4.クラスわけ試験1
「はーい。これから試験をします。
まぁ、そんなに緊張しなくてもいいわよ。これは、クラス分けとこれからの学園での成長を図るためのものだから。」
舞台の上から、綺麗な女性が説明をする。この学園の教師 カーミラというらしい。
拡声の魔道具が使われているのだろう、講堂中に声がちゃんと届いている。
礼拝堂でも使われていたので、僕も知っていた。
「その前に、まずは寮わけを発表します。
今年の入園者は男の子60名 女の子52名の112名よ。
名前を呼ぶから、しっかりと聞いてちょうだい。
まずは、『フェニックス』寮に入る子からいくわよ。
アルタイト君、イザーク君・・・」
基本、第2学園の生徒は全員寮で生活する。
王都に住んでいる者もいるが、平日は寮での生活ときまっているらしい。
これも、協調性を身につけるための勉強ということらしかった。
寮は全部で4つ。
男の子用の寮が、フェニックスとフェンリル。女の子用の寮がペガススとユニコーンというらしい。
僕はフェンリルという神狼の名を冠した寮になった。レオンや何人かの一緒に来た子たちも同じだ。
寮単位で担任の教師がおり、この寮は3年間基本は変わらない。
「あらためてよろしく。」
そういって、僕はレオン達と握手をした。
「では、今から寮単位で試験場所に移動してもらうわ。
試験は、全部で3つ。それぞれが、「学力」「体力」「魔法力」を見るわ。
一つのクラスが余っちゃうけど、その間に寮や学園のしくみを説明するから。
では、「学力」にフェニックス。担当はアルゴラ先生だからついていって。」
そういうと、若草色の長衣を着た男性がフェニックスの生徒の前でお辞儀をした。
歳は、エリックより少し上ぐらいだろうか。かなりスマートな体系をしており、顔立ちも中性的な優男だ。
「つぎは、フェンリル。担当はガードナ先生。「体力」からまわってもらうわね。」
僕らの前に、屈強な中年の男性が現れる。浅黒い顔に太い眉毛にぎょろっとした大きな目。
決して不細工ではないが、美男子ではない。
アルゴラ先生とは対照的だ。
明らかに怖がっている子もいるし。
「おう。俺がガードナだ。先生っつっても、この前まで冒険者をしていた。
こんな顔だが、そんなに怖がる必要はねぇ。
ただ、おいたが過ぎるとその限りじゃないがな。ガハハハ」
ガードナ先生は、豪快に笑った。
ちょっと怖いが、悪い人じゃなさそうなので、良かった。
「じゃぁ、いくか。試験会場は校庭だ。」
ガードナ先生に続いて、校庭に行くと、2人の学生が待っていた。
身長は、僕と同じかちょっと小さいぐらいだけれど、他の皆よりは頭一つ分大きい。
多分先輩なんだろうなと思った。
「よーし。まず紹介しとくぞ。3年生で寮長のセドナと副寮長のアドルだ。」
先生が、紹介すると二人は僕たちに礼をする。
「おれは、この後も体力の試験をしないといけないから、試験が終わったらこの二人が次の試験会場に連れて行ってくれる。寮でも普段はこの二人が面倒をみることになるから、ちゃんという事を聞くように。」
なるほど、寮には2年生・3年生の先輩もいるのか。
二人は、僕の方を見て少し驚いた表情をしている。
身体が大きいから、目立つんだろうな。
「では、まずは体力の試験をする。といってもそんなに大したことじゃない。
まずは、この棒で俺に打ち込んできてもらう。それだけだ。」
そういうと、ガードナ先生は、1メートルぐらいの木の棒を二つ拾った。
「ああ、いっとくが張り切ってケガをせんようにな。あと、遠慮はいらんから。
じゃぁ、まずは、アーディルからだな。」
そういうと、一本の棒を手渡してきた。
先生は、特に構えというような姿勢はとっていないが、流石に元冒険者というだけあって、堂々とした体勢になっている。
セドナ先輩とアドル先輩は、何やら紙とペンを持って僕の方を見ていた。
「えっと・・、棒で打ち込めばいいんですよね。」
「ああ。そうだ。いつでもいいぞ。」
先生にいわれて、僕は棒を構える。
いわゆる剣術の基本である正眼の構えだ。
練習につかっていた木剣に比べて、あきらかに長すぎるし、その分重く感じる。
これでは、まともに振ることなどできないだろう。
だったら、振らなければいい。
「いきます。」
僕はそういうと、じわりじわりと間合いを詰めて、棒が届くぎりぎりの距離まで近づくと、先生の喉元のやや下方を目掛けて、駆け出すと身体ごと棒で突きにいった。
これならば、棒を振るよりも早く打ち込めるし、線の動きよりも点の動きの方がかわしにくいと思ったからだ。
「ほぅ・・」
先生は、少し驚いたような声を出すが、僕の棒を自分の棒で横から撃ちつけつつ、半身になって僕の突きをいとも簡単に躱した。
僕は、勢いをつけていたこともあって、そのままバランスを崩すも、かろうじて倒れこむのだけは防いだ。すぐに、棒を引き寄せて防御の体制をとる。
「そこまで。次、ウランフ。」
そういうと先生は、次の生徒を読んだ。
アドル先輩が「お疲れさま」と声をかけて、他の生徒の試験を見ておくように指示をする。
次の生徒は、僕の試験をみていたのか正眼の構えをとるが、棒の先が大きく揺れる。
あれでは、まともに突きに行けないだろう。
案の定、先生が棒を使うまでもなく軽く避けるだけで、自ら転んでしまった。
僕は、小剣の扱いを習っていたから、あの構えをしたけれど、まちがいなく自分の身長に近いような棒を使うには不向きな構えなんだと思う。
次の子も同じ構えから打ち込むけれど、ちゃんと打ち込むことすらできなかった。
まぁ、見るからに運動などしてそうにないぽっちゃりとした体形だったから、しょうがないだろうな。