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 水上の家から少し離れたスーパーに行ったので、三十分以上かかった。夏川がメールで連絡をとり、食材がないとのことなので食料を十分買った。天水が明らかに必要以上の量をかごに入れようとしたので、古泉が阻止した。

 水位が上がり土の色をした川を渡り、先ほどまでいた神社を左に見て県道を西に歩いた。途中で大学の前まで続く道と交差し、大学と逆の方に曲がった。写真屋、電話会社を過ぎると、道の反対側に水上の住むアパートが見えた。買った物は、夏川が志願して持った。

 扉の『水上』と印刷されたシールを確認して、インターホンを押した。数秒で扉が開き、ねずみ色のジャージを着た水上が顔を出した。顔色が少し悪い。

「本当に来たのか」

 いつもより声が低いが、症状が酷いというわけではないようだ。拒んでいた割に、水上はあっさりと三人を部屋に入れた。

「おじゃましまーす」

 部屋はワンルームで、キッチンは古泉の部屋のものより大きい。

「冷蔵庫開けていいですか」

「ご自由にー」

 水上の返事を聞いて、夏川は買ってきた物を冷蔵庫に入れた。

 部屋は広くはないが、片付いているので四人が座れるスペースはあった。本棚の本はきっちり著者順に並んでいたが、テレビの下の棚には物が無造作に詰められていた。

「見えないところは、気にしないほうがいい」

 部屋を見回していた古泉に、水上が言った。

「押し入れとか?」

「開けたら、中身が落ちてくる」

 もしかして、私たちが来るから片付けたのかな、と古泉は思った。三十分と指定したメールは片付けをする時間のためだったのかもしれない。その様子を思い浮かべると、なんだかほほえましかった。

「水上君は寝てて。ごはん作っとくから」

 天水が水上をベッドの方に押して言った。

「誰が?」

「私が」

「夏川、任せた」

「私は?」

「……本でも読むか?」

「いや、ごはんを作る」

「古泉、任せた」

 終わりそうもないと思ったのか、夏川が二人の間に入った。

「うどんなので大丈夫ですよ」

 これは矛先が変わるな、と古泉は思った。

「夏川君、大丈夫、とはどういう意味か説明してくれるかな」

 笑顔の意味はそれぞれ違うだろうが、三人とも笑っていた。こうやって四人でいるのがいちばん楽しいと思い、古泉はカメラを向けた。シャッター音で三人ともカメラの方を向いた。

「どうぞ、続けて」

 カメラを構えたまま、手を差し出して言った。

「それじゃあ、天水、頼むよ」

 苦笑しながら、水上が場をおさめた。

 テレビの前の写真立てには、水上が入部したときに、山の頂上で四人で撮った写真が入っていた。

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