娘1
ーーこれぐらいで十分か。
しかし、片手で脇に抱えられる程度のミニサイズで中古だというのに、仏壇というだけで数万するのだから分からないものだ。こんな小さな木箱に何故それだけの価値があるのか。きっとそれは故人を悼む為のものという、遺族の気持ちを含んだ値段なのだろう。神聖なものが安物であると説得力を感じない。そう考えれば仕方がない事か。
業者に頼んだ実家の処分は着々と進んでいる。長らく付き合いのあった住職の魂抜きも終え、仏壇も無事に処理出来そうだ。人が死ぬと色々とやる事が多いが、とりあえず一段落ついた。だが、ここからが本当のやるべき事だ。
仏壇を配置し位牌、果物、花、水、骨壺を供える。中に飾った写真と目が合い思わず視線を逸らす。気分の悪さは位置が違う歪さのせいだけではないだろう。そして最後にクローゼットの奥へ仏壇を押し込んだ。こんなものを見たらあの住職はまた喧しく私を非難するだろう。
ーー銭ゲバが。
昔から不思議に思っていた。心の籠っていない上の空の経を少しばかり唱えただけで金を取っていく。死んだ人間がいる限りあぶれることのないあこぎな商売程度にしか私には思えなかった。専門職かもしれないが、結局は人の気持ちを利用した詐欺師と同じだ。
「いただきます」
仏壇には向けなかった合掌をしてから、私は一人静かに弁当をもさもさと食べ始めた。




