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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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073(R) ブルゴス兵の襲来


 バドスが新たに作ったのは2連装の銃だった。皆が持っている銃と比べると、その違いがかなり見受けられる。

 一番の違いは、前装式ではなく後装式を採用していることだ。

 このため、従来の紙を丸めて作ったカートリッジを使わずに、真鍮製の筒にあらかじめカートリッジを詰めておくことになる。レバーを下げると銃身が下がって後部のチャンバー部分が上がるから、そこに新型の真鍮製カートリッジを詰め込んで銃身を抑え込むように下げると、カチリとロックされる。

 薬莢の後部には小さな穴が空いているから、向こうの世界にあった薬莢式の弾丸とは少し異なるが、使い方は殆ど同じになる。


「操作性を考えて、銃身を長銃は横、短銃は縦に並べたぞ。金属製のカートリッジには従来より薄手のカートリッジを詰め込むことになる。かなり面倒な仕事だが、ユーリア達にでも手伝って貰うが良い」

「素早く2射出来るのは良いな。その上、銃身の掃除も少なくできるんだろう?」

「10発程度なら問題ないじゃろう。2連だから、20発を撃ってからが掃除になるな」


 ほとんど掃除をしなくても良いように思えるな。

 出来た短銃を昔の連中に配って、古い短銃を回収する。長銃は北の玄関を優先的に更新することでバドスと話がついた。

 数日で短銃が10丁、長銃が15丁更新されたので、この銃を浜の砦に備えることにする。

 ケーニッヒに元ブルゴス近衛兵達へ銃の取り扱いを教えるように言いつけたから、浜の守りを少しは充実することができるだろう。

 最終的には全員に持たせたいところだ。バドスには頑張ってもらうしかないな。


 寒い日が何日か続いた時、北の玄関から大軍が陸地に見えるとの知らせが入った。

 直ぐにケーニッヒが向かったから、様子を探ってくるのだろう。

 何度か戦を行ったので、戦が直ぐに始まらないことを知ったつもりだ。

 先ずは互いの挨拶からだからなぁ。何とものんびりしたものだと思う。


 それでも、主だった連中が館の広間に集まって来る。

 役割分担は決まっているんだけど、情報が欲しいということなんだろう。久しぶりでミーシャを見たけど、ずっと西の見張所にいたんだろうか?


「西の海には全く船が無いよ。でも、ずっと見張るからね」

「東の修道院の方はどうだ?」

「若いのを走らせてる。『始まるかも知れないから監視をよろしく』と伝えるように言伝たわ」


 監視はネコ族に任せるに限るな。となると、伝令はイヌ族の少年ということになるんだろう。


「大勢ならやって来るじゃろう。ワシ等は一足先に向かうが、カートリッジが足りん。たっぷり作って届けてくれよ」


 バドスが革袋をドサリと音を立てて俺の傍に置いて広間を出て行った。まぁ、先に行ってくれるなら問題はないな。

 ユーリア達がロディに革袋を広間の端に持ってきて貰って、真鍮製のカートリッジに薄い紙で包んだカートリッジを詰め込んでいる。今夜中に100個近く出来上がるんじゃないかな。


 パイプを使いながらケーニッヒの到着を待っていると、夕暮れ近くになって戻って来た。

 ユーリアが作業を中断して俺の隣に腰を下ろしたけど、ベルティ達は作業を継続しているようだ。


「かなりの大軍だ。続々と集まっているが、少し離れた場所で監視をしている連中がいるのが気に入らん。装備は旧来のままだからマルデウスの軍とは違うようだ」

「となると、ブルゴス軍ということになるぞ。トルガナンに連中め、ブルゴス兵を俺達に始末させるつもりか!」


 ブルゴス兵と聞いてパンドラとラジアンの顔色が青くなる。

「ここに我等がいるとは……、知らないでしょうね。王都に家族を人質に取られれば死にもの狂いで向かってきます。すでに覚悟はできているでしょう。なるべく苦しまずに楽にしてあげてください」


 ラジアンが絞り出すような声で俺達に告げる。顔は下げたままだ。涙を見られたくないのだろう。

 パンドラは俯いて嗚咽を上げている。ユーリアがそっと肩を抱いて自室に連れて行ってくれた。

 自国の兵士を殺さねばならないとは、亡命したものとしては考えるものがあるのだろう。だがその恨みと悲しみは忘れないでほしい。それに、ブルゴス王国は辺境の郷士達に同じことを強いたということも覚えておいてほしいものだ。


「基本は迎撃だ。以前に決めた部隊配置で良いだろう。北の玄関はバドス達にオリガンド、ケーニッヒに頼む。上の広場はハリウス達とユーリア達だ。ロケットの操作はだいじょうぶだな?」

「最初の襲撃を受けた時は2個分隊程度だったが、今では1個小隊か……。場合によっては俺も下に下りるぞ」

 ハリウスの長剣の腕は俺を遥かに凌ぐからな。頷くことで了承を伝えておく。


「前回のブルゴス戦の時には、入り江にも船が進攻してきた。今回も無いとは限らない。浜の砦はラジアンに任せる。後続はトマス達の部隊だが、全員クロスボウの達人揃いだ。白兵戦は出来ないが頼りに出来るぞ」

「あのボルトと呼ぶ短い矢は我らの鎖帷子を容易に貫通します。後ろをよろしくお願いします」


 元近衛兵の小隊長だから身綺麗だし、言葉使いも丁寧だ。トマスが恐縮して何度も頭を下げているのもおもしろい。


「私達の部隊は2個分隊もあるけど、そのままで良いのかしら?」

「監視は継続だ。東の修道院との連携もキャミーの仕事だぞ。伝令を数人確保しとけよ。それと、万が一に崖を上がってくるようなことがあれば、ハリウスの部隊から1個分隊を移動させる」

「あらかじめ決めといた方が良いな。オリックの部隊でいいだろう。夜でも問題なく移動できるし、長銃の口径は小さいが的を外さんからな」


 自分達の能力を指揮者が買ってくれてると言うだけで嬉しいものらしい。オリックの目が輝いて見える。


「これで全部だ。破られれば村人や教会の子供達が虐殺されかねない。昔から比べれば戦力は2倍以上になってはいるが、敵の数は10倍以上だからな。隠れて銃やクロスボウを使え。白兵戦は最後の手段だ」


 女性達が配ってくれたワインを飲んで散開にする。帰ろうとするラジアンと副官を呼び止めて、改めて焚き火の傍に座るように言った。


「呼び止めて済まない。ラジアン達には別の選択肢があることを話しておきたかった」

「選択肢などあるようにも思えませんが?」


 先ほどの悲壮感を少しは和らげた表情に戻っていることを確認したところで話を始めた。

「王国の再興を何処まで考えているかということになるんだが……。先ほどの部隊配置で気が付いたかもしれないが、北からのブルゴス軍に呼応してラジアン達が俺達の背後を襲えばこの島は簡単に制圧できる。やってみるか?」


 俺の言葉に吃驚したのか、副官共々アッと声を上げている。

 ぼそぼそと小声で話をしているのもおかしくはあるな。かなりのお坊ちゃん育ちに違いない。相手を裏切るなどということはこれまで考えもしなかったんだろう。


「……リオン殿の言われる通り、それは可能でしょう。この島に1個大隊以上の兵力を置けば難攻不落の要塞となることも確かです。ですが、それでおしまいになってしまいます」

「なら、安心して背中を任せられる。ここを拠点化してブルゴスの土地を再び手に入れようとするならば俺達も助けることはできよう。マルデウスには俺達も深い恨みを持っている」


 少しは先を見る目を持っていてくれて安心した。俺達を滅ぼしてここを自分達の版図としても、自給自足が出来ないから補給が止まれば直ぐに飢えてしまう。

 大軍を持つということはそれだけ補給が重要なのだ。少しずつ商人と取引をしながら相手にうまみを与えるのも、俺達の生活を維持するために必要な事だからな。


「それとだ、ブルゴス王国もトルガナン王国と同じことを以前にしていることを忘れてはならない。ケーニッヒの率いる部隊はその時の投降兵だ。辺境の郷士達の私兵を纏めてここを攻めさせた。家族を人質に取ってな。殆どが北の玄関の攻防で亡くなったが、息のある連中はこの島に残ってくれたんだ」

「国王は塩の採れる島を手に入れる事を命じていましたが……」

「この島を攻略するには5個大隊は必要だ。2個大隊程では北の玄関は落ちないよ。今回はさらに1個分隊が増員されている。総掛かりでも抜くことは出来ないだろうな」


 俺の話を聞いて、また2人で相談をはじめた。

 副官の意見を聞くのは大事だろうけど、自分の考えで行動するということも大事なように思えるな。


「1つお願いがあるのですが、私に北の玄関の戦を見せて頂きたいのです。浜の砦は副官がいればとりあえずは安心ですし、万が一、船が見えたなら私も急いで浜に戻ります」

「仲間が虐殺される場を見ることになるんだが……」

「それも、勤めであると考えます」


 ブルゴス軍の終焉をみとるということになるのだろう。

 ここは許可することになるか。北の玄関の上にある広場なら白兵戦に持ち込まれることはない。ジッと見守ってくれればいい。


 北の玄関からはその後の知らせが全くない。

 始まってはいないのだろうが、のんびりした戦だな。


「引潮が午後だからですわ。それにイカダの準備だってあるんでしょうね」

 ユーリアの言葉に頷きながらも、パイプをクルクルと回してユーリア達の準備が整うのを待つことにした。

 身一つで向かうとは行かないらしい。女性となるといろいろと用意するものがあるらしいのだ。

 俺は丸めた毛布を、槍で担いでいけば良いだけなんだけどね


「申し訳ありません。私も同行をお願いしたく……」

 俺の前にやって来たのはパンドラだった。近衛兵のヨロイを着ているが、鎖帷子は極細いものだ。あまり役立つとは思えないが、近衛兵に紛れると分からなくなりそうだ。それでうまく脱出出来たのだろう。


「王女様が私の行先を聞いて、どうしてもと……」

 パンドラの後ろでぺこぺことラジアンが頭を下げている。


「ブルゴス王女としての最後の務めでしょう。同行を許可しますが、ラジアン殿の傍を絶対に離れてはいけません。ブルゴス兵士は強兵です。たとえ、近衛兵のヨロイを着ていても、この島に近衛兵がいるとは思わないでしょうから」

「ありがとうございます」

 

 深々とパンドラが頭を下げた隙に、ラジアンを手招きする。

 寄って来たラジアンに、広場にいるハリウスの指示に従うよう再度念を押しておいた。



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