Sid.92 門衛の依頼を受けに行く
妖精を使役している状態の僕じゃないと、倒したモンスターの生命力は得られない。使役って言うと語弊がありそうだ。勝手に懐かれてるだけだし。でも妖精が倒したモンスターの生命力は僕に集まるのか。ソロで行動した方が効率はいいかも。
いずれ考えよう。
疲れ切った二人と少しお疲れ気味のフラウ。元気すぎるフレージア。
疲れを微塵も感じない僕が先導し、出てくるモンスターを倒し神殿を出た。
「じゃあ、道中は弱いのしか出ないんで」
「か弱いあたしを置いてくの?」
「二人に合わせてたらユズが時間オーバーです」
「全員背負えないの?」
無理だって。どうやって三人を背負うのさ。
とにかく適度に休んだら勝手に帰ってもらう。僕はユズを背負い先に町に戻ることに。
「馬車って乗せてもらえないの?」
「冒険者は嫌われてますよ」
「でもほら、女性だし?」
「男女関係無いと思いますよ」
冒険者なんて一括りで嫌われてるのだから。アイナやマリッカにトゥオモさんを助けた僕でも嫌悪されるし。
そう簡単に受け入れるわけがない。散々好き放題暴れたのが冒険者なのだから。
「じゃあ先に戻りますから」
「馬車通らないかなあ」
「乗せてもらえたら乗ればいいと思います」
「そうするね」
ユズを背負い駆け出すとフレージアが頭に乗ってきた。
「飛ばないの?」
「楽だよ」
まあいいや。なんか頭の上が気に入ったみたいだし。
ジョギングペースだと間に合わないかも。ランニングペースで走ると、背中で上下するユズが居て「乗り心地悪いです」だって。贅沢な。
二十四分で町に着き門の前でユズを下ろす。少しだけ時間を縮められた。
「ヒロトさんって体力お化けですね」
「こっちの体だからです」
日本だったらユズを背負ってなんて走れない。背負うだけで精一杯でしょ。
セヴェリさんとトゥオモさんが「その子、怪我でもしたのか」なんて言ってるから、疲労困憊なのと走る体力がないから背負って来た、と言うと。
「普通は背負って走れないぞ」
「まあヒロトだからなあ」
笑ってるし。
ギルドに入るとアイナが「他の人は?」と聞いてくる。
「あとで来ます」
「置いてきたんですか?」
「街道なら危険なモンスターは出ないですから」
「あたしには危険ですよ」
冒険者でもない町の住人には危険だけどね。でも二人は冒険者だし攻撃手段もある。ヴィーラが精霊魔法を使えば、街道のモンスターなんて楽に倒せるでしょ。
フラウだって短剣で対処できるはずだし。
「アイナさんと出ることがあれば僕が守りますよ」
「置いてかないですよね?」
「絶対置いて行きません」
にこにこ笑顔のアイナだ。
とりあえずユズを待機室に連れて行き、レベルの確認とリコールだ。
スタッフにレベル確認をと言うと「少し時間をオーバーしてますね」と言われるけど「ではレベルを確認しましょう」となった。
少しくらいなら大丈夫って言ってたし。
チェックすると「また凄い上昇してますね」と驚いてるし。
「どこに行ってたのですか?」
「神殿です」
「レベル十四の魔法使いを連れて?」
「あとはレベル三十三の仲間ですけど」
ああ、あの二人ですね、と言ってフラウとヴィーラなら神殿攻略も可能だろうと。ただし前衛が居ることが条件だけどね。
「ヒロトさん。二十ですよ!」
「良かったですね」
ランクも上がり四時間枠も取れるようになった。二時間で無理やりな攻略をしなくて済む。
メンバーになった以上は早々にレベルを上げておきたいからね。移動で往復二時間費やしても、攻略で二時間使えるのは大きい。
「ヒロトさん、また次もよろしくです」
「次からは毎日来れません」
「え、そうなんですか?」
「学校とバイトがあるので」
じゃあと言うことで都合の良い日時をあとで、としておいた。
「ヒロトさんはリコールしないんですか?」
「まだ一時間半はありますから」
「どこか行くんですか?」
「モンスター退治を頼まれてるので」
詳しくはあとで、として待機室を出る。
アイナが声を掛けてくるけど時間に限りがある。ここから最速で走って十八分くらいで行けると思う。モンスターを相手にどの程度の時間が掛かるか不明。テューネスからリコールすることになりそうだ。こっちに戻る時間があれば戻るけど。
「また今度話をします」
そう言ってギルドをあとにし門まで走る。
「何か忙しそうだな」
「依頼を受けてるんで」
「依頼?」
「あ、あとで話します」
門を抜け走り出す。現時点で最速がどの程度かわからないけど、とにかく走ると途中でフラウとヴィーラに会った。
「あ、ヒロト」
「また今度」
「え」
二人の間を駆け抜ける。少しだけ振り返ると呆れてるような。
歩いてるってことは馬車が来ないか、乗れなかったかだと思う。次に聞いてみよう。
走ること十二分でテューネスに着く。我ながら早く着いたと思う。時速二十キロくらいか。
門衛に場所を聞かないとならない。向かうと門衛が手を振ってるし。なんか少し打ち解けたかも。
傍まで行くと「モンスター退治だけどな」と切り出してきた。
「場所はどこですか?」
「ああ、ここから五分くらいの場所に」
作業小屋と広大な農場があり、農場の一部が荒らされて困ってるそうで。
何とかして欲しいと頼んできたのは「タウモ」と言う人らしい。他にも共同で管理する人たちから頼まれているそうで。
タウモと言う人を尋ねてくれと。今の時間なら農場に居るそうで。モンスターが出てくると町に逃げ込んでくる。逃げ込んでこないから農場に居るはずだそうだ。
「行ってきます」
「頼んだぞ」
言われた場所に向かうと広大な農場がある。小麦畑だろうか。他には野菜を育てているようで。
見回すと人影が疎らに見える。
「タウモさんって方は居ますか!」
農場に踏み込まず外側から声を掛けてみると、顔を上げる人が数人居てこっちを見た。
その内の一人が向かって来て近くまで来ると「なんだ、冒険者か」と疲れた表情を見せる。
「あの、門衛の人に頼まれてモンスター退治に」
「は?」
「モンスターに荒らされて困ってると聞いたので」
驚いてるなあ。まさか冒険者が引き受けると思ってなかったんだろう。
手助けしたいからモンスターの出現場所を、と聞くと少し離れた場所の森を指す。
これって森に生息する熊が出てくるのと同じかも。どんなモンスターなのか聞くと「ブラッツォ・アルコーダ」と言う。
四本腕の熊だとか。こっちの世界でも熊が現れるんだ。違うのは腕が四本。何でこの世界のモンスターって腕だの足の数が多いんだろう。
「じゃあ森に入って確認してきます」
「本当に退治するのか?」
「見つけ次第退治します」
呆けた感じで見送るタウモさんだ。
森に向かい足を踏み入れると様々な気配を感じる。熊はどこだろう。周囲と足元に注意しながら進むと後方から迫る何か。コバロルムだ。振り返りざま殴ると弾け飛ぶ。
こんなのは敵じゃない。
注意深く進むと蠢く黒い何か。そして対峙することに。
「熊……」
牙を剥き四本の腕を上げ威嚇してるけど、蛙化の魔法を使うとヒキガエルになった。
森に出てくるモンスターだと相手にならない。
そう言えば何体出現するのか聞いてなかった。仕方ない。探してみよう。
暫し森の中をうろうろすると、纏まった数の何かが向かって来るようで。地面を踏み鳴らす音からは重量級の何か。こっちに向かって来てる。
足を止め向かって来る存在を確認すると、さっきの熊より巨大な熊が八頭。
また数で勝負しようとしてくるのか。
近付く熊の団体だけど蛙化の魔法を放つと、蛙の鳴き声だけになった。
全部潰し魔結晶を拾い集めポーチに収納。まだ居そうな気がする。




