怪しい男
俺が魔人を倒したという噂はすぐに国中に広まった。それもそのはず、魔人が最後に討伐されたのは120年前だかの先々代の勇者だかの記録以降初めてだ。
「・・・」
「どうしたんだい?なんか浮かない顔してるけど。」
勇者様が声をかけてくる。
「俺倒せたの完全に魔人化してない子供だったのに尾鰭ついて広まってるからなんか罪悪感が・・・」
俺はそう答えると勇者様はは苦笑いをしていた。
今日はギルドで怪しい情報がないかの聞き込みだ。怪しいところがあれば明日にでもその街に向かう。
そしていつものように受付のお姉さんに話しかけると、 いつものお姉さんではなく別のお姉さんが来た。
「《勇気の恩寵》の皆様ですね。奥へどうぞ。」
なんか知らんけど内装が豪華な部屋に通された。そこには高そうな椅子に座っているいかにも偉そうなおじさんがいた。
自己紹介の後本題に入る。
このおっさんはこの街のトップらしい。
俺達がこの街に来た理由を聞かれたが話すわけにもいかないので適当に嘘を話し、最近変わったことなど聞いた。
するとおっさんは少し考えるような素振りを見せて口を開いた。
「君たちの冒険の理由はわかった。だが、すまない私では力にならないようだ。これは魔人討伐の報酬だ。」
ドン、と置かれた袋には結構な量の金貨が入っていた。正直助かる。
特に情報は得られなかったので世間話を適当に切り上げ礼を言い部屋を出た。
宿に戻りモニカに結界を張ってもらいソフィーさんに遮音してもらう。
「どうしたのよ?急に部屋に来いなんて。」
レティシィさんに問われる。仕方ないだろう理由は一切説明してないし。
「さっきのあのおっさんは多分《天領の民》だ。」
「は?」
「へ?」
レティシィさんとモニカが呆けた声を出す。
「やはりね。あの男、私たちが魔人を偶然見つけたと言うまで探る様に質問してたし。」
「そうなんですよね。でもそこまで頭良くないみたいだけど。」
そうなのだ。もし頭の回る奴なら俺たちが偶然見つけたと言っても疑って何かしら調べるだろう。
それがなかったということはそういうことだ。
「これは私の推測だが、彼は多分《天領の民》から何かしら受け取って問題の揉み消しなどをやっているのだろうね。」
セイカさんの推測は俺の推測と大体合っている。
「その通りです、多分だけど調べたら何かしらの痕跡が残ってるはず。」
「となれば今晩寝静まった頃に侵入して証拠を探そう!」
勇者様がそう提案する。異論はない。
しかし、今夜実行する前に確認しなければならないことがある。
それは、 どうやって忍び込むかだ。
普通に考えて警備厳重だろうし。
門番もいるし。
どうしよう。
・・・よし、決めた。