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62の舟券  作者: 広瀬修一
10/22

御礼参り


最初の遍路ころがしと呼ばれる焼山寺に向かう山道で足を痛めたり

足の裏全体に出来た水ぶくれが破れて歩くたびに苦痛を味わい

さらに発熱で寝込むなど大変な思いをして一ヶ月半かけて最後の

八十八番札所にたどり着いたのは6月のなかばであった。


結願の寺である大窪寺には遍路を終えた人たちが使っていた笠や杖が

いたるところに奉納されていたので広瀬もそれに習ったのだが、

すぐに後悔することになった。


遍路が終わって一番札所への御礼参りはバスに乗っていこうと思っていた

広瀬であったが、いくら歩いても国道377号線沿いにはバス停が無い。


鳴門からの国道318号線までいかないと路線バスは走っていなかったのである。


実は途中から県道2号線に入れば10番札所の切幡寺の近くに出られたのに

遍路の専用地図を持っていなかった広瀬にはわからなかったのである。


寺の前から歩き続けるうちに平坦で日陰の少ないアスファルトで舗装された道路は

もうすぐ夏至という時期ということもあって、笠をかぶっていない広瀬にとって

灼熱の地獄となって襲いかかって来る。


昨日までとそんなには変わりがないはずなのに目的を達成したせいなのか

まるで違って感じる。


脳裏に「いきだおれ」という言葉がうかんだ。


遍路道には道なかばにして倒れた人達の無縁仏がたくさんあるのだが、

まわり終えホッとしてたおれる人も多いそうである。


それでもなんとかバス停にたどり着くことができたのであるが、

時刻表を見た広瀬はその場に座り込んでしまった。


昼間はバスが2時間おきにしか走っておらず、しかも運悪く少し前に

通過してしまっていたのであった。


やっとバスが来て乗り込むと広瀬の他には乗客は誰もいない。

しばらく走ると運転手が声をかけてきた。


広瀬はバスの真ん中当たりに座っていたのだから、

よっぽど話し相手が欲しかったのであろう。


そこで広瀬は前のほうの席に移動した。


聞けば昼過ぎということもあってか広瀬が初めての乗客ということだった。


「お客さんはギャンブルはやるのかい?」


「えぇまぁ少しは」


「自分は競艇が好きでねぇ休みの日は鳴門だよ」


杖と笠はもっていないが一目で遍路とわかる姿の広瀬にいきなり競艇の話である。


見透かされたような気分になり


「遍路したぐらいじゃギャンブルから逃れられないんだなぁ」


と観念した。


一番札所へお参りを済ませてから預けた荷物を受け取ると、

来た時とは逆に徳島からフェリーで

和歌山へ渡り高野山にいって最後の御礼参りを済ませた。


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