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拾弐
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ここはどこだろう。
暗闇の中、何をしてもその先は見えない。
不意に脇からわずかに光が差す。
月明かりのような、ひどく朧げで儚い光だった。それが目の前の闇の中になにかの影をぼんやりと浮かび上がらせる。
小さな体躯のそれが二つ。すぐ足元に横たわっている。
そして、ぴくりとも動かないそれらのまわりに広がる、赤い波。
無音の世界でドクン、ドクンと鼓動が頭や耳に響く。息が苦しい。呼吸が荒い。
ゆっくりと持ち上げた両手にはべっとりと、波と同じ、赤い、赤い―――。
「―――……っ、」




