05-17 交流会は波瀾万丈【Final】
試合開始早々フィールドの中央を占める重要拠点である【小山】を手に入れる為に両軍が激しくぶつかり合ったのだが、見事に織田信勝率いる青チームに『初手、パンジャンドラム』と言う訳の分からない不意討ちを食らわされてしまった松平家とシャルロッテ達が組んで結成された赤チームは、メンバーの内半数以上を失うと言う大損害を出してしまった。
「うわわわ?!! あいつら山の上からガンガン撃ってきているよ渡部殿ーー?!!」
「くっ、各員一直線に走らず!! 敵に照準をつけられない様にジグザグに走るんだ!!!」
「わ、わかりました!! 忠勝行くぞ!!」
その結果、信勝をルルが討ち取ったとは言え9対4と言う劣勢な状況に追い込まれた赤チームは指揮官である渡部が勝利を得る為の戦術を練り。
障害物が多く、身を隠せる場所がある自軍の小城と小山との間の右側に位置する拠点である【村】へと向かう。
「うひゃあ?! ちくしょう有利になったからって撃ちまくりやがって!!」
その逃走を敵がやすやすと見逃してくれる訳もなく、未だに小山の頂上からはあられの様なBB弾の雨が斜めに降り注いでおり。周囲には小石が跳ねる様な音と共に白いBB弾が横切っていく。
そんな中を冷や汗だらだらになりながらも叫びながら全力疾走している忠勝と、
「くっ、いい気になるなよ!! 食らえ!!!」
凛々しい表情で時折後方を振り返り敵の動きを確認しつつも【B.A.R軽機関銃】で敵が居るであろう地点に、20発近くのBB弾をばらまいてはリロードして、ばらまいてはリロードすると言う牽制射撃をする康政、
「二人とも焦らず行こう!! 後方は私がしっかりと守るから!!」
そして背中に背負っている【ライオットシールド】にバチバチと言うほどのBB弾の雨を受けつつ、ボルトアクションライフルである【三八式歩兵銃】でしっかりと打ち返しながらも、仲間の盾となる殿を勤めている渡部も含めた三人は何とか村に駆け込む事が出来た。
この撃ち合いで、何故か小山の上から攻撃している青チームの内二人が無理に追おうとした所を反撃を受けた為に被弾したり、ちゃかり者のルルに狙撃されてリタイアしており。
これによりお互いのチームの人数差は【赤チーム:松平勢4人】対【青チーム:織田勢7人】と言う状況となった。
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「ふん。慌てて後退したか……。たった三人で落ち延びても何が出来る訳でもなかろうに……」
そう言って彼等の後ろ姿を見送っているのは、右肩に巨大な鉄パイプの集合体の様な物を担いでいる柴田勝家であり。彼は逃げ惑う赤チームに追い撃ちをかけるでも無く、ただ山頂の平地で倒れて動かなくなってしまった信勝の隣でしゃがみこんでいた。
「若様、反応は有りませんが私の声は聴こえておりますよね?」
ルルからの牽制射撃により頭部にBB弾が当たってしまい、即死判定を受けた信勝の体を包む防具はその機能を拘束具に変えてしまった様で。信勝は指の一本も動かせない状況にあり、顔を覆っているフルフェイスヘルメットの透明のシールドの奥で彼が悔しそうな顔をしている事だけはわかる。
「遊びとは言え、油断してしまえば一瞬で命が刈り取られてしまう戦場の恐ろしさが実感出来ると言うのは良いが、それによって人の生き死に対する感覚が鈍ってしまうかも知れませんな……。このサバイバルゲームと言う奴は」
そう言って勝家は高さ20mの小山から、ふと周囲の景色を見渡す。
「……後は、戦国時代と言う物がいったい何を産み出す物であると言う事を町民達に理解させるにも適しておるのかもしれませんな」
そこには武人として戦場を眺めている柴田勝家の姿は無く、一人の人間として状況を把握しようとしている一般人としての彼の姿があり。そんな彼の表情と感情を倒れている信勝はシールド越しに見て、にやりと笑っていた。
「むっ、何がおかしいのですか若様? 人が真剣に考えていると言うのに!!」
その言葉に対して信勝はやはりにやにやと笑いながらも、ゆっくりと口を動かす事で自分の感じた事を少し怒っている勝家に告げ、勝家はそれを読み取って更に顔をしかめる。
「何が《勝家も賢くなったのう》ですか若様!! 人をおちょくるのも大概にしてくだされ!!」
だが信勝は明るく笑うのを止めずに勝家にやられていながらもある指示を出す。
「む……畏まりました」
それを聞いた勝家は少し引っ掛かる所はあれどその命令に従い、周囲で指示を待っていた六人の仲間達に指示を出す。
「これより我達は敵残党を処理し、この度の戦を締めることとする!! ラムセス殿、貴様に三名の部下を預ける!! その戦力を用いて現在がら空きになっている拠点から旗を取ってきてくれ!!」
「畏まりました! 勝家殿はどうされるのですか?」
その質問に対して勝家は「フン」と鼻を鳴らしてから、右肩に担いでいる第二次世界大戦末期にナチスドイツで開発され、本当は航空機を撃ち落とすのに用いられる【携帯用対空ロケットランチャー・フリーガーファウスト】の安全装置を解除する。
「……そんなものは決まっておる。まだ小山に隠れている卑怯者をいぶりだし!! 最後に残った三人もろとも始末してくれる!! ただそれだけだ!!」
斯くして小山に陣取っていた青チームの面々はそれぞれの役目を果たす為に動き出すのであった。
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その頃何とか無事に【村】へと到着する事が出来た赤チームは何をしているのかと言うと、小山が見える位置にある家の中へとお邪魔していた。
この村はまるで昔話に出てきそうなかやぶき屋根の一戸建ての家がバラバラな位置で六軒建っていて、村の中央にある広場の様な場所に青色の旗がポツンと置かれているだけと言う、何とも寂しい村であった。(旗は敵チーム以外は動かす事が出来ない)
しかしそんな事を悠長に考えている程忠勝達に余裕はなく、ただ無傷に近い状態でここまで来れたことに安藤していた。
「はあはあ……。流石にここまで来れば敵の射撃は届か無いよね?」
「そう願いたい所だけど、どのみちこの狭いフィールドで彼等を振り切る事は出来ないと思うから、今のうちに出来るだけ有利に戦える様にしようね」
そう言ってげんなりしている忠勝を励ましつつ、先行して渡部が昔話に出てきそうなかやぶき屋根の家の玄関を越えて、試合中で有るために「失礼します……」と言ってからタクティカルブーツを履いたまま土足で家の中へと上がり込む。
玄関の段差を越えて直ぐそこにある畳みが敷かれ、木蓋がされている鉄の鍋が置かれている囲炉裏がある居間を抜けて、小山が見える位置に有る木の枠組みがされた外窓へと近づきつつ、自らの体を隠すために背中を左側の壁に合わせる様にする。
忠勝達もそれに習って、窓の右側に忠勝・康政の順で体を隠しつつ背中を預ける。
「今から山に隠れているであろうルルさんに連絡を取るからね? ……ルルさんに通信を繋いでくれ」
そう言って渡部が音声認識マイクに声をかけると直ぐにコールオンが忠勝達にも聴こえ始め、電話越しの様な少し響く囁き声のルルから変事が返ってきた。
《こちらルル。現在、敵に見つからないようにスコップで山に穴を開けて、外側に草木を置いて隠れてるよー……。おーばー》
言葉の最後を告げる【おーばー】と言う声を確認してから渡部も変事を返す。
「なるほど……。敵はまだ直ぐ近くにいますか? 送れ」
《うん……。ちょうどゴリラ見たいなおじさんが拠点を取るグループと……私を見つけるグループに仲間を分けて歩き回っているみたい……。おーばー》
その話を聴いた忠勝が慌てて声をあげる。
「それって不味いんじゃ無いの?! 今すぐに助けに行った方が!?」
彼女を心配する忠勝であったが、直ぐにルルから素っ気ない変事が返ってくる。
《大丈夫だよ。一人での仕事には馴れているから……。これからどうするの? おーばー》
隣で忠勝が「馴れているって…言ったって……」と心配そうに呟いているのを聞きつつ、渡部は少し考えてから提案する。
「ルルさん。貴方の隠れている場所の近くに、シャルロッテさんの装備は落ちていませんか? 確か迫撃砲が有ったと思うんだけど。送れ」
《ん。確かに隠れている塹壕から出れば、直ぐ近くに落ちているよ。おーばー》
「……出来れば君を探しているグループが目を離した時を見計らって、その迫撃砲と君の持つライフルで捜索隊を攪乱して欲しい。その間に我々が彼等の背後を突いて撃退するか、敵拠点にある旗を奪う。どうかな? 送れ」
その一か八かと言う程に大胆な作戦内容を聴いて忠勝は瞳を輝かせるが、康政は反対意見を述べる。
「渡部殿!それでは失敗した場合我々は全滅するのでは無いですか?!」
「数で負けている我々が出来る作戦は敵の注意がそれている攻撃目標に対する奇襲か、大打撃を与える事が出来る伏兵戦法の方がまだ互いに状況を掴みきれていない今の様な状況だと、立て籠っているよりも勝算があると思うんだけど、どうかな?」
「そんな桶狭間の様な事が……」
未だ納得出来ない康政が渋るが、うって変わって忠勝は大賛成の様で先程のバテて落ち込んでいた表情は好奇心から来る興奮と熱意に満ちていた。
「やってみようよ康姉!! こう言うのはその時の戦場の流れって奴も関係していて、理屈じゃないんだよ!!」
しかしその勢い任せで投げ槍な考え方は真面目な康政からすれば【カチン☆】と来るもので有ったらしく、真っ向から反発してしまう。
「あのなぁ忠勝……!! 大勢の侍が集まる戦場でそんな考え方で皆が動いたらどうなると思う?! 敵からすればわざわざ陣形を解いて、攻撃力も防御力も削がれた只の雑兵にしかならんのだぞ?! そんな状況で密集した相手に楯突けば一瞬でばらばらになってしまうんだぞ!?」
「なっ?! 何だよ!! じゃあ康姉はその考え方に習って、相手の陣形を乱して敵を各個撃破してみれば良いじゃないか!!!」
その逆転の発想を忠勝から受けた康政は思わず「あっ……その手が有ったか」と呟いてから、自分の為に渡部が準備してくれるだけでなく説明も合わせてしてくれた、胸のポケットに入っている緑色のみかんの様な三個の【トリモチグレネード】の存在を思い出す。
「渡部殿……敵を引き付ける役を互いに担いながらでしたら、少しは持ちこたえられるかもしれません!」
「……何か良い提案を思い付いたんだね、康政さん?」
「はい!! ルルさんも聴いていただければ嬉しいです!!」
《ん。楽しみにしてるね》
まるで父親の様な穏やかな声で聴かれた康政は姿勢を正して思い付いた作戦を皆に伝え、その作戦は四人の中での作戦会議により洗礼され。実行に移される事となるのでした。
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その頃、赤チームから見て左手に設置されていて、2本ある内の一本の旗がある拠点にラムセス率いる四人のチームが到着した。
「赤チームのフラッグを確認した。これより回収する」
チーム内で扱われている通信装置を用いてしっかりと提示報告をしつつ、片手にショットガンを持ったラムセスを先頭に、後方にセミオートライフル系の武器で武装しているスタッフ三人が縦一列で行軍しており。
敵が最初に壊滅的打撃を受けて逃げてしまった事もあって回収班はかなり気が緩んでいた。
《やれやれ。敵さんはもう戦闘不能なんだろうから、ここから先は消化試合だな……》
《そりゃあ初めての参戦者相手にあれだけの不意討ちを噛ましたんですから、仕方無いでしょー》
そんなやり取りをする彼等の内心が解らなくはないラムセスは一つ咳払いをしてから気を引き閉めさせる。
「お前達、ここで失態をさらせば此れからの我々の身の振り様も関わると言う事を忘れるなよ?」
《はっ、はい!!》
《了解です!!》
そんなやり取りをしつつも彼等は大きさが様々な岩が転がっている草原地帯のど真ん中にある、テーブルの様な岩の上に立っている手旗程の大きさの可愛らしい赤い旗を確認する。
「よし。周辺を警戒していてくれ。今からフラッグを回収する」
しかし、彼等がラムセスからの指令に対する変事を返す前に突然後方から飛んできた、ペットボトルの様な物が彼等のど真ん中に着弾し、そのペットボトルの様な物が衝撃で潰れたと思った次の瞬間、その潰れた先から大量のBB弾がスプリンクラーの様に周囲に吹き出した。
「うおおおぉ?!! こ、こいつは……!!?」
《だ、駄目だ!!! 体に浴びちmーー》
《じょ、上半身が動かせない……!! た、助けてくれ!!》
先程までは後片付け感覚で任務を行っていた彼等は突然空からの襲撃者に襲われる事となり、続けて着弾した二発目のペットボトルの様な何かにより四名の回収班は全滅する事となってしまった。
「なっ……何が起こったと言うのだ!!?」
その状況は小山を拠点としていた勝家達からも確認出来ていたのだが、その理由までを特定する事が出来ずにいた。
「山から空気の抜ける様な音がしたかと思えば……旗を取りに向かった者達が一瞬にしてみんなやられてしまうだなんて……!! どういうことなのだこれは……!?」
「か、勝家様!! 迫撃砲です!! 小山に隠れていた彼等の生き残りが、仲間が持っていた小さな大筒を使って回収班を全滅させたのです!!!」
「何じゃ小さな大筒とは?! 大きいのか小さいのかはっきりせんか!!!」
顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりしている勝家は混乱していた。
たった一つの武器で四人もの相手を吹き飛ばす事が出来る迫撃砲の性能も去ることながら、先程まで有った数の優位がいつの間にか赤チーム四:青チーム三と逆転してしまっており。
このままでは自分達まであの迫撃砲によって襲われるであろう危険性が出てきたのである。
「おのれ小賢しい真似を……!! 先程音がした方へ向かうぞ!! 大筒であるならば動きは遅い筈だ!!」
「はっ!! お供致します!!」
その指令を手元に旧日本軍で作られたは良いけどコストと技術力の問題で戦場に配備される事は無かった、アメリカのセミオートライフルに似た幻の【四式自動小銃】を持つ二人の生き残っていた兵士達は従い、早速山頂から移動しようとするのだが……。
「うおぉぉぉぉぉ!!! 我が名は松平家の侍、本多忠勝だぁぁ!!! 撃ち込み、ごめん!!!」
突然背後から叫び声に近い名乗りを挙げて突っ込んできた忠勝に意表を突かれてしまい、勝家は本能的に腰に帯びていた強化プラスチック製の太刀を身体を捻りながら抜き放ち、【MP40短機関銃】を両手に一本づつ構えて突っ込んでくる忠勝に向き直る。
「行けぇぇぇぇぇ!!!」
「その様な玩具でぇ!!!」
二人の動きは同時であった。
山を登ってくる途中で拾ったシャルロッテの【MP40短機関銃】と合わせて二丁の短機関銃が電動モーターにより弾丸が打ち出される軽快な音と共に、まるで吹雪の様な50発近い白いBB弾を次々と勝家の胸目掛けて乱射し。
勝家は上段の構えのまま勢いよく太刀を忠勝の胸目掛けて振り下ろした。
両者が互いの最大火力を出しきるのに掛かった時間は本の一瞬であり、両者は周囲に叫び声と激しい衝突音を響かせてーー
「うぐあっ……!?」「つぅ、出来るではないか……小僧……」
共に己の武器を突きつけあったまま、互いの攻撃を受けた防具のダメージ判定により行動不能となってしまった。
「ちくしょう……わざわざ何時もの癖で飛び込んじまった……」
悔しそうに呟く忠勝の視界は正面で動かなくなった勝家がいて、忠勝がヘルメットの中で顔をあげようとした途端に視線の両側が、まるで蜂の巣をつついた様に【ストトトト】といった様なモーター音が聴こえ出したと同時にBB弾が飛び交い始めた。
それは、頂上決戦の第2幕が開演した音であった。
「良くやってくれた忠勝くん!! 後は任せてくれ!!」
そう言いつつ地面と身体を一体化させる程の匍匐体勢で【三八式歩兵銃】のボルトハンドルを引いて次弾を装填し、次々とBB弾を敵が隠れている茂みへと叩き込んでいるのは忠勝の後方から山頂に上がった渡部であり。
「後は私達に任せておけ!! そらっ!!」
その後方から康政が【B.A.R軽機関銃】を右手だけの方手打ちで敵を牽制しつつ、機関銃の弾を撃ち尽くす前に地面に落ちると半径二メートルにトリモチを発生させるグレネードのピンを口元で豪快に抜いてから、敵がいるであろう地点に放り込む。
「くっ、信長様!!御下がりくだーーのぎゃあ!!」
「猿!!」
すると仲間を庇う為にグレネードの前に仁王立ちになった兵士の一人が全身にトリモチを浴びてしまい、すかさず渡部がヘッドショットを決めて止めを刺そうとするのだが。
「させん!!」
「つうっ!! これでは盾が使えない……!!」
後方で庇われた兵士が射撃を行うために身体を起こそうとしていた渡部の左腕に、一発づつでしか撃てない【三八式歩兵銃】と違って、一度に十発までなら連続して撃つことが出来る【四式自動小銃】のBB弾3発が着弾してしまう。
「渡部殿!?」
「よそ見をしては行けない康政さん!! 彼が狙ってーー」
そう言おうとしていた渡部の目の前で、伏せていた上体を起こして此方を見ていた康政が頭部に二発BB弾を受けて倒れてしまったのは同時であった。
「くっ、康政さん装備を借りるよ!!」
そう言って、片手が動かせなくなってしまったせいで装填する事が出来無くなってしまった【三八式歩兵銃】を地面に置き。
20発の弾丸を連続で撃つことが出来る康政の【B.A.R軽機関銃】を借りる為に渡部は倒れている彼女の元に素早く駆け寄り、直ぐ様空になっていたマガジンを抜いて、彼女の足元に落ちていた新しいマガジンを装着し、手慣れた手つきで装填レバーを引いて初弾を入れる。
「こいつで凌ぐしかないな……!!」
そう呟きながらも銃口を正面に向けた渡部の視線に映った物は、此方にペットボトルロケットの様に煙を吐き出しながら迫ってくる大きな鉄の“蕾”であった。
「パンツァーファウストか?!」
そう言いきった時と渡部が再び地に身体を伏せたのは同時であった。
「ぐっ、何て無茶をする……!!」
「ほう!! これを避けるとは中々に見処のある男と見た!!!」
間一髪【パンツァーファウスト】を避けた渡部であったが、正面から楽しそうに大声をあげて迫ってくる男の存在に気づき背筋に冷や汗が走るのを感じつつ、【B.A.R軽機関銃】を構え直し、残っているトリモチグレネードを確認しながら上体だけを起き上がらせる。
そこには此方に向けて走りながら二発目の【パンツァーファウスト】を発射した敵兵の姿があり、渡部もこれ以上敵兵に近づかれる訳にはいかないので、身体を右に剃らせながらも【B.A.R軽機関銃】の残弾を撃ち尽くす気持ちで相手の胸目掛けて放った。
「おおおっ!!」
「やりおるな!!」
顔の横をスレスレで飛んでいく【パンツァーファウスト】を気にせずに放たれた【B.A.R軽機関銃】のBB弾は敵兵の右足と腹に直撃し、相手兵士が怯むかと思いきや、敵兵はしぶとくもあろうことか勝家が手離し地面に転がしていた【携帯用対空ロケットランチャー・フリーガーファウスト】を手に取ったのである。
(あれは確か一度に9発のロケットを飛ばす事が出来る対空ロケットランチャー……!!)
「吹き飛ぶがいい!!」
「間に合えぇぇぇぇ!!!」
渡部が慌てる暇も無く【フリーガーファウスト】の引き金に指をかけた敵兵がトリガーを握り混むよりも先に渡部はトリモチグレネードを放り投げた。
事前にピンを抜いていたトリモチグレネードはロケットが此方に飛んでくる前に空中で炸裂し、まるで渡部を守る蜘蛛の巣の様に広がった。
「これは……!!」
そこに次々と九発のロケット弾が吸い込まれ、絡み捕られて失速してしまい、纏めて地面に落ちてしまった。
「は、はははは……。こいつはたまげた……」
「満足して頂けましたか、お客様」
思わず呆けてしまった兵士の前に、すかさず渡部が駆け寄って【B.A.R軽機関銃】の銃口を足元に向けつつ正面からしゃがんだ姿勢で向き合う。
「ああ……存分に満足させて貰ったよ……」
そう言って、被っていたヘルメットを脱いだ兵士の姿を見て渡部は驚愕する。
「貴方は……信長様?!」
そこには津島山城で会議をしていると言う情報が巷では流されていた、やりきって爽やかな顔をしている織田信長の姿があった。
「うむ。あいにく正体を伏せねば何も出来ない身分でな……そちの顔も見せてくれ」
「それは……」
「うん? 別に性別を偽っていようが、他国の者であろうがワシは気にせん。ただ強者の顔を見たいのだ」
「……畏まりました」
その大名としての命令を受けた渡部は何処か困惑している様な反応をした後、諦めた様にゆっくりとヘルメットを脱いだ。
「え……」
その何処か少年の時期に何度か見覚えがある青年の顔を見た信長は驚愕の余り、年甲斐もなく言葉を失ってしまった。
「どういう……事なのだ……」
そう。そこに居たのは紛れも無き十年近く昔にこの世を去った筈の燐国の若き大名。
家康の父、松平広忠であったからだ。




