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やっと死ねたのに、なんでまた

魔法は勇者に討伐されるのがお決まりだ。


だからこそ、俺は退治してくれる勇者と呼ばれる者を待った。そうすれば俺はやっと自由になれるのだ。



もう長く生き過ぎた。



だが俺はどういうことか、自分の魔法では死ねない。何度も試した。喉を突き刺しても、心臓を剣で突き刺しても死ねない。



死にたいのだ。


もう全てを終わらせて死にたいのだ。


魔王として全てを終わらせる。





そして勇者を待っている理由は、この世界にこういう御伽噺があるらしい。


『勇者の道』


その物語の中で勇者が持ちし、聖なる剣で魔王を突き刺した時のみ、魔王は浄化され、この世から消える。


こんな御伽噺にどこまでの信憑性があるのかは分からない。


だが、幾度となく死ねなかった俺にとってはどんな些細な希望でもいい。それに縋るしかないのなら、喜んで縋ると決めている。




だから俺は待ち続けた。勇者が俺のことを退治してくれる日を。いつか俺の息の根を止めてくれる日を夢見て。



待てど暮らせど、勇者は来ない。


俺が希望を持って、どれくらいの月日が経ったのかはまるで分からない。


どれ程までに勇者を待ち続けたか。


だが…勇者は現れない。


俺の城に侵入しても来ない。





そこで俺は自らの手で勇者の手を育てることにした。勇者の定義がどんなものかは分からないが、少なくても強ければいい。俺を殺せぐらいの強さになればいい。


だから俺は人間界から孤児の女を一人程攫って来て、そいつを育てた。なぜ女なのかと言えば御伽噺では女の勇者と書かれていたからだ。衣食住をしっかりと充実させ、剣技を学ばせた。



どうやらこの孤児には才能というものがあったらしく、尋常じゃない速度で剣技を覚えていく。


この孤児を選んだ選択肢は間違っていなかった。






それから数年して立派な勇者と呼んでも差支えのない存在に育った。だから俺は彼女を人間界へと戻した。何故そんなことをするのかと言えば、御伽噺において勇者を倒すのには勇者の元に集いし仲間と共に困難を潜り抜け、魔王城にたどり着くという記載があったからだ。


だが、少し心配もあり、俺も醜い姿から人間の姿に変えて、彼女の隣で支えた。


記憶を消して人間界に送っても必ず、勇者になるかは分からない。ここまで育てんだからしっかりと勇者になってもらわないと困る。



そして勇者の近くで身分を偽って見ていた。彼女は信頼できる名前と呼べる人を見つけ、パーティを組んだ。


ここまでは予定通りだが、少し心配なところとしては勇者が俺にベタベタ触って来ることだ。育て始めてしばらく経った頃からこんな感じだったので気にしなかったが、新しい仲間がいるのにこんなことをされると俺に変な視線が来るので止めろ。




彼女の組んだパーティのメンバーは、剣士、聖女、弓兵、魔術師。そしてそこに勇者を加えたメンバー。


バランスとしてもそこまで問題ない。俺の見た感じだと全員がそれなりの素質を秘めているしな。



別に魔王城の周りは誰もいない。ただ魔王城にたどり着くのだとすれば絶対に超えなくてはならない場所が何か所もある。一つ挙げるのだとすれば、『霧の森』と言われる、毒が充満している森がある。


あそこを通るにはちょっとしたコツが必要だ。





だから俺は勇者を旅の途中でも鍛え、そのついでにパーティの奴らの力も底上げした。だって教えて欲しそうにしていたからさ。


なぜかパーティの奴らに教えている時、勇者が変な顔で見ていた。あの顔が何を物語っているのかは本当に分からない。





魔王城に行くまで、俺は適度に鍛え、魔王城へのたどり着きかたなどアドバイスをした。


そしてそろそろ俺がいなくても大丈夫だと判断したタイミングで、俺に関する記憶だけ抜いた。抜かれた奴らはしばらく変な感じが残るだろう。魔王城へとたどり着く方法を知っているが、それを誰から教えてもらったのか分からないというもの。



だがしばらくすればその違和感も問題なくなるはずだ。






最後に寝ている勇者の元に行き、記憶を抜こうとしたタイミングで彼女は寝言を呟いた。


「…とう…さま」


その言葉は勇者が二人きりの時だけ呼んでくる名前だ。俺はこいつの父親になったつもりはないが、こいつに言わせればそんなことはどうでもいいらしい。


『私の父様は誰が何と言ってもあなただけです。あなた以外の父様は私が認めません』



変な奴だと思ったが、何度言ってもその呼び方は直らないので諦めることにした。人前で呼ばないのであればそこまで問題はないだろうという判断を下した。




だがそれもこれでを終わりだ、彼女から記憶を抜いて俺は去った。








それから数ヶ月が過ぎて、やっと俺のところに勇者パーティがやってきた。




その日、俺は死んだ。

勇者の聖なる剣によって突き刺され、命を落とした。










そのはずなんだ。


だが、なぜか俺は目を覚まし、そして次に視界に映って来たのは泣いている勇者の姿だった。


「と、とうさま…お目覚めになったのですね」

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