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62の舟券  作者: 広瀬修一
9/22

旅立ち


広瀬はリュックサック1つの身軽な姿で京都三条京阪駅に立った。


大阪で南海電鉄に乗り次ぎ和歌山から高野山に向かった。


宗教心などまったく無かった広瀬だったが、四国八十八箇所は

弘法大師空海の修行のあとをたどることからはじまったと知り、

空海の開いた高野山真言宗の総本山金剛峰寺をたずねたのであった。


そしてふたたび和歌山にもどるとフェリーに乗り四国の徳島へむかった。


1番札所の霊山寺の近くに宿をとり明日のスタートにそなえて、

まず髪の毛を短く刈ることにした。


京都に来てからの広瀬は自由に生きてきて、その生きざまが

そのまま当時の若者の間で流行っていた長髪、ジーパン、

Tシャツという姿にあらわれていた。


長年のばしてきてさすがに髪の毛を短くするにはそうとうの

抵抗があったのだが広瀬は宿の近くの床屋にでかけていき

店に入ると


「丸坊主にしてもらえませんか」


といった。


長髪の男が突然あらわれて驚いたところへさらに丸坊主と聞いて

店主は一瞬たじろいたが、広瀬が明日から歩きの四国遍路に出ると聞くと


「わしも若い頃には近くの寺を歩いてまわったもんや、そやけど最近の人は

ほとんど歩き遍路はやらん、あんたは若いのに大した心がけや」


といって散髪が終わると近くにある遍路用具を売る店まで連れて行ってくれた。


宿のすぐ近くにあるその店に行くと長身でしかも顔の長い男が

みおろすような位置から


「歩きのお遍路さんなら笠と杖と白装束の羽織ぐらいはそろえんとなぁ

それと履物は地下足袋がいちばんいい」


「歩きやったら2ヶ月ぐらいで回れるもんですか」


と広瀬が尋ねると。


「男子健脚50日と昔からゆわれとるが修行僧なら早足で30日ぐらいでまわる。

坂本竜馬も高知から京都や長崎へ行くときは飛ぶような早足やったそうや」


商売なのか顔に似合わずこと細かく必要なものを教えてもらい

他にも納経帳.お札.数珠.お札入れ.首にかける袈裟などを買いそろえた。


それまで着ていたズボンや服など余分な荷物は遍路が終わってからもう一度

お礼参りで1番札所にもどって来るのであずかってもらうことにした。


遍路の朝は早く6時をすぎるとだれも宿にいなくなる、

それに早朝の空気はすがすがしい、ましてや今日は旅立ちの日である。

気力も体力も十分だ。


広瀬は力強く一歩を踏み出した。


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