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03-12 初めての異世界ダンジョン②

お待たせしました!

「速く速く! 亮太さん!!」

「ちょちょちょ!! 待って、待ってください綾瀬さん!!」


 今いる異世界より、更にファンタジー寄りな空中に浮かぶ大陸に行けると言う説明を受けた綾瀬は思わず興奮してしまい。亮太の腕を引いて仮想世界に続く扉を潜り抜けていく。


「待ってよ二人とも!」

「迂闊に飛び込むと危険ですよ御二人とも!?」


 そしてその後方をマリナとアルバインが続いて扉を潜り抜けて行く。


 そうした形で四人が降り立った大地は一面に草原が広がっていて、その上を標高の高い山のように白い大小様々な雲が流れていく景色が見る者の度肝を抜く広大な空中平原であり。


 付近には小さな川が流れていて、その澄み切った水の中には真珠の貝の様に虹色に輝くヒレを持つ輝く魚が数匹泳いでいたり。


 その川の周囲に掌サイズの二足歩行の小さな亀達が人間の様に楽しげに話していたりと、明らかに異世界の動物達が暮らしていたりした。


「亮太! 後ろを見て!!」

「こいつは……」


 中でもマリナが歓声をあげる程に亮太達を一番驚かせたのは、自分達の真後ろから50階建てのビルほどの巨大な影を造り出している、天に届くのではないのかと思わせる程の巨大な大木とその周囲を囲うように作られた巨大な宮殿であり。


 その所々木のツタが張り巡らされた白い外壁と、その上を辿って行った先に見えるシメジの様に幾つも別れた居住区の様な赤い屋根の建物、そして宮殿の内部へと続く滑り台の様な木製の巨大な渡橋を見て圧倒される。


「父さんが夢見ていた天空の島は本当にあったんや……」

「色々と危ないセリフですけど、俺も同感です綾瀬さん」


 ある程度興奮に酔いしれた二人は、この世界でも自分達に与えられた力が行使できる事を確認する。


「俺の召喚システムは問題無し。綾瀬さんは大丈夫?」

「ウチも大丈夫やよ! 装備品を格納している空間から、装備一式を問題なく取り出す事が出来たから!!」


 その返事が本当だと言う事を証明するかの様に、綾瀬は一応安全の為に魔導師のローブ一式と四元素の上位魔法を扱う為の杖等の装備を出現させる。


「じゃあ俺も装備を整えるかな」


 それを確認した亮太も身の安全を確保する為に、今まで装備していた厚い活動服と身体の各所を守る固い皮で造られたなんちゃってプロテクターで構成された機動隊の防具では無く。


 きっちりと防弾、防刃を可能とするベストと首周りも守る頑丈な黒いプロテクターと、頑丈な活動服とヘルメットがセットになった警備装備一式《Rank,R》で身を固め。


 武装としては、通常の拳銃弾の倍以上のパワーを持つ44マグナムを西部劇の様なブラウンカラーで、弾丸も15発納められたガンベルトのホルスターに収め。


 メインウェボンとして光学式照準器(ホロサイトタイプ)とサプレッサーを装着し、更に三点バーストを使用する事が出来る様にした89式小銃をスリリングを通して背中に背負い。

 胸には小銃のマガジン6個をベストのヘソに向く形で、左右下斜め気味に装着していて。


 だめ押しとばかりに反射の盾ミラージュを召喚して戦闘体勢を整える。


「よし……これだけあれば何とかなるだろ」

「マスター私も続きます!!」


 その姿を見て気合が入ったアルバインも全身を輝かせ、強力な力を生み出すフルプレートアーマーで身を包み。聖剣カリバード1本とそれを収める鞘を右腰に出現させる。


 その気晴らしに来た筈なのに、戦場に向かう兵士の様に戦闘体勢を整える亮太達に思わず苦笑いしながらマリナも続く。


「そんなに気合を入れなくても大丈夫だとは思うけど。ま、備えあれば憂い無しね」


 そう言ってマリナは淡く赤色に輝く光りを手を身体に日焼け止めを塗るかのように撫でていく。


 するとその撫でて残った光りがマリナの服の上に残り、光りが収まったそこにはマリナが新生ヴァルハァム王国に遊びに行っていた時に綾瀬に造って貰っていた、格闘戦に特化したバトルアーマーが装着されており。


 その装備がどういった物なのかと言うと、主に攻撃に用いる手足と急所である胸に厚いアーマーを備え。頭にはツインテールを括る様に可愛らしい蝶々リボンが付けられていて、それぞれが赤、黒、白を基調とした装備であり。


 その他の服装は白い体操服と赤いブルマ風の軽装となっている。


「うおぉぉぉ!! カッコいいじゃないかマリナ!!! 何時の間にこんな立派な装備を?」

「まっ、まあ色々と向こうで御世話になってね……」

「いやー。亮太さんを守る力が欲しいって、久し振りに子犬の様にせがまれてねー」


 その綾瀬からネタバラシをされたマリナは顔を真っ赤にさせて抗議する。


「ちょ、ちょっと!? 亮太には内緒にしてって言ったじゃない!!」

「ふふっ、だって私が今言わないとずっともじもじしたまま過ごすことになるし、どうにも亮太さんの回りにはかわゆい女の子が増えてきている様だから、先に先手を打っておこうと思ってね?」


 その説明を受けて、思わず亮太もその話の意図が分からずに一瞬ぽかんとしてしまう。


「え……。あっ、マリナがそれだけ俺の事を慕ってくれているって事だね」


 その発言を聴いたマリナはますます顔を真っ赤にさせて、俯いてしまい。

 逆に綾瀬は気の抜けた返事を返した亮太をジト目で睨む。


「……亮太さん。マンガやラノベだったら鈍い主人公は許されるけど、現実だったら失礼だよ? マリナは心から亮太さんの事を慕っている以上の好意を抱いているんだから」

「ーーー!! お母さんそこまでにして……よ……」


 その発言が方耳に入ってきたマリナは飛び上がる様に顔を上げて、綾瀬を止めようとするのだが。ふと視線の先に入ってきた亮太の表情を見て、言葉が途中で出なくなる。


 何故なら、先程の綾瀬の言葉を受けた亮太がしまったと言う様な後悔を張り付けた表情をしている訳でも無く、だからと言って赤面している訳でも無く。ただ、悲しそうな表情を浮かべていたからだった。


「亮……太……?」

「ごめん。俺は……みんなが良く言うように異性と無理矢理恋愛をしたり、付き合う事に抵抗があるんた……。だから、そう言った期待には答えられないと思う」


 その発言を聴いたマリナは、亮太が今までに見た中で一番辛そうにしている表情を見て大きく戸惑い。綾瀬は亮太の思い詰めた表情と発言を聴いて、二人の縁を結ぼうとして迂闊な事をしてしまったと後悔する。


「ごっ、ごめんな亮太さん!! ウチ、亮太さんをバカにしたかった訳や無くて!!」

「マリナの事を心配しての発言何ですよね? 分かってますよ綾瀬さん。これは誰が悪いとかじゃなくて、俺自身の考えなんで」

「マスター……」


 その弱々しく笑みを浮かべる亮太を横から見ていたアルバインは、亮太の発言の理由が全て分かっているのか、同じ様に悲観に暮れた顔で亮太を見つめる。


「俺、子供の頃に女子にずっといじめられていたんだ……。そのトラウマが心の中にずっと残っていて、どうしても女性の事が信じたいと思っても、また裏切られるのでは無いかって怖くて心から信じられないんだ……」


 その発言を聴いて、我慢する事が出来なくなったマリナが震える亮太の元へと駆け寄り、包み込むように抱き締める。


「つっ。マリナ?」

「私達を無理に信じなくて良い! 亮太が心から安心出来る様に私もがんばるから!!」

「……無理して弱い俺に付き合う必要は無いんだよ……マリナ」


 心の中で、こうなることが分かっていたかの様に感情を抑えてスラスラと述べられたその言葉に、マリナは涙目になりながらも顔を左右に三度振ってから、声をあげる。


「亮太一人で思い悩まなくて良いんだよ? 誰にだって、誰かに見せたくない弱い所は持っているんだから……」

「……マリナ、俺は」


 気がつけば亮太は自らの声が恐怖では無く、喜びで震えている事に気づかされる。


 今まで親しい友人に、しかも男友達にしか話す事が無かったトラウマ話を根本原因である女性であるマリナに慰められた事により。

 亮太の心の中で錆びの様にびっしりとこびりついていた反女性的思想が、少しづつではあるが剥がれ落ち始めて行く。


「ありがとう……マリナ……。俺もマリナの事を心から信じたいと思っているよ。ただ……」

「うん。その前にボロボロにされてしまっている心の傷を癒していこう……。大丈夫、私もいるから……」


 先程まで取り乱し、荒波の様になっていた亮太の心の波はマリナのお陰で穏やかになる。


(マスター、良かった……)


 その様子を見てアルバインがホッと胸を撫で下ろす中で、綾瀬はマリナと言う精神安定剤を得て始めて落ち着きを取り戻した亮太の姿を見て、綾瀬はある不安を抱く。


(亮太さんは私達の様に訓練された転生者ではなく。とんでも無い能力を持ってはいるけど、やっぱりごく普通の精神的にも弱い一般人なんやね……)


 そして、綾瀬は結論に行き着く。


(私が単独でこの大陸に越させられたんはそう言った危機的状況に対処する為の訓練であり。逆に一般人である亮太さんがこの大陸に連れてこられたのは、一般人の思いを理解出来る事と肩を並べて強力し会えるリーダーが必要とされていたから……)


 疲弊しきっていたアサツユ村の人々を救い。彼等と共にドン底から一気にアサツユ国を建国し。復興活動をしつつリーダーとして皆を纏めて、新生ヴァルハァム王国と和平を結ぶ功績を生んだ。


 そうした事を綾瀬は考察した結果、今何が亮太と自分達に求められているかを悟る。


(私達の役目は、世界を結ぶ為の架け橋であり。強さでは無く、寧ろ弱き者達の理解者としての活躍が求められているのかもしれない……)


 その様な考察を綾瀬がしているうちに亮太も平常心を取り戻した様で。今は穏やかな表情で、感謝を込める様にマリナの頭を優しく撫でている光景が綾瀬の目に入る。


(これからは亮太さんの事を支え、困難と戦っていく事が私達の使命なのかもね)


 その結論に至った綾瀬は自分の事を心配してくれて、傍に駆け寄って支えてくれたマリナとアルバインに感謝を述べている亮太に歩み寄りながら、思考を対話をする為に切り替えて行く。


「亮太さん、もう大丈夫ですか?」

「すいません綾瀬さん。取り乱してしまい」

「こちらこそ、亮太さんの事を良くも知らずに勝手に話を進めてごめんね」


 その普段は陽気なテンションとは正反対のおしとやかな綾瀬の対応を見て亮太が驚く中で、彼女を良く知るマリナはその様子に違和感を覚えて、じっと見つめる。


(あれは、お母さんが仕事をしている時の態度だ……)


 その違和感の正体を見抜いたマリナであったが、そこに亮太の一声がかかる事で追求するチャンスは失われる。


「変なムードにしてごめんなみんな。じゃあ、折角だから宮殿を探検しに行ってみようか?」


「うん! そうしましょう!! さあさあ、二人共もしっかりと準備をしてね?」

「う、うん」

「はい! 戦闘に関してはお任せください!」


 その亮太の発言を精一杯擁護する綾瀬の言葉に押されて、マリナとアルバインも同行していく。


 そうした形で様々な問題を抱えながらも四人は新たな試練へと立ち向かう為に、宮殿の中へと続いていく渡り橋を通して入って行くこととなる。



 ーーーーー◇ーーーーー



 亮太達が入った宮殿の中は巨大な木の中をくりぬいて造られている事もあり。

 巨大なドーム程の大きさを持つ円形の中には辺りを照らす松明が木の壁に掛けられていて、上を見上げれば体育館程の高さの天井があり。


 その上の階層に向かう為に宮殿の内側には天井まで続く木製の階段が設置されていて。亮太が確認した限りでは合計で30階にまで及ぶ階層が用意されている事を知る事となる。


「こいつは……完全制覇するには骨が折れそうだな」


 モニターに映るこのダンジョンの説明を見た亮太は言葉では辛そうに言いつつも目を輝かせ、口元に笑みを浮かべる。


「そんなにやけ面で言われても、説得力無いわよ。まったく」


 その表情を見て、オーバーアクション気味にやれやれとマリナが肩をすくめ。その亮太の演技に乗っかって行く彼女の様子を見て、綾瀬は口元を押さえて吹き出しそうになる。


「ふふっ。では隊長さん、我々はどうすれば良いでしょうか?」

「うむ。では目標は五階までの攻略を目指すとして。階段を登り、二階から攻略を開始しに行こう!! 」


「「「おおおお!!」」」


 気合いを入れ直し、ギシギシと軋む3人が横に並ぶだけの広さがある二階に続く階段を四人は登って行き。やがて、彼等の目の前に両開きの木製の扉に辿り着く事となる。


「……ゲームでは見馴れた光景だけど、実際に経験して見ると面接に呼ばれた時見たいな緊張が来るな」

「ご安心ください、マスター。私が傍にいる限り、マスターには傷の一つも負わせはしません」

「頼りにしてるよアルバイン。皆も用意は良いかい?」


 その声を受けて、湯気の様な気を全身に身に纏っているマリナと、ラムセスとの海上戦で使用していた4つの魔石が取り付けられた魔方の杖を両手に持った綾瀬が答える。


「何時でも大丈夫よ亮太!! 強くなった私の力を見せてあげるんだから!!!」

「私は大丈夫だけど、張り切り過ぎて燃え尽きない様にねマリナ?」


 3人の賛同を確認した亮太は頷いて会釈をしてから、盾を持っていない左手で扉を開けて行き。亮太達はまばゆい光の中へと突入していく。



 そこには外と同じく膝下まで伸びている広大な草原が広がっており。強いて外と違う所を言えば、ドーム球場程の広さがあるとは言え明らかに人工的な動かない青空が描かれている外壁が周囲を囲んでいると言う事と。


 亮太達から見て、正面に位置する奥の方に上の階へと続く長い階段が見えている事だ。


「あそこまで行けば良い訳か」

「あー……これは草原からモンスターが飛び出して来る感じやね。モンスターボ◯ルは残ってたかな……」

「それ以上は色々とまずいですよ綾瀬さん!!」


 そんなやり取りを綾瀬と亮太がしているのを背後を守っているアルバインが、後ろから微笑ましく見ている中で、正面100m先の草原に先行して索敵に出ていたマリナの右手が空にあげられる。


「マリナが何かを見つけた見たい」

「よし。合流しましょう」


 3人は中腰のまま前で待機しているマリナの元へと近寄り、亮太がまず声をかける。


「何が見えたんだマリナ?」

「亮太達に見えるか分かんないけど、あそこに4体ぐらいの子熊がいるのよ」

「……熊……だって?!」


 そのとんでもない情報を聴いて、慌てて亮太は背中の89式小銃を左手に構え直し。光学式照準器に内臓されているスコープの倍率を4倍にして、マリナが熊がいると言う付近を覗き込む。


 するとそこには確かに、茶色の毛並みを持つヒグマの様な子熊達がくつろいでおり。

 しかも寄りによってその位置は階層のど真ん中と言う、亮太達が何処から通ろうとしても見つかってしまう危険性があった。


「確かヒグマって臆病なツキノワグマと違って好奇心旺盛で、肉食系男子だったよな……」


 スコープから目を離して、隣で目を輝かせている動物好きな綾瀬に小銃ごと手渡してスコープを覗かせる。

 すると綾瀬は興奮した様子で熊達を眺めながら感想を話し出す。


「きゃー! 可愛い!! もふもふしてるよ! もふもふ!!」

「動物好きの綾瀬さんから見て、どうすれば良いと思いますか? やっぱり撃退する必要が……」


 その亮太の言葉を聴いて、アルバインが甲冑の奥で鋭い視線を光らせながら剣に手をかける中で、慌てて綾瀬が止めに入る。


「待って! ヒグマは確かに子供であってもとんでもない力と60キロを越える速度で獲物を狩るのだけど。逆にその好奇心を利用出来れば、私達の思ったルートに誘導出来る筈だよ!」


「好奇心を利用……か……。よーし……」


 そのヒントを貰い亮太はヒグマが好みそうな物は何かを考え、単純な策を用いる。


「確か、この前に購入した農業関係のパックと警備系のパックに良いのがあったっけな」


 そう言って召喚画面を操作しながら呟く亮太は踊るカカシ《Rank,N+》とドックフード一袋《Rank,N》を選択して、熊からギリギリ見える様に、1キロ先の3時の方角に設置する。



 ーーーーー◇ーーーーー



 《ヒィィィヤッホーーーー!!! 田植え中や、土いじりをしているマイブラザー元気してたかーーーい? オレッチはこの通り元気ビンビンさぁ!! って、あれ?》


 メキシコ風のイカしたテンガロンハットとチョビヒゲに色鮮やかなポンチョと言う姿で、陽気に大声をあげながら空から降って来た喋るカカシはある事に気がつく。


 《おやおやおや? 私の陽気なダンスと軽快な話を聴きたくて堪らないブラザー達は何処かな?》


 本来であれば田んぼや畑等で働く人達を盛り上げたり、人の声に怯える害獣達を追い返す事を目的としている彼は、辺り一面草原が広がる景色しか目に写らない事と、人処か動物の気配すらしない状況に戸惑いを感じる。


 《こいつは嫌な予感がビンビンとして来ちまったな……。一先ずは、マイマスターに連絡を入れるか……》


 そう言って彼は召喚された者に使用することが許されている通信手段を用いて、亮太に直接連絡を入れようとするのだが。


 《シット……コールは響いている様だが出ないな……。あっ、切れちまったよ……》


 10コール程鳴り終わった所でコールは一旦切れてしまい。健気なカカシはマスターが気づいていいないのかも知れないと考えて、もう一度コールを送るのだが。


 《トゥルルル……トゥル……ガチャ》


 《おっ! 繋がったか!! ヘイ、マイマスター!! 突然呼び出してすまなかったな!! 実はーー》


 《ただいま、通話に出ることが出来ません。ピーっと言う音の後に、メッセージをどうぞ》


 《ホーリーシッット!!! さっきはちゃんと繋がったのに、何でいきなり留守番ガールがお出迎え何だよ!? アイタッ?!?》


 そんな事をしているうちに突然彼の頭上から、ドシャー!! っと赤茶色の細かい塊が降り始め。


 彼の頭の上に被っているテンガロンハットが重くなって来たのを感じて、慌てて頭を振ったカカシがその目で見たものは、自分の周囲を薪木の様に囲んでいるドッグフードであり。


 彼は答えを得ようと思考に入ろうとするのだが、正面に映る草原を掻き分けて迫ってくる4体の茶色の子熊がまだ距離が300m先にいる為、遠くからは茶色の毛玉の様に映るのだが。


 その毛玉の正体にカカシは思わず言葉を失う。


 《……ワッツ?》


 彼が呆けている内にも熊達は原付バイクよりも早い速度で迫って来る為に、思わずカカシはこの後に自らに訪れるであろう残酷な状況が思い浮かび。悲鳴が漏れる。


 《ヒィィァストップ!! ストッププリーズ!!!》


 だが、カカシの声が野生の彼等が分かる筈も無く。遂にドッグフードがばらまかれている付近にまで熊が来て、3匹の子熊がドッグフードを食べている中で、残る一匹がカカシに飛び掛かる。


 《オオオオォ!!》

 《ビィヤァァァァ?!!》


 もうだめだとカカシが藁の両手で目を隠し、視界が闇の中に沈むのだが何時まで経っても熊達に自らに手をかけない事に気がつき、恐る恐る目をあけて見るとそこには階段を背景に申し訳なさそうに自分の事を見ている亮太達であり。


 思わずカカシはひっくり返った声をあげる。


 《ふうぁ……どういう事なんだいこれは……?》

「すまないカカシさん……。貴方を囮にしてあの熊達を向こうにおびき寄せたんだよ」


 そう言って足が木の棒1本の為に歩く事が出来無いカカシを持ち上げて、先程まで彼が叫んでいた現場が見える様に持ち上げる。


 するとそこではドッグフードに夢中になっている子熊達の姿が映り、あのまま自分がいたならば地面に落ちているドッグフードの様に食べられていたのかと考えてしまい、カカシは心から恐怖する。


 《ホーリーシット……。なるほど、俺は熊を誘き寄せる為にあそこに置かれたミートチップだったわけか……》

「すまないカカシさん。だが貴方が取り乱して叫んでくれたお陰で、この階層にいた他の熊達全てを誘き寄せる事が出来たよ。ありがとう」


 亮太の言う通り、最初は4頭だけと思っていた熊達は実は30頭近く潜んでいた様で。

 今尚空から降り注いでいるドッグフードの山の中に彼等は次々と突っ込んで行き、ドッグフードを貪り食べている悪夢のような光景が広がっていた。


 その様子を見ながら皆は顔を真っ青に染めて熊達に見つからない様、慎重に階段を登りながらカカシにお礼を言いつつ、二階へと挑む事となる。


◇ダンジョンクリアボーナス

・熊呼びの笛《Rank.N》×2

・草原の種袋《Rank.N》×3

・癒しの笛《Rank.R》×1


◇ノーキルボーナス

・子熊《Rank.R》×1

・動物になつかれる指輪《Rank.R++》×2


◇召喚物改造費用

・89式小銃《Rank.SR》→《Rank.SR++》【-30,0000SP】


◇装備購入費用

・サプレッサー【-10,2170SP】

・光学式照準器(ホロサイトタイプ)【-8,0000SP】


◇資金:4800,3420SP-48,2170SP=4752,1250SP

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