲座だな。物置は広場の奥に作ってある柱を横に伸ばしているから、雨宿りも出来る優れものだ」


 全く、目を離すと碌な物を作らないな。

 そんな思いを胸に秘めて櫓に入ると、分厚い板の防盾を付けた小型の大砲が鎮座していた。櫓の開口部を防盾が覆う形だから、ここから侵入することは困難だろう。かなり広範囲に砲弾を放つことができるようだ。これはこれで役立つかもしれないな。



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