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05-25 激震!! 三河一向一揆⑦

 エリスや船員達に案内されて元康達が【タイタニック号】の温泉施設等でしっかりと休息を取って貰っている間に、津島に設けられた軍港司令場で突然倒れてしまった亮太の事が心配でいてもたってもいられなくなったマリナは、女性パイロットであるルーデルが操縦する【AH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプター】(※以下アパッチ)に乗せて貰う事で、第一艦隊旗艦であり亮太が乗船している【空母大鳳】の元へと急いでいた。


「私今日初めて乗せて貰えたんですけど、このヘリコプターと言う乗り物は信じられないくらい早い速度で自由に空を飛ぶことが出来るんですねルーデルさん!!」


「そうだねマリナちゃん! 私も事前にシュトゥ……爆撃機と比べても見劣りしないだけの速度を出せるとは聴いていたけど、この子は中々の頑張り屋さんの様だね!! 今この機体で出せる最高時速に近い速度で向かっているから、目的地である空母には後数分もしない内に着くと思うよ!!」


 上機嫌にそう語るとあるドイツ空軍の爆撃エースの生まれ変わりである彼女が言うように、二人を乗せている【アパッチ】は長さ約15mにもなる十字の形をした大きなメインローターを強力な2基のターボシャフトエンジンにより得られた出力により回す事で、対地攻撃様の数々の武装を積んでいて8000キロ近くもある機体を新幹線と並走出来る時速360キロと言う速度で海面から高度2000m上空を飛行出来る性能を持ち合わせています。


 そして走行車や、敵拠点を破壊する為の対地攻撃兵器として機首の下に【30mm機関砲】一門、胴体の左右両側に建物事吹き飛ばす火力を持つ【ヘルファイア対戦車ミサイル】を片側4本備え、さらにそのミサイルポッドの外側に寄り添う形で練炭を連想わせる【ハイドラ70発ロケット弾ポッド】を備えており、一度【アパッチ】に目をつけられた地上ターゲットはこの火気により跡形もなく吹き飛ばされます。


 そんな“空飛ぶ戦車”と言っても差し支えが無い戦闘力も備えている【アパッチ】の高性能ぶりと高速で流れていく景色を二人が楽しんでいる間に、水平線の先に幾つかの影が現れ少しずつ大きくなってきた。


「あの船が亮太が乗っている船ですよルーデルさん!!」


「お、本当だねー。あれが噂の第一機動艦隊か……」


 そんな二人の視線の先に映る水平線の上に見えてきた物は薄い靄(もや)の中に浮かび、空母の外側を円形に守っている8隻の【陽炎型駆逐艦】とその枠の中で空母の上下左右を守る様に進んでいる四隻の【巡視船】がおり。

 その上空を二人が乗る【アパッチ】は優々とフライパスしていく。


 すると二人の視線の先には陣形の中心にいた【空母大鳳】とその前を行く【戦艦長門】の姿を二人は確認する事が出来た。


「さてと、改めて着艦許可を貰っとかないとね。こちら【アロー1】より【大鳳】。着艦許可を求めます」


 そう言って一応事前に連絡は取ってはいましたが念のためもう一度ルーデルが連絡を入れた所、予想外の返答が管制所から返って来ます。


 《こちら【大鳳】より【アロー1】。現在我が艦と【戦艦長門】は異常な魔力反応が確認された三河の地に対してミサイルによる対地攻撃準備を行っておりますので、急ぎ着艦の準備をお願いします》


「ミ、ミサイルによる対地攻撃ですって?!」


「こちら【アロー1】了解! ならささっと済ませるよ!! マリナちゃん!! 着陸に備えて!!」


 その予想外な返信内容を聴いたマリナが驚きの声をあげている間にもルーデルが操る【アパッチ】は【空母大鳳】から見て左側から速度を落としながら突っ込んで行く。


「ルーデルさん?! このままで大丈夫なんですか?!」


「安心してマリナちゃん!! 直線からでしか着艦する事が出来ない普通の飛行機と違って、“この子”はこう言う曲芸も出来るのさッ!!」


 まるで今ある状況を楽しむ様にそう言ってのけながらも、ルーデルは艦橋に向けて前屈みの姿勢で鼻先を突っ込んでいた機体を巧みに操作して空中で制止させ、着陸目標である【空母大鳳】の甲板の中心に着陸する為に機体をゆっくりと左旋回させる事で甲板と機体の向きを合わせる事に成功させます。


「よしよし……本当に良い子だね君は」


 そう言って自分の手足として働いてくれた機体にまるで騎兵が愛馬を誉めてあげる様に誉めつつ、ルーデルは続けて着艦体勢に移項した【アパッチ】を労る様にして航空機用のエレベーターがある甲板の真ん中へと見事に着陸して見せたのでした。


 そしてそれと同時に二人が着艦した【空母大鳳】とその前方を行く【戦艦長門】からけたたましいサイレンと艦隊を取り仕切っているナグモ司令による号令が鳴り響き始めます。


 《これより我が艦と長門で対魔力ミサイルによる攻撃を行う!! 作業員は戦闘配置につけ!!》


 その号令を聴いて船内の窓を通して見える作業員達がせわしなく走り回っている光景を【アパッチ】のキャノピー越しに、ゆっくりと格納庫へと降りていくエレベーターに揺られながらマリナはヘルメットを急いで取りながら目撃する。


「今回の作戦は協力者である織田家と協力者達に支援をするだけで直接関わる事は出来るだけ避けようって話だったのに、一体何が起こっているの……?!」


 そう言っている間にも【空母大鳳】の前方にいる【戦艦長門】の本来であれば水上機を格納し、それを空へと打ち出す事が出来る射出機の代わりに後部甲板に合わせて8基(ミサイル61本分)設置されている、現代の艦船で言う所の【イージス艦】の主砲と艦橋の間にあり、ミサイルをビール瓶の籠の様に入れて発射する【VLS(垂直発射装置)】の蓋が両開きのドアの様に一斉に開いた。


 そしてそれは甲板の先端と末端に同じくVLSを備えている【空母大鳳】も同じであり、マリナ達がそれに気づいた時には先に発射準備を整えた【戦艦長門】と同じ様に【空母大鳳】に備えられているVLSの蓋も開かれていました。


 やがてその数十秒も経たない内に両艦からミサイルが轟音と猛烈な白い煙を炊きながら垂直に次々と発射されていき、両艦合わせて発射された6発ものミサイル達は空中で進路をゆっくりと変えながらマッハ2の速度で濃い霧が発生している、現代で言う岡崎市付近へと突き進んで行きます。


 その状況を知らないまでも亮太達が攻撃に踏み切る程に危機的な状況に陥っている事を認識しているマリナは、自分とルーデルを乗せた【アパッチ】を甲板事下へとゆっくりと降ろしていくエレベーターの動きにやきもきしつつも到着を待ちます。


「もう! 急がないと行けないのに何でこんなにゆっくり動いているの!!」


「まあまあ、落ち着いてマリナちゃん。ここで焦ってとんでもないミスを犯してしまわない様、私と一緒に深呼吸しよう。ほら、酸素マスクをつけて」


 そう言って後ろのパイロットシートに座っているルーデルになだめられながらもマリナは彼女が先程まで付けていた酸素マスクを手渡され、それを恥ずかしげに受け取ったマリナは素直に焦る心を落ち着かせる為にマスクを装着して深呼吸する事にします。


「ううう……わかりました……。すー……はー……すー……はー……」


「とうだい? 少しは落ち着けたかい?」


「はい……少し慌ててしまっていたみたいです。ありがとうございますルーデルさん」


 そう言って少し恥ずかしげに借りた酸素マスクをルーデルに手渡したマリナにルーデルは微笑みながら「どういたしまして」と告げつつ酸素マスクを受け取ります。


 そして二人がやり取りをしている内にもエレベーターは様々な機体が整備を受けている格納庫へと到着しました。


 そこには初戦で大活躍し、現在は翼を【八】の字に折り畳んだ形で置かれている30機近くの【九九式艦上爆撃機】が格納庫の後ろの方に置かれており、その前を陣取る形で艦隊のレーダーの代わりを果たしている1機の【パワードアーマー:ロングイヤー】がおり、その前方に4機の【RF-4EJジェット偵察機】が次の出撃を待つ様に並べられていました。


 それら整備兵達が点検を行っている機体達を見渡したルーデルはヘルメットを脱ぎつつも分析を始める。


「なかなかに面白い光景だが……なるほどね……。待機している機体達を見る限り閣下は航空機による対地攻撃を出来るだけ避けて、偵察機を通して出たデーターを用いて安全圏からの艦隊による対地攻撃を意図されている様だね……」


「でも、ルーデルさん。織田家が襲われていた時は後ろの方に置かれている沢山の“白色の飛行機”を亮太は用いていましたよ?」


 そのマリナからの意見に対してルーデルは「私の感じた事なんだけどね」と一言置いてから、コックピット席の右側に格納庫にいた整備兵達に架けて貰った階段に背中を向ける形でゆっくりと足を架けて降りていく。


 それに習ってマリナも前席であるガンナー席から階段を伝って地上へと降り、階段を準備してくれた青年の整備員にお礼を言う。


「多分閣下の思惑だと、最初の段階では“日ノ本には世界大戦時に用いられた旧式の兵器だけでも充分過ぎる程の戦力差が出せる”と踏んでいたんだと思うんだ。でも、実際に閣下達が現場を調べて見ると足を踏み入れる事すら難しい状況に日ノ本が有ると言う事を実感した……。それが先程からミサイルが発射され続けている理由だと私は思う」


 彼女の言うとおり、二人が着艦した直ぐ後に2艦から発射され始めたミサイルの本数は既に2桁を超えており。その大量のミサイル達が発射され続けている事による振動は今も艦内に響き続けているのである。


「だとしたら尚更亮太の元へと急がないと!! ルーデルさん、引き続き私に付いてきて貰っても良いですか?」


 一応マリナの送迎と言う任務を終えていたルーデルはマリナからの意外なオファーを受け、目をぱちくりとさせながら変事を返す。


「只のパイロットである私がかい?」


「はい! ルーデルさんならパイロット目線から戦場の状況を見れると思ったんです! それにお姉さん見たいに頼りになるし……そ、それだけの理由じゃ駄目ですか?」


 その回答を受けたルーデルは少し考えた素振りを見せてからくすりと微笑んで、自分の右隣に並ぶマリナと視線を合わせたまま中腰になり、マリナをその姉の様な優しい目線で見つめる。


「我等が姫様のお願いとあれば断る理由等ありません。喜んでお付き合いさせて頂きますよ?」


「本当?! やったー!!ありがとうルーデルさん!! 私凄く嬉しい!!」


 そう言ってお茶目にウインクして見せたルーデルにマリナは照れ臭さを感じつつも、満面の笑顔で彼女に抱き着きながら上目遣いで喜んだ。


「あははは! うん、私もそこまで喜んで貰えるならとても嬉しいよ。では、早速参りましょうか姫様?」


 そう言ってルーデルはしっかりとマリナの左手をその暖かい右手で優しく掴み、何故か顔を真っ赤にさせてしまっているマリナの顔を見上げる。


「あ……あの……」


「ん? どうしたの姫様?」


「その……姫様と呼ばれるのは恥ずかしいので……」


 もじもじとそう告げたマリナにルーデルは「ああ、そういう事だったんだね」と彼女の意見を聞き入れつつ、マリナと視線を合わせたまま微笑む。


「そうだね、じゃあここからは友人としてマリナちゃんと呼んでも良いかな?」


「は、はい!」


「うん。そう言って貰えて私も嬉しいよ! あ、私の事は気軽に呼んで貰えると嬉しいかな? 私、堅苦しいのは苦手な人間でね」


「わかりました! じゃあ、先程と同じ様に気軽に呼ばせて貰いますねルーデルさん!」


 その様なやり取りを交わしつつも二人は格納庫の右側にある艦橋への出入口へと向かっていき、船員達がきびきびと歩き回っている少しばかりの廊下を越え、途中艦橋への道を船員に訪ねつつ五人乗りほどのエレベーターを使用して亮太達がいるであろう第一艦橋へと向かいます。


「お、どうやらこの鉄の扉の向こうが第一艦橋みたいだね」


 そう言ってルーデルが見つけたのは両開きの鉄の扉の上に【第一艦橋】と書かれたプレートが掲げられ、機動隊の防具と【MP7短機関銃】で武装した二人の兵士が守っている部屋の前に二人は辿り着く事が出来た。


「すいません!! 私はマリナと申しまして、隣にいるルーデルさんと共に亮太に会いに来たのですが通して頂け無いでしょうか?」


「お待ちしておりましたマリナさん。ルーデルさん。どうぞ中へ」


 そう言って突然訊ねて来たマリナとルーデルに対して二人の機動隊員の二人は事前に連絡がされていた事もあってすんなりと中へと通してくれた。


 そして、二人の視線の先に有ったものは緊迫したムードの中で指示を飛ばしている海軍の白い軍服を着ている高校生程の二人の少女の姿と、その二人の後方で複数のモニターを目の前に広げて見つめながらリクライニングチェアーに座っているであろう亮太の後ろ姿を見ることとなる。


「全15発からなる【対魔力拡散粉末式誘導ミサイル】を三河の住民達が多く暮らしている村や、城下町付近において手動で自爆させる事で広範囲にチャフの散布が成功した事を確認。これにより岡崎城周辺から発生し、岡崎市全域に及ぼうとしていた“水の魔力”を含んでいると見られる霧が縮小した事から見て、これが人為的な物であり、三河全土を亡ぼすに値する危険な物で有った事を報告致します」


 そう言って淡々と結果を読み上げているのは司令官のナグモでは無く、148㎝程の身長を持つナグモよりも背が高く、黒髪のショートヘアーで頭の天辺には可愛らしいアホ毛があり、黒色のフレーム眼鏡を描けていて少し色白の肌を持つ少しばかり小さめな胸のクールな少女であった。


「……分かりやすく情報を纏めてくれてありがとう“クサカ”さん。岡崎城から出ている霧は……今も出続けているんですよね?」


「はい閣下。現在は最初の時に見せた海の波の様な速度と比べると勢いは有りませんが、以前として岡崎城周辺からは魔力を帯びた霧の発生が確認されております」


 その報告を受けた亮太は物静かで、かつ弱々しい声でクサカに対して質問を続ける。


「そうか……霧による被害は確認出来るかな……」


「はい。現在、三河の西側だけで民間人を合わせると800人近くの人達が霧により生命力を絞り取られた様で、霧が晴れた村中に干からびた人達が倒れているのが確認されております……」


 その報告を聴いた亮太は小声で「そうか……」と呟いてから、驚くべき命令を下す。


「長門に……岡崎城へと対魔力砲弾を用いた……主砲による砲撃を許可……。これ以上の犠牲をださせるな……!!」


「亮太、待って!! そんな事をすれば日ノ本の人達が私達の事を恐れてしまうよ!!」


 艦橋の出入口で一連のやり取りを聴いていたマリナが慌てて亮太が座っているリクライニングチェアーの元に駆け寄り、何とか押し留め様とするのだが……。


「ひっ……!! 亮太?! その体どうしちゃったのよ!?」


 思わず短い悲鳴をあげてしまう程に彼女を驚かせた亮太の姿はどういったものなのかと言うと、目の下に濃い隈が出来、着用しているジャージの下の肉体はまるで餓死寸前の人の様に皮と骨だけにすら見える程にげっそりとやつれ果てた見るも無惨な姿であった。


「マリナ……ここまで来てくれたのか……ありがとう……」


「来てくれたのかじゃないわよ!! どうしちゃたのよその体?!」


「閣下の容態については私から御説明させて頂きます!」


 思わず死人の様な容姿をしている亮太がもたれ掛かっているリクライニングチェアーに寄り添う様にして涙を堪えながらもマリナが説明を求めるのですが、その質問に対する回答を同じく【空母大鳳】の艦橋内にいるナグモ司令が二人の元へと近づきながら、喋る事すら辛そうな亮太に代わって答え始めます。


「現在閣下は突発的に生じた三河での反乱に迅速かつ、人命救助を優先して行動されています! それに辺り状況に対応する為に必要となる装備や弾薬を新たに生産しなければならず、津島の復興で力を既に使いきってしまわれていた閣下の体は……」


「限界を超えて全ての余力を出し尽くした結果ミイラ状態になってしまった訳なの……!?」


 ナグモの説明の通り、実は津島の再建だけでほぼ限界を迎えてしまっていた亮太の身体は突然三河で起きてしまったクーデターに伴い、信長と秀吉達が慌てて移動しなければならない事態も発生してしまった事で大量の装備が必要になった事や、移動用に数十台の輸送車が必要になった事もあり。


 限界を超えた体に鞭を打って大量召喚を続けた結果、気がつけば亮太は一人で身動きが取れない程に衰弱してしまっていたのである。


「何隻かの駆逐艦や……津島の再建に用いた重機や資材……パワードアーマー……そして大工達全員を回収する事で……何とか意識は保ててるけど……。正直、今敵に襲われたらひとたまりもないと思う……」


「だから後先考えずに急いで岡崎城を砲撃するって言うの亮太?」


「いや……それだけじゃない。得体のしれない異国から来た僕達の怪しげな話をすんなりと受け入れた天皇陛下への失望……そしてやっと取り戻すことが出来た自分達の国を……あっさりと危機的状況へと導いた様に見える元康ちゃんの行動に失望した事で……彼等は僕達を亡き者としようとしていたんだけど……。その彼等が僕達に対抗する為に手に入れたであろう……魔石の暴走を止められなくなってしまっていると感じたからだよ……」


 その解答を聴いたマリナが「魔石の暴走?」と亮太の説明におうむ返しで聞き返し、それに対して亮太はマリナに小さく頷いてから見てきた事を伝える。


「彼等のリーダーであり……水の魔石を岡崎城へと持ち込んで来たとされる人物が……風の魔石に取り込まれたラムセスさんの様になっていると……消息を絶った偵察機を探してくれていた仲間が伝えてくれたんだ……」


 その思わぬ話を聴いたマリナは思わずリクライニングチェアーにもたれ掛かっていた体勢からビシッと立ち上がり、脳裏に浮かんで来た最悪の答えを吐き出す様にして亮太にぶつける。


「何ですって?! それじゃあさっき皆がモニターで見ていた三河を呑み込もうとしていたあの霧の正体は魔石に取り込まれてしまった人達の成れの果てだって言うの?!」


「そうかも知れないし……そうでは無いかもしれない……。ただ一つ言える事は……このままあの霧を放っておけば……一つの島国から生物が死に絶えると言う事だけだ……」 


「そんな……」


 そうこう二人が話会っている間にも、三河全域を衛生写真の様に上から写しだしているモニターには先程魔力を消失させるチャフが詰められたミサイルが20発近く霧の中で爆発したにも関わらず、岡崎城を中心にして白い霧が再び立ち上ぼり始めているのが確認された。


「ど、どう致しましょうか閣下? このまま放っておけば再び霧が増え、もしかすれば今度は攻撃を行った我々を狙って来るかもしれません!!」


 少し震えた声で状況報告と最悪の展開を伝えるナグモの意見に思わず艦橋内にいる艦長をはじめとする船員達にも動揺が走る中。亮太はどうすれば分からないながらも、何か打開策を探しているであろう苦しそうな表情をしているマリナに確認を取る。


「マリナ……僕はまだ生存している三河の人達を……奴等の毒刃に掛かる前に守りたいと思っている」


「……うん」


「だから……今は最善と思える事をさせて欲しいんだ……ごめんな……。ナグモちゃん、長門に打電して欲しい……。岡崎城に巣くっている化け物を……主砲を持って撃退して欲しいと……」


 その命令を受けたナグモは緊張した面持ちで二度ほど亮太とマリナを見てから、静かに敬礼をしつつ了承した。


「こちら旗艦【大鳳】より【長門】へ。閣下からの命令を伝える。【岡崎城に巣くっている化け物を主砲を持って撃退して欲しい】以上です」


 ナグモの肉声による無線により伝えられたその命を受け、前方を行く【戦艦長門】の艦長から通信士を通して返事が直ぐに返って来た。


 《こちら【長門】から旗艦【大鳳】。閣下の命令に違いは無いか?》


「こちら【大鳳】より【長門】へ。違い有りません」


 その返信を聴いたであろう【長門】の通信士は少しの間を開けた後に返事を返して来た。


 《……こちら【長門】、了承しました。これより主砲による砲撃を開始します》


「ありがとう。それと艦長に御伝えください。今回の砲撃は【二・二六事件】の時の様な同胞を打つための物では無く、あくまで“災害”から民を守る為のものである事を誤解無き様、艦長に御伝えくださいね」


 そのナグモと【戦艦長門】の船員達との意味ありげな会話を亮太達も聴き、不思議に思った亮太は真剣な表情で通信を終えたナグモに質問する。


「ナグモちゃん。さっき通信で話していた……【二・二六事件】と今回の砲撃に何か関係があるの?」


「そうですか……閣下はお若いので【二・二六事件】を御存知無いのもおかしくないですね。実は【戦艦長門】は過去に反乱を起こした若い陸軍兵士達を排除する為に、彼等が立て籠っていた国会議事堂等の日本の中枢が集まっている永田町に41㎝砲八門を向けた時が有ったんですよ……」


「ええっ!?」


「そんな物を打ち込んだら町事吹き飛ぶんじゃないの!?」


 そのとんでも無い話を聴かされた亮太とマリナは驚きの余り声をあげるが、ナグモは苦笑いしながら話の落ちを明かしてくれた。


「勿論、如何に練度が高くても何処に着弾するか分からない主砲を天皇陛下が見ておられる前で打つことは有りませんでした。要するに立て籠っていた陸軍兵士達を同じ陸軍の人達が何とか許してやって欲しいとゴマを擦り始めた事に怒った海軍が、当時海軍の象徴でもあった戦艦長門を引っ張り出して来たと言う訳なのですよ……。いやー……あの時の先輩達は鬼よりも怖かったですよ……」


 そんな思い出話で皆の緊張がいつの間にかほぐれたからか、艦橋内にいた幾人かの船員達にも笑顔が見えるが、誰にも見られていない事を確認したのかナグモの隣に寄り添う様にして立っているクサカは小さく呟いた。


「……そう、そしてその様な国家規模の重い役目を背負いながらも戦って来たのが、【戦艦長門】なんです」


 その言葉を肯定するかの様に前方にいる日本の名を背負って生まれた鋼鉄の船は故郷と良く似た国の危機を救う為にその全砲門を左旋回させ、その数分後、南知多町と浜松の間に当たる海域に8つの轟音を轟かせる事となった。



・皇居が存在する場所を勘違いしていましたので修正させて頂きました。(3/19)

・長門に設置されたVLSの位置を後部煙突の外側ではなく、水上機格納庫の位置に変更しました(3/31)


【強化及びボーナスカードによる兵器の近代化】

・砲弾×500《Rank,R+》→《Rank,R+5》

1.対魔力拡散粉末を弾頭に使用 2.安定性を得る為の展開式翼を追加 3.砲弾の軽量化 4.時限信管


・砲弾×500《Rank,R+》+ボーナスカード+【強化値+3】=【対地誘導ミサイル】《Rank,R+4》×500

1.対魔力拡散粉末を弾頭に使用 2.誘導性能の強化 3.推進距離の強化


ボーナスカード残り8枚


◇資金:448,4649,7562SP-【改造費用】70,0000SP=448,4579,7562SP


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