表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/114

Sid.90 女子三人居ると口数多し

 夏休みも残り僅か。大学が始まれば毎日は通えなくなる。週に一回か良くて二回。

 そして今日はフラウとヴィーラと三人で探索予定だった。


「この子は?」

「ユズです。ヒロトさんに鍛えてもらって仲間に入れてもらうんです」

「それと、ヒロトの頭の上に居るのは?」

「可憐な妖精、フレージアだよ」


 勝手に自己紹介してくれるから手間は省けるけど。ユズはお構いなしに混ざってくるし、フレージアは僕の付属品みたいなものだし。

 フラウもヴィーラも僕が良ければ何も言わない、だそうで。あとでマサが復帰した際には、きちんと説明しておいてと言われた。


「えっと、ユズだっけ。レベルは?」

「十四です」

「低い」

「でも大丈夫です。ヒロトさんが居るんですよ」


 確かに、と言う二人だ。


「それでですね、今日は神殿に向かいたいと思います」

「神殿?」

「神殿って」

「ユズのレベルを一気に二十以上にしたいので」


 僕が死にそうになった場所だけど、今の僕なら安全は確保できると思う。油断は禁物だけどね。

 二人はそれで良いと言う。ユズは「何があっても守ってくださいね」だそうだ。


「それでですね」


 ユズを正式なメンバーにしたい、と言うと「ヒロトの好み?」とか「浮気性なんだね」と言われるけど断じて違う。

 魔法使いだから育てれば戦力として申し分ない。元より募集していたのだから、ユズを鍛えてメンバーにすればいいと言うと。


「冗談だってば」

「真に受けなくても」


 真顔で冗談を言うんだ。

 とりあえずギルドで申請しタグにユズの名を刻んでもらう。これで誰が倒しても生命力を分け与えられる。無理にユズが戦う必要もない。神殿だとユズは戦力外だろうし。

 そしてレベル六十でアデプトと知る二人だけど、頭を抱え「ヒロト君って」とか「ちょっと見ない間に」って呆れてる。

 アイナもまた「ヒロトさん。全冒険者でトップですよ」と驚きを隠さない。強くなったからと言って無理はしないで、とも言われた。


「ヒロトさん、魔法を覚えられますよ」

「あ、そうでした」

「ガチャを回してください」


 僕が覚える魔法はハズレと思っても、実は使える魔法だったりする。工夫次第で発展させられるし、レベル上昇で威力もマシマシになるし。

 カウンターの上にガチャが用意され、把手を持って回すと黒い玉が出た。


「当たりかもしれませんよ」

「そうですか?」


 黒い玉を手に取り飲み込むと何の魔法か理解できる。


「コントラクフーンって魔法です」

「どんな効果があるの?」

「収縮みたいですね」

「物を小さくするの?」


 実際に試してみないと効果はわからない。あとで神殿で試すことに。

 ギルドを出るとフラウとヴィーラが僕をじっと見てる。


「一見すると頼りなさそうなのに」

「実は一番頼れる仲間だもんね」

「ヒロトは強いんだよぉ」

「そうね。そこは間違いないけど」


 もっと自信を持って堂々とすればいいのに、と言われるけど。性格的に堂々ってのは無理かもしれない。

 ただ、この世界に於いては自信を持てる。日本だと全然自信を持てないけど。何も実績が無いからだ。ただの学生。勉強以外に取り柄もない。自信なんて持てるわけないよね。


「ねえ、神殿って遠かったよね」

「そうですね。歩くと一時間くらいです」

「あたしたちはいいけど」

「ユズは時間的に厳しくない?」


 走ろう。


「ジョギングで向かえば三十分ですよ」

「ヒロト」

「ヒロト君」


 後衛職を走らせるのかと言ってるけど、時短を目論むなら走るしかないでしょ。

 馬車なんて乗せてもらえないんだから。そう言うと。


「相変わらず鬼教官です」

「いつの間にか脳筋」

「体力バカになっちゃった」


 言いたい放題だ。でもレベルが上がれば体力も上がるはず。それは前衛や後衛を問わずだろうし。

 まずは走ってみて無理なら歩く、としてジョギングペースで走ることに。

 ただ、僕のペースと三人のペースは全く違った。


「ねえ速いって」

「ヒロト君、ほんとに脳筋」

「無理ですぅ」


 ゼイゼイ言ってる三人を見て指さして笑うフレージアが居る。それを見て「空飛ぶなんてずるい」と言うユズだ。

 女子ばっかりだと口数が多くて先へ進まないなあ。

 結局、三十分で辿り着くのは無理だった。掛かった時間は四十五分。往復するとユズが使える時間は僅か三十分しかない。これはあれだ、帰りは僕がユズを背負って走るしかない。

 一番足が遅いのがユズだったから。


「あの、帰りなんですけど」

「走りたくない」

「歩きでいいでしょ」

「僕がユズさんを背負って先に帰ります」


 二人はゆっくり歩いて戻ってくればいい。時間的に余裕があるのだから。

 それでいい、となった。


 神殿に入ると本来は強いモンスターだろうけど、今の僕にとっては脅威にならない。それでも後衛職にとっては脅威になる。とにかく僕が前に立ち食い止める。

 あとは後方から魔法や精霊を使い倒してもらう。

 でもユズの魔法はやっぱりレベル不足で通じなかった。


「今日は居るだけでいいです」

「なんかつまんないです」

「ここはレベル三十以上で来る場所なんで」


 どう足掻いても敵う相手じゃない。僕の場合はなぜか通じたけど。たぶん加護のお陰だったんだろう。加護の無い三人だとレベル相応の戦闘になる。

 ヴィーラが主に攻撃を担い新しく覚えた精霊、アストラピを使うけど威力不足は否めないのか。


「なかなか一発で仕留められない」

「しつこく放ってください」

「ねえねえ、あたしが動き止めてあげるよ」


 安全策としてフレージアに頼ることに。


「すごっ」

「触っても動かないんだ」


 感心する二人だ。


「あたしも攻撃してみる」


 的が動かないなら何度でも魔法を放てば、もしかしたら倒せるのではと言うユズだ。

 まあ好きなだけ試してみるといいと思う。それで倒せれば良しだし、倒せなくてもヴィーラが倒せば済む。僕は周囲を警戒し三人が攻撃を受けないようにする。


「ヒロトが倒しちゃえば?」


 フレージアがそう言うと「新しい魔法覚えたよね」と使って見せてと三人から言われた。

 まあいいけど、もう少し強い相手じゃないと。

 扉を開けると魔法攻撃を放つ奴が居るから、そこで一発試してみることに。


「じゃあ開けますよ」


 今回はユズが居るから少し慎重に行動する。以前来た時は遠慮なく開け放ったけどね。万が一敵の攻撃を食らうとユズだと死にかねない。

 三人には扉から離れてもらい開けると、早々に魔法が飛んで来る。

 僕が直接魔法を受け止めるけど、何ら痛痒を与えるものでもなかった。もう、このレベルのモンスターの攻撃は通じないんだよ。魔法防御力がめちゃ高くなってる。

 じゃあ新しく得た魔法を使ってみよう。


「コントラクフーン」


 黒い小さな点がモンスターの体の中心に発生し、空間ごとモンスターが歪むと黒い点に吸い込まれるように消えた。黒い点もモンスターを吸い込み終えると消える。

 何これ。

 何に例えるのが適切なのか。ブラックホール?


「消えたの?」

「消えました」

「音も無かった」

「そうですね」


 僕より圧倒的に格下の相手だから威力がわからない。

 奥に居る巨大な石像相手でも通じれば、そこそこ使える魔法なんだろう。


「先を急ぎますよ」

「ヒロトつよぉい」

「レベル差がありすぎるだけ」

「でもつよぉい」


 僕の頭の上で飛び回るフレージアが居て「次元が違う」と言う三人が続く。

 そして巨大石像の居る部屋に入ると、その大きさに圧倒されるユズだ。


「ヒロトさん。あんなの相手にするんですか?」

「今なら余裕だと思います」


 前にボコボコにされたけどね。


「コントラクフーン!」


 唱えると同じエフェクトが発生し瞬時に空間ごと歪み、成す術もなく巨大な石像は消えてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ