実践の次は実戦
この話はちょっと書きにくかったです。
「ひ、酷い目にあったわ・・・」
「すまなかった」
まださっきの残光が目に焼き付いているが、よっぽど良くなった。
まさかあんな事が起きるとは露とも思わなかったよ。
「ねぇさっきのは何? 信じられないくらい密度の濃い魔力を感じたけど」
「そんなにか、試しに体内魔力を使ってみたんだけど」
「・・・は?」
「どうやら俺は体内魔力が凄いあるらしくて、空気中の魔力の代わりに体内魔力を使えるみたいだ」
「・・・・・・はぁ。もうユーキが何しようが驚かないわ」
「なんだよそれ」
フェルは明らかに『呆れた』という目で俺を見ている。
きっと俺がMだったらご褒美だったんだろうな。
フェルがやれやれと首を振っていると、草むらをかき分ける音が聞こえてきた。
「? 誰か来たのか」
「こんな所に? いったい誰かしら?」
いくら街の近くだとは言えここは森の中だ。
来る人間は限られるのだが・・・。
「(ガサガサ)お? フェルじゃないか」
「ドーンさん? こんな所にどうしたの」
「知り合いか、フェル?」
「あ、うん。ドーンさんは☆7の冒険者よ。ギルドで何度もお世話になってるの」
「どうも」
ドーンさんは気さくに挨拶してきたので、俺も返す。
「(☆7の冒険者か。7ってことは『上級の下』か)」
◇◇◇◇◇
ギルドのランクは☆1から10で段階分けされているが、その中でもさらに分類がある。
☆1から3が『下級』ランク。
☆4から6が『中級』ランク。
☆7から9が『上級』ランク。
☆10は規則上あるのだが、ギルド創設以来、誰一人もなったものが居ない『特級』ランクである。
さらに『下級』『中級』『上級』の中で細かく『上・中・下』に分けられる。
級の中で小さい数字が『下』。
真ん中が『中』。
大きい数字が『上』となる。
なのでドーンさんの☆7は『上級の下』なのだ。
◇◇◇◇◇
「ところでフェル。さっきこの辺りで凄い光が見えたんだが、何か心当たりはないか?」
「ドーンさん、さっきの光を見てここに来たの?」
「あぁ、近くの村で依頼を終えて帰る途中でな。それで、何か知らないか?」
「(チラッ)」
「ん? 少年がどうかしたのか?」
フェルはドーンさんに聞かれて俺のことをチラチラ見てきた。
それに気付いたドーンさんは今度は俺にターゲットを絞ったようだ。
「―――え~と・・・」
「悠紀です。本郷悠紀。ユーキと呼んで下さい」
「ユーキか。俺のこともドーンでいいぞ」
「ではフェルと同じくドーンさんで」
「分かった」
挨拶も済ませたところで、俺は自分からさっきのことを説明した。
魔力の練習をしていたこと。
体内魔力を使えること。
そして予想以上に魔力を込めてしまったことなど。
「そうか。まぁ初めてだったなら制御出来ないのも仕方ないさ。それを出来る様にするための練習だからな」
「はい。ありがとうございます」
いや~、ドーンさん良い人だ。
注意と同時にフォローもしてくれるし、何より良い人オーラを醸し出している。
フェルがお世話になってるのもうなずけるな。
「しかし、体内魔力が使えるとはな。さすが全属性の使い手ってところかな」
「あれ? ドーンさん知ってたんですか」
「そりゃあユーキは今やギルドで有名人だからな」
ドーンさんは俺に付いての話しを指折り数えて話していく。
「ガンスを舎弟にしたろ、適性全属性で凄かったり、何より違う世界からやって来たって話題に欠かさないからな。(あとフェルと親密そうだってものあるが、これは黙っておこう)」
「転移のことまで知れ渡ってるんですか。まいったな~、そこまで大事にはしたくなかったんだけど」
俺が地球から神様に連れてこられたって知ってるのは、自警団の3人とミラーさん、フェルだけだと思っていたんだが。
別に隠すつもりもなかったから良いけどな。
けど誰から広まったんだろう?
「あぁ、自警団の団長と副団長が酒場でその話を肴に宴会をしてたからな~」
腕を組んで目を瞑りその時の様子を思い出すドーン
「もうこの街の冒険者連中は大半が知ってるな。まぁみんなたいして気にしてないし『知らない土地からやって来たやつ』くらいにしか思ってないと思うぞ」
「そうですか。それなら良いんですが」
いや、団長達は良くないけどな。
人のことを酒の肴にしやがって・・・・・・俺もこの世界の酒飲んでみたいぞ!
「ユーキ、これからどうする?」
俺とドーンさんの会話が切れるのを待って、フェルが話しかけてきた。
「うん? どうするって魔法の練習するんだろ」
「言ってなかったかしら? さっきの魔力球を出せるようになったなら、もう魔法は使えると見て良いのよ」
「え、そうなのか」
こんなあっさり終わってしまって良いのか?
「あとは魔力に属性を乗せて、どう使いたいかイメージすれば良いのよ」
火炎弾なら火の玉を飛ばしたいとか、そんな風にねとフェルは付け加える。
「へ~・・・・・・ところで属性ってどんなのがあるんだ?」
「そうえば言ってなかったわね。属性は『火・水・土・風・雷・光・闇・無』の八属性があるわ」
「じゃあ俺はその全部が使えるのか・・・わくわくするな!」
「まったく、規格外なんだから。違う世界の人間はみんなこうなのかしら」
フェルは溜息を吐き、俺は苦笑いを持って返す。
「それで、どうするの? ユーキが決めて良いわよ」
「ん~・・・・・・じゃあちょっとだけ練習してから街に戻るか。随分長い間ここに居るし、腹も減ってきたからな。それでいいか?」
ここにいた時間の何割かは『目があぁぁぁぁ!』ってのたうち回っていただけなんだがな!
「えぇ、わかったわ」
「じゃあ俺は先に帰るぞ。村の依頼完了をギルドに報告しに行かないと」
ドーンさんは街へと帰っていった。
帰り際に『無茶はするな』『ケガに気をつけろ』と言っていくのを忘れない。
もう俺の中でドーンさんは、ギルドの頼れるお兄さんポジションになりました!
「じゃあ私はあっちで見てるから、いろいろ試してみて。気付いたことがあったら言ってあげるわ」
「了解だ」
どれ。
手始めにフェルも使ってた『火』の球を作るのから試してみるか!
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「ふぅ。いやー! 魔法楽しかったな!」
「ふふ、そうみたいね。凄く楽しそうにしてたのが端から見ても分かったわよ」
子供のようにはしゃぐ俺を見て、フェルはすこし可笑しそうに笑った。
思わず見とれそうになるが『グウゥゥゥ!』と腹の虫が良い仕事をしてくれる。
「おっきな音ね」
「ははは、さっ! 早く宿に戻って飯食べようぜ。今日のお礼とお詫びに奢るからさ」
「本当! 今更やっぱり無しなんて言っても遅いからねっ」
「大丈夫だよ」
まだまだ神様に貰ったお金は残ってる。
奢るくらいなんてことはない。
「あと、ご飯を食べた後はギルドへ行って依頼を受けましょう。ユーキのランクも上げないといけないから」
「おう、わかった」
ついに俺が冒険者デビューか・・・・・・。
俺、わくわくしてきたぞ!
「ほらー先に行っちゃうわよー」
気付くとフェルは先に行ってしまっていた。
そんなにお腹が空いてたのかな?
俺は小走りにフェルに追いつく。
その足取りはまるでスキップしているかのように軽やかだった。
お読み頂きありがとうございます。
次はいよいよギルドで依頼を受けます!
どんな依頼かなどは作者自身まだ決めていません。
次話もよろしくお願いします^^
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感想を送って下さった方々ありがとうございました。
まだ返事を返しきれない!という程届いてないので、一人一人に返信出来てます。
※誤字修正9/2




