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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
後悔の航海
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ラキとヴォルバタの睨み合いは続く。そしてこの白亜の円卓に座すもう1名のアマニタ一族、『サブジャンクリア』。彼は不気味な笑みを絶やさず、その光景を見守っていた。


さて、ここで彼の存在やキノコの亜人、アマニタ一族について注釈を入れておく。



『Amanita Subjunquillea』。

『タマゴタケモドキ』というテングタケ科の猛毒キノコ。


『タマゴタケモドキ』最大の特徴は、『モドキ』という名が示す通り、バターのようにクリーミーな美味しい食用キノコ『キタマゴタケ』に瓜2つのキノコである。

見た目では《ヒダの色が黄色か白か》《傘の裏が黄色か白か》《傘の表面の僅かな違い》程度の差しかない。

しかし、たったその程度の差で、『キタマゴタケ』と勘違いしてソレを食べた人間を殺すことができるキノコである。毒性はタマゴテングタケやドクツルタケと同じで、たった数グラムで大人の人間を死に至らす猛毒種である。

真っ白いドクツルタケのような『明らかにヤバい見た目』をしたキノコとは違い、タマゴタケモドキはまるで『安易な知識でキノコを食す者を殺すために生まれてきた』ような、悪意の塊のようなキノコこそ『タマゴタケモドキ』なのだ。


そのため、代々『キタマゴタケ』の亜人の転生者と『タマゴタケモドキ』の亜人の転生者の容姿は瓜二つの容姿を持つ。片や皇帝や王、聖人といった『光』として人々に崇められる存在。片や影武者。偽りの栄光、偽りの誉れ。

そして今世は、この男『サブジャンクリア』は、キタマゴタケの亜人である『ラキ』の影武者を生業としているのだ。



また、彼は皇帝の影兼執事以外にも、いくつもの名前を持ち、いくつもの任務を持つ男として暗躍する。


その任務の1つこそが『ファロイドの監視』である。

彼はもう1つの名を使い、常にファロイドを影から監視していた。キノコの亜人は《子実体》といわれる分身を作ることができ、その成長度合いも自由自在に変えることができる。

彼の場合は自分の分身である《子実態》を子供の姿にし、ファロイドがカトラ皇国に入国する少し前に学園長ヴォルバタの推薦という体で孤児院に入り、ファロイドやバルザ達と同僚として振舞っていた。

そして逐一、分身体からテレパシーで情報を本体に送り、ラキに報告。そして今回も、オイタをしたファロイドやその仲間と共に東へ連れていかれ、一緒に船旅をするところ、船長アブルプタに乗船を拒否され、報告に戻ったのだった。


そう、()()()()()()()1()()は『ジャグラー』なのである。

命名は名前も記憶もなく貧民街を彷徨(さまよ)っていたサブジャンクリアを拾ったラキがつけたとか。


6歳児ほどの体型は今はラキとほぼ同じの背丈、ほぼ同じの年齢となり、青かった瞳は今は赤く輝く。変わらないのは、どこであれ空気を読まない、何を考えているのか分からない不気味な笑みだけ、といったところか。


彼はその不気味な笑顔を絶やさぬまま、目の前の衝突を目の当たりにしていた。ラキがヴォルバタに放つ怒気はただ事ではない。猛毒種ではなくともアマニタ種の固有能力である『畏怖』『威圧』は相当のものである。しかし彼は動じない。彼は闇に生きるモノ。心を(とざ)す術は当然に持っているのだ。


現在、サブジャンクリアは『ジャグラー』を含む己の分身『子実体』数体から街の異変を知らせるメッセージを受けていた。ラキの『威圧』は特有で、副次的に士気や精気を下げる力がある。城が街から離れた所にあろうとも『威圧』は漏れ出て、「どこかおかしい」「何か気怠い」と訴える人が出始めているのだ。それがラキの怒りに由来すると知る者は極ひと握りではあるが。


「陛下、失礼ながら。これ以上の怒りは無意味かと。民に影響が出始めております。どうかお鎮まり下さい。」


サブジャンクリアの一言にハッと我に帰るラキ。

ここは真っ白な空間で、この3人以外は見えないが、恐らくは城内の人間には相当な負担がかかっていた可能性がある。そこに(だる)そうに座っている男、ヴォルバタはどこ吹く風で、つい力が入ってしまった。


「説教は終わりですかァ?陛下。」


ヴォルバタの煽りに、苦虫を潰したようなラキの顔は更に曇る。しかしここは過ちを繰り返すラキではない。



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