Sid.61 行く先々で説明が必要に
洞窟に向かうと守衛が居たと思ったんだけど居ない。こんな時間から洞窟攻略する人が居ないのか、この時間帯に入る奴なんて相手にしないだけか。
たぶん後者だとは思うけど。
開放された洞窟の入り口。入って進むと扉があり押し開けて歩みを進める。
暗視の魔法を使い視界を確保。スタッフから借りたマップを手にボス部屋を目指す。
途中幾度かモンスターと遭遇するけど、ジーベンスで片っ端から蹴散らす。
四人で進んだ時の倍以上のスピードでボス部屋に辿り着いた。まあ、居るんだよね、ボス。
一度倒してるから同じくジーベンスで倒す。秒で倒されるボスって。
倒したら魔結晶を拾い何か残っていないか探すけど。
見なきゃ良かった。
ぐちゃぐちゃになった冒険者の体が散乱してるし。その中に僕の体もあるんだろう。マサやフラウにヴィーラらしきものも。でも全部押し潰されたようで、原形を留めている体は存在しない。
僕が倒したモルディストの連中の体もあるようだ。装備はと思って探すと盾は分かりやすい。そのまま残ってた。
剣も残ってるし杖もある。
モンスターが体を破壊する際に中身をぶちまけたんだろう。貨幣が散乱していて拾い集めることに。勿体無いし。
さて、モルディストの連中が装備してたものだけど。
「要らないか」
犯罪者集団の装備なんて縁起が悪い。
でも貨幣だけは集めておこう。
損失を被ってるから損害賠償金として。額で見れば大したことは無いけどね。僕がソロで攻略した方が稼げるし。
攻略時に倒したモンスターの魔結晶は無かった。宝石みたいなものだから見つけやすいと思ったけど、どこにも見当たらないし。もしかして消えちゃうとか。
あとで聞いてみよう。
回収が済むけど荷物が増えた。マサの盾が思っていた以上にかさばる。剣は腰に差しておけばいいけど盾は邪魔だなあ。でも回収しておきたいし。
仕方ない。片手が塞がるけど引き摺りながら持って行くことに。雑な扱いなのは勘弁して。所詮は魔法剣士だし。盾なんて使えないのだから。
ボス部屋を出てマップを確認する際には、都度盾を置いて進行方向をチェック。
ある程度頭に入れたら突き進む。途中で遭遇するモンスターは敵じゃない。来た時と同じように蹴散らして洞窟を出ると、守衛が居て「おい、まさか夜通し攻略してたのか?」なんて言われた。
「いえ、朝一で装備品の回収に来てたんです」
暫し間を置いて「昨日出て来なかっただろ」と言われる。
「僕らと行動してた冒険者、見てますよね」
「ああ、六人居たな。そのあと七人来た」
「冒険者同士戦闘になって全員死んでます」
呆気に取られた感じで僕を見てるけど「復活したのか? 全員」と聞かれ、僕だけ先にと言っておいた。
モルディストの連中は二度とこの世界に来ないことも伝える。
「来ないって?」
「正確には来れなくなってます」
「なんでだ?」
「殺人グループだったんで」
驚いているけど「話には聞いてる」そうで。プレイヤー同士で殺し合いをしている。自分たちから見れば好きなだけやれ、と思っていたそうだ。この世界で好き勝手して現地の住人を蔑み、場合によっては殺害までしてしまう。お咎めなしなのも納得が行かなかった。
だから死んでも復活しないなら、その分、平和になるから喜ばしいとさえ思うそうだ。
やっぱり憎まれてるよね。
「なんか申し訳ないです」
「は?」
「僕が謝罪しても意味は無いんですけど、でも同じプレイヤーなので」
頭を下げると「そう言えば、一人だけ毛色の違う奴が居るって」と言って「あんたが噂の奴か?」と問われた。
「確か、神の加護を授かった奴が居るって聞いたぞ」
町でも徐々に広まっていて、神が認めた存在が居るのだと。教会のシスターと懇意にしていてギルドの娘とも懇意にしてる。
そして何より他を圧倒する強さを誇り、少々色ボケ気味ではあっても優しい奴だ、と噂になっているとかで。
「トゥオモを助けたって聞いたが」
「絡まれていたので」
「そうか。あんたが」
神の加護持ちなら住人を蔑まず、溶け込む努力をしてきたんだろうと。
「まあ、危険な奴らばかりと思ってたが」
神が認めた存在であれば自分たちの仲間だと言ってくれた。
「クソみたいな奴らを退治してくれたんだろ?」
「まあ、結果的に」
これからも住人のために、無法者を排除してくれると助かるそうだ。
町へ戻る際、機嫌良さそうに手を振り見送ってくれた守衛だった。
僕の噂は確実に広がっている。そして、この世界に神は居る。認められた存在だからこそ受け入れてくれるんだろう。
傍若無人な冒険者を排除してくれると期待してそうな。あんまり絡みたくないんだけどね。降り掛かる火の粉であれば払うけど。
町に戻るとセヴェリさんとトゥオモさんが居た。
「ヒロトか?」
「まさか夜通し?」
まあそうなるよね。
ここでも顛末を話すと憤慨しながらも「復活できて良かったな」と言ってくれる。
「他の仲間は?」
「後日来ると思います」
話が済むと「期待してるぞ」と言われた。ここでもだ。みんな本当に辟易してるんだろうな。
運営も本格的に取り組まないと、住人との軋轢が増すばかりだと思う。今後どうするのかプレイヤーでしかない僕は関与できないけど。でも現状のままであれば神が審判を下すんだろう。
まずはギルドに行き回収した装備品を預けるんだけど。
アイナが泣きそうな表情で「心配したんですよ」とカウンターから出てきて抱き着いてくるし。
「何があったんですか?」
まあ聞かれるよね。ここでも説明すると、許せない行為だと怒りを見せるも、自分には何もできないことが悔しいそうで。
「あたしに力があれば」
「アイナさんは笑顔で出迎えてくれれば」
「でも、いつもヒロトさんだけ」
「力を得た責務だと思ってます」
勝手に絡んでくるから対処してるだけだけどね。返り討ちに遭うと浸透すれば、徐々に減ってくるとは思うけど。
でも今回は下手打った。まだまだ実力不足だ。
「あの、教会にも行きたいんで」
「マリッカですか」
気落ちした表情を見せるけど、すぐ笑顔を見せ「最後にあたしのところに来てくれればいいです」だって。
今はマリッカの相手も適度にして、人の体を授かったら自分の元へ来てくれると期待してるようだ。結論は出てないけど、これでマリッカを選んだらどうなるんだろ。
怖い。
ギルドをあとにし教会へ向かう。
白い尖塔が立つ教会。マリッカが敷地内の掃除をしてるようだ。傍に行くと気付いて「ヒロトさん。おはようございます」と笑顔であいさつしてきた。
「あ、おはようございます」
「今日は早いのですね」
「えっと、朝からいろいろありまして」
掃除はすぐ済むから礼拝堂で待っていて欲しいそうだ。
礼拝堂に入り祭壇まで進み祈りを捧げておく。それと以前マリッカが言っていたことが気になる。
施設を通さず死ぬと魂の色や形が歪になる。僕もそうなっているのかどうか。
なっていたら懺悔しないとならない。懺悔って何をすればいいんだろう。
祈りを捧げ終え神様であろう像を見つめる。カトリックとプロテスタントの間くらいなのか。像が人型ではないから偶像崇拝とまでは言い難い。あくまでシンボルかもしれない。
「ヒロトさん」
見つめているとマリッカが声を掛けてきた。
疑問の解消をしておきたい。
「あの、マリッカさん」
「なんですか?」
「僕の魂ですけど」
「おかしなところはありませんよ」
無いの?
「えっと、実は」
かくかくしかじか、ここでもまた同じ内容を説明する。
話し終えると抱き締められた。
「あの、だ、大丈夫なんですか?」
「問題ありません。綺麗な円形で淡い白色です」




