第9話
「ありえない、ありえない、ありえない!!」
ヤヒロは走っていた。それはもう全力で。
ヤヒロの背後には五ひきのモンスターがいた。根元の部分には、口がありそこからは獰猛な歯が見える。さらにしたの方には脚がはえ土埃を撒き散らしながらヤヒロを追いかけている。根元の上部にある草は紫色で、正直キモい。
「くそー!ふざけんなよー!」
ヤヒロは大声で、独り言をいいながら先程の出来事を思い出す。
*****
ヤヒロはゆっくりとミリーナに向けてあるいていた。空には雲がかかり多少暗くなっている。
「天候変化まであるなんてな…運営スゲー」
(こんなことまでできるなんて……流石人を以下略)
そんなことを考えながら歩いていると、道の外れの草むらに五本の草がはえていることに気がついた。
「薬草か?」
脚をそちらに向け歩き出す。
草を掻き分けながら歩くと、例の薬草っぽいものが生えているところに着いた。全部で五本あり、草が風により揺れている。
アイテム欄を表示させアイテムを確認する。
HPポーション5
MPポーション4
「レベルが少し高いからっといって、回復アイテムを見くびったらダメだよな?」
実際、ヤヒロのレベルは序盤にしては理不尽なほど高いのでそこまで必要としないはずなのだが、万が一ということもあるので、念のためにとっておくことにする。
「装備も弱いし。てか、俺って心配性だな」
ハハッと一人静かに笑いながら、薬草のひとつに近付きしゃがみこむ。
すると、薬草が揺れた。いや、動いたの方が正しかった。
「なんだ?」
多少の、不安を覚えた。
「一応……出しとくか」
右手に木の杖を出し、薬草にてをかける。
薬草は、今度は大きく動き、地面から勢いよく飛び出した。
「やっぱりか……!」
地面を強く蹴り、後ろに距離をとる。
薬草は頭上にマントラコラと表示されている。
根の部分が丸くなっており脚がはえ、目がなく、口がぱっくりと裂けている。
「いい加減、こんな展開も慣れてくるぜ!」
即座に杖を前につきだし魔法を唱えようとする。
・・・・
いや、唱えようとした。
マントラコラは、裂けた口をさらに大きく空け、
キィィーーーっと悲鳴をあげた。
「ッつ!?」
余りの高音に耳を塞ぐ。その際、杖が地面に落ちた。
視界のHPバーは減っていないので、攻撃ではないと判断し相手が鳴き止むのをまつ。
マントラコラは、一分ほどして鳴き止んだ。まだ耳鳴りがするが、構わず、落ちた杖を拾い再度杖を相手に向ける。
マントラコラは、五体に増えていた……。
「…あれ全部こいつだったのかよ、くそ!エアスラッシュ!」
魔法を唱えると、風のやいばが出現しマントラコラに向かって飛んでいく。
風のやいばは、綺麗にマントラコラの根と草を二つに分断した。HPバーは勢いよく減り一気に無くなった。草は一回、宙に舞い上がりハラハラと落ち、根はこてっと地面に倒れた。
「あー、ビックリした~」
耳鳴りも収まり、マントラコラが消滅するのを待つ。
(……何でだ?)
疑問が浮かぶ。
ポイズンタウロスもカマキラーもHPバーが0になった瞬間光の粒になった。なのに、マントラコラは、少なくとも一分たっているのに一向に消滅する様子がない。その事に、不安を覚える。
よく観察すると、マントラコラの根がピクピクと動き、草の生えていた部分からつたが伸びる。
「何だ?なんというか…キモいな」
顔をしかめながらさらに観察を続ける。
つたは、地面に落ちている草をすべて拾うと自らの口へと導く。
つたは口のなかにはいった瞬間生えている部分からポトッと取れた。
根っこはゆっくりと咀嚼し、つるすらも、全て食べてしまった。
「あれって自分の……だよな?」
不気味に思い、さらに危険を感じる。周りのマントラコラも同じような行動をとっている。
すると、全てのマントラコラは、一様に大きくなり何となく筋肉がついてるように見え、大きな草が生え始める。その草は先程の青々しい緑ではなく、毒々しい紫になっていた。口からは鋭利な歯が、生えている。そして、一番の変化は名前がマントラコラからマンドラゴラにかわっていること。
「はぁ!?なんだよこれ!意味わかんねぇよ!フレイムショット!!」
とりあえず攻撃をしてみる。
炎の玉は先頭にいるマンドラゴラに当たった。HPバーは7割ほど減っている。
「いける!……って、なんだよあれ……」
四体のマンドラゴラは攻撃されたマンドラゴラに向かって口を開き、そこから光る粉を噴出させる。
すると、ゆっくりとHPが回復していき、全快した。
「……あれが、五体」
マンドラゴラの一体がこちらを向く。そして、頭の草が光る。草の一枚が俺に向かって飛んでくる。
「っくそ!」
少しかすったが、ギリギリ避けることは出来た。
しかし、こちらのHPは1割削られる。少し切られた金髪が宙を舞う。冷や汗が額を伝う。かすっただけで、一割……それが五体。魔法使いは元々HPと防御が低い。さらに言うと、防具が一番最初の、気休め程度のものなのでレベルが高いからといって油断は出来ない。
「あーもー!こんなんばっかだ!」
すぐに、後ろを振り向き草むらを慌て出てミリーナへの道へむかった。背後では五体のマンドラゴラがヤヒロを標的として捉え走り出していた。
*****
「くそーーー!!」
思い出しながらも走ったお陰か、ミリーナまではあと100mをきっていた。
「あともうちょい!」
やっと希望が見え始めた瞬間、
ガジュ、ガジュ、グジュ
そんな音が後ろから聞こえた………。
今回はちょっと長いかな?
これからは、一週間に一回、すごく!ものすごく!死ぬほど頑張って二回(笑)投稿できればなと思います。
それではノシ