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7-8.城下町造成

挿絵(By みてみん)


でかい家が建ってしまったので、うちもお手伝いさんを雇うことにした。

人手は足りてるのだが”地域貢献”をしておかないとまずいと思ったのだ。


「それは良い判断だ。富を持つものは持たぬものに分配する義務がある」

リーディアが言う。


その言葉を聞いて俺は”おめーが金持ってるだけで、うちは金持ちじゃねーよ!!”と思った。


俺は恐れていることがある。

「金はそんなに無いけど、前に村追い出されたことがあるから」と言うと

エスティアとリナが頷いた。



俺がこの世界に来て、一番初めに住んでた村で、”冒険者が男と住むなど不相応だ”と言われて、追い出されたことがある。

正確には追い出されたのではなく”男と一緒に住むな”と言うので、3人で村を出たのだが。

俺を捨ててくれればそれで済んだのに、エスティアとリナは、村より俺を選んでくれた。


その判断は賢明なものでは無いと俺は思っている。だが、その判断をしたエスティアとリナには感謝しているのだ。

同じ過ちは繰り返さない。追い出されないように日頃から注意した方が良い。

俺はあの経験からそれを学んだのだ。


俺はこの世界で生まれ育っていないので、ここでの常識はわからないことが多い。

それ以前に、子供を作ると男が早死にするという、全く想定外の世界なのだ。


俺の世界では、夫婦で子供を育てる。

ここでは父親は早くに死ぬので、労働力としてあてにされていないのだ。


だから、この世界では貧乏人には男は回ってこない。

共働きとかできないので、妻の方に、安定した収入や十分な資産が無いと子供は持てない。

だから、それを満たせない人たちは夫を持てない。


その条件を満たしていない貧乏人が男と住むんじゃないと言うのだ。

確かに、俺の世界にも経済格差はあった。だが、経済的な理由で貧乏人は男女同居するななどとは言われなかった。

だが、ここでは違うのだ。貧乏人は男女で同居することが許されない。

だから、分相応に金使わないと駄目なのだろう。


今の俺は”恥ずかしがり屋のトイレの神様”で、俺が居ないとトイレはきれいにならないので、追い出される可能性は低そうだが、一応、地域住民とのつながりはあった方が良い。


……………………


小学生高学年か中学1、2年生くらいの女の子を何人か雇って、交代で来てもらうことになった。

この世界では、中学卒業するような歳になるともう大人扱いなのだ。

俺にはエスティア達も、まだ子供に思えるんだが。


まあ、成人年齢が20歳なのは、俺の国のローカルルールで、世界水準に合わせて18歳に引き下げられるのだが。そう考えると、エスティア達は子供って程でもないか。


ずいぶんたくさん集まった。

決して高給ではない。給料はやたら安い。

これが相場だが、リーディアが高価な菓子を与えるので、このあたりの女の子の間では、うちの手伝いは憧れの仕事なのだそうだ。

よく、そんなに、このくらいの年頃の女の子ばかり集めてきたなと思ったら、予想外に人口が増えていた。

このあたりは、元々はあまり人がいなかったので、そんな狭い年齢制限かけたら人は集まらないと思ったのだ。

学校も近いところにはなくて、あまり通ってる子は居なったのだが、移住者が凄い勢いで増えたので、早くも学校作るとか言っていた。


学校ができる。


キノセ村に学校は無かった。通ってる子も居なかったと思う。

俺は、この世界の女の子は、学校に行かないものだと思っていた。


※男子学校は、教育施設ではなく保護施設です。

 ただし、良い成績を出すと貴族の目に留まる可能性が高くなるので、それを目指す子も居ます


ここの領主のマイト候は、勇者とか神とか、俺がここに住んでるとかそういうことにはまったく興味無い人なので助かってるが、ここに学校作ることにも興味がない。

首都周辺にしか興味がない人なのだ。


なので、資金はトート森とダルガノードから出る。

すると、やっぱり学校も2つできるのだ。


ただ、規模は俺が思ってたのとだいぶ違っていた。


確かに、場所を聞いた時、そんな場所に学校作るのかと不思議に思った。

学校作るほどのスペースが無いと思ったのだ。


俺のイメージだと、学校はだいたい、利用価値の少ない辺鄙なところに作る。

沼地を干拓したところとか、古い墓地の跡とか。

そういうところでもないと、場所が取れないからだ。


でも、そんなに離れていないところに学校を作るというのだ。

そんなスペース有るか?と思っていたのだが、学校は、俺が想像してたのと規模が全然違ってた。

田舎の学校……ドクタースランプのペンギン村、村立中学校みたいなものを想像していたのだが、そういう規模では無かった。


町会館かよ!!


まあ、それでも、キノセ村には無かった学校が2つもできたのだ。

この世界基準で言ったら、むしろ学園都市って感じだろう。


若者向けの物語の舞台になってもおかしくない!

その場合、俺が主人公ということは無いはずだ。


この2つの学校に通う生徒のいずれかが主人公になるはずだ。

なので、俺的には学校ができることは悪いことだとは思わない。


学校はダルガノード側のは豪華でトート森のは質素だ。

これは地域性の差で、基本的にダルガノードは派手好き、トート森は質素好きなのだ。

堤防は張り合いになったが、学校は張り合いにならなかった。習う内容もだいぶ違う。


なので、マイト候領内でありながら、習うのは他国の学校という妙な土地になってしまった。


……………………


ぬぅ。


それはそうと、学校出来たら俺が挨拶させられた。

俺は偉い人じゃないけど、話しをしないといけないらしい。

不公平になると揉めるので、2つとも行ったが、”トート森”の方が話が長かったとか言って争いになった。

そんなの仕方無いだろ! だって俺、”トート森”には住んでたから、エピソード多いんだよ。

話して良いなら、ダルガンイストの軍に襲われたこと話しても良いんだけど、(ダルガンイストと俺は戦っていないことになってるから)たぶん、子供たちが大混乱すると思うのだ。


でも、歴史の闇というものが、凄く納得できた。

自国の都合の悪いことを、わざわざ歴史の教科書に書かないから無かったことになる。


ページ数的に、無駄なことは書けないのかもしれない。1ページあたりの文字数も少ないし。


学校は読み書きと金勘定と、子供たちの役には立たない嘘歴史の授業は標準で付いてくるようだ。

王様が居ない王国について、特に説明は無いようだ。


俺は凄く興味があったのだが、聞いちゃいけない約束とかそんなやつだろうか?


========


学校にもリーディアが頻繁に演説しに行くものだから、なんか子供がいっぱいうちに訪れてきて困る。

しかも、リーディアは子供に配る用のそんなに高くない菓子大量に用意してやがる。

餌付けして何する気だよ!まったく。


「いすれ兵は必要になるからな」とか言いだしたので、その計画は辞めさせた。

でも、菓子は配り続けてる。絶対やるなコイツはと思った。

並の兵100人より俺の方が強いんだから、意味無いと思うのだ。


そんな感じで、疑惑の目で見てるとリーディアが言った。


「あなたは、いずれ居なくなる。

 あなたは、あなたが居なくなった後についても、もう少し考えるべきだ」


ああ……そうか。確かにそうだ。俺はたぶんこいつらよりずっと先に死ぬ。

伝承では勇者……つまりリーディアとの間に子が生まれる。

そこまで考えてのことか……ちょっとだけ見直したが、ババっと予備動作付きでカッコイイポーズをとったので、俺のリーディアに対する評価は猛烈な勢いで落ちた。


なんて言うか、”それさえ無ければ尊敬できるおっさんが、何故かおやじギャグを言わないと気が済まない”ように、コイツも変なウザいポーズを取らないと気が済まないのだ。

まあ、この挙動にはファンがいっぱいいるようだが、俺はとっても萎えるのだ。


========


元々ここは、隠れるために選んだ場所なので、元から有った町から遠い。

けっこう不便だったのだが、町には不思議なほど、俺の信者みたいなのが居なくて助かる。

見慣れてるので巨大な老人とか言って、大騒ぎにはならないし、変に寄ってくるのもいない。

なので、俺はこの町は結構気に入っている。


なんか、以前のように、産廃扱いされると安心するのだ。

”神様”とか言われると動物園のパンダになった気がするのだ。

日頃神様扱いされてると、産廃扱いが心地良い。

今ではけっこうでかい家に住んでるのに、ここでは貧乏人扱いされる。


リナは苦笑いだ。


ただ、実際割と貧乏だった。

一応、菓子以外は、リーディアには頼らず自活してるので、若干裕福な冒険者ってところで、あんまり金はない。

以前のようにパンツ買えなくて困ることは無くなったが、やはり服は今でも高価なものに感じる。


========


新築した拠点で過ごしていて、ちょっと気になることがあった。

どうも、神殿跡地のストーンサークルを中心とした”キラキラ”の有効半径が少しずつ広がってるのだ。

ストーンサークルではなく、俺のキラキラ半径が広がってるのかもしれない。

しばらく前にギリギリ届く位置にあったトイレが余裕になって、1mくらい離れたところもキラキラが効くようになってきた。俺は、この力が強くなるほど神になってくような気がして嫌なのだ。


しかも俺が凹むと、遠くのトイレから順にキラキラが効かなくなるので、住民に気づかれる。


エスティアの、わけのわからないお説教で俺が萎えてると、変な祭りやら儀式が始まるので、エスティアがあまり理不尽なお説教しなくなったのは凄く嬉しい。


住民にも、キラキラが弱まるのはエスティアのせいだってバレてて、エスティアを止めに来るのだ。

なんか羊羹(ようかん)みたいな食い物持って。


こないだはエスティアの怒りを静めるための、おっぱい祭りが始まってびっくりした。

リーディアの巨乳が引き金で怒ってるのに、おっぱい祭りしてどうするんだよ!と思ったけど、俺がエスティアのおっぱいで倒れる祭りだった。


公開死刑かと思った。俺はもうここに居るのが嫌になった。


========


俺は、勇者陣営のダルガノードと、大鎧陣営のトート森の両方に定期的に通っている。

この世界は女が働くので、普通だったら、すでに死んでる歳の俺みたいな男が対象の仕事がない。

なので、変な仕事で小銭を稼いでいる。


正式には、俺が貰っているのは、賃金じゃなくてお布施なのだ。


テーラが、お母さんとお姉さんに、たまには会いたいというので、家の周りを回る簡単な仕事のついでに、シートとルルのところに行った。


無言でドア開けて家に入ると、シートとルルが2人とも居た。

シートはテーラの顔を見ると「あら、テーラ、元気にしてた?」言った。

するとテーラは「トルテラは小さいおっぱいが好きなの」と答えた。


「は?」「え?」俺とルルは驚いたが、シートは何事も無いように「元気そうね」と言った。


それで会話成り立ってるのか?


「小さいおっぱいって何?」とルルが聞く。


とりあえず「そう言う訳じゃないんだが」と答える。

よく分からないが、俺が貧乳好きだとテーラはそう言い張っているのだ。


ところが、ここで驚きの新事実が発覚した。

「お母さんが言ってた」とテーラが言ったのだ。


シートは「そうね」と答えた。


は? なんでシートが、そんなことと思ったが、胸が小さな娘を励ましたのかな?と思った。


ルルが深刻な顔をしてた。

ルルはキャゼリアの娘なので、胸はちょっと大きめなのだ。

なんでこいつらは、そんな一言をそんなに深刻に、受け止めるかなと思った。

口には出さなかったが、俺はルルくらいのがちょうど良いと思う。


俺は乳が重力に負けると凄く悲しくなるので、重力に負けない程度のやつが良いと思うのだ。

まあ、年齢的に娘としか思えないのだが。


「良かったのか、あんな大金」とシートに言うと「軍に見つかるとまずいから、あのお金持って遠くに逃げろって言ったのに」と言われた。


俺は逃げたかったけど、キングボンビーみたいな疫病神が俺に憑いてて軍に喧嘩売ったんだよ!!!と思った。


シートに最後に会ったのは、巨人標本届に旅立つ前だったので、金の話をしてなかったのだ。

巨人標本……と言っても、ただの巨人の焼死体だが、それに小金貨100枚と言う凄い値が付いたのだ。

値を付けたのはキャゼリアで、出来レースなのだが。


「逃走資金は不要になったから返した方が良いか?」と聞いてみる。既に使っちゃったのだが。

「まだなの?」とシートが言うと、

「トルテラは私の夫」とテーラが言った。

「え? トルテラってテリシア(テーラ)の夫なの?」とルルが言った。


俺、”夫違うし”と思ったけど黙ってた。


「じゃあ、返す必要無いじゃない。あなた達のお金でしょ?」とシートが言うと、

ルルが「え?私も一緒に運んだんだけど」と言う。

すると、「そうね。じゃあ、ルルも一緒で良いんじゃない?」とシートが言った。


”一緒で良いんじゃない”じゃねーよ!!

なんで、そんな簡単に話が進むんだよ!!


ここはちゃんと話しておく必要がある。

「俺、そもそも夫の意味とか基準がよく分かんないんだけど」


するとシートが答える。

「女と一緒に暮らす男のことでしょ」


それじゃ、俺、こいつらと一緒に暮らすとまずいじゃないか。

俺の居た世界では、同居人イコール夫婦とは限らなかった。


「前にも言ったけど、歳が釣り合ってないだろ」


「そんなのかまわないじゃない。どうせ子供できたら死ぬんでしょ。一緒よ」


相変わらず酷いこと言いやがる……と思ったが、この世界では普通のことなのかもしれない。


「勇者が子供産むから、勇者以外に妻が居ても俺死んじゃうんじゃないか?」と言ってみた。


すると、もちろん想像通りの答えが返ってきた。

「勇者と子供作る前にテーラと子供作んなさい」


「俺、子供の作り方知らないし」


「年寄りのくせに中身はお子ちゃまね。

 男と女が一緒にいれば子供ができるの」


「いや、それだと女増えると俺の死期が早まりそうなんだけど」


「子供作って死ぬのが男ってもんでしょ?」


いや、俺の世界の男は、そういうんじゃないし。


ルルが真剣な顔して引っ越し準備はじめたので逃げてきた。


……………………


「なんで俺が小さいの(貧乳)好きなんだろう?」と言うと、

テーラは「だって、お母さんもトルテラが来るの待ってたんだよ」と言った。


意味が分からない。シートも貧乳だが、何か関係あるのだろうか?


たぶん、俺は子を作ったら死んでしまうと思う。でも、俺は竜の子も持つらしい。


俺は”竜の国”にはいつ行くのだろう?

イグニスの口振りからすると、”竜の国”にはすぐに行けるようなので、俺は死んだ後でなくても”竜の国”に行けるようだが、もしかしたら、即死んで即行けるってことか?

よく確認してからでないと危ないが、俺には使命があるから死なないとも言っていた。


俺の使命って、人間の子作りなのだろうか?


========


ディアガルドの迷宮との往復がきっかけだったのか、俺は、この世界に来る前、横浜に居た最後のときのことを少しだけ思い出したような気がしていた。


とても曖昧なものなのだが、女が迎えに来て、俺は何故かこの世界に行くことに決めた……ような気がしてきたのだ。


俺を、ここに連れてきたのは”転移する竜”だったはずだが、俺の記憶では女が来て、俺はこの世界に来ることに決めた。

どんな話をしたのかは思い出せないが、何故か、”女が来て、俺はここに来ることに決めた”、そのイメージだけが蘇ってきたのだ。


俺は、何のためにここへ来たのだろう?


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