5-6.トルテラ、森に飛んでくる竜となる
フラグの押し付けに失敗して、やっぱり勇者になってしまいました。でも安心です。死人ですから。二階級特進的なものなのです。とっても安心ですね!
そして安心してるうちに何故か新たなヒロインフラグが危険です。
※ち〇こ見る子と変態医者については”2-7.余命診断を受ける”を見てください。
10日ほどすると、トルテラを除いたトルテラ一行のところに、ルルシアが現れた。
”トルテラの国葬に参加するため”……では無かった。
ルルシアは、テーラ(テリシア)の腹違いのお姉さんだ。
「ルル!」
テーラの表情が明るくなった。
お姉さんに会えたからではない。
ルルが、このタイミングでここに現れた理由に気付いたのだ。
「テリシア、実は……」「わかった」
ルルシアが話しはじめて即、テーラは答えた。
エスティアもリナも、もちろんアイスも、何のことだかわからなかった。
ルルは即理解した。既にテーラには伝わった。
……となれば、続きは場所を移し、安全なところで話をするべきだ。
でも、ここで言わなきゃ気が済まないのがルルだった。
ルルは、気配察知で一応念入りに人が居ないことを確認してから言う。
「トルテラだけど、今、家に居るんだけど」
「ええ?!!」
「し、静かに」
「なんで?」
ルルシアが説明する。
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トルテラと怪物が燃え上がり、消えたときまで遡る。
トルテラは、全員を守るためには、一撃で倒す必要があると判断し、
怪物に対し、全力で”点火の魔法”を使った。
流れ弾で被害が出ないように、怪物の腰から上に向けて撃った。
うまく行けば怪物の攻撃が止まるか……と思ったら、
真っ暗になった。
なんだ?と思った瞬間、世界が回った。
「ゴアーーー」
凄い声とともに投げ出される。
熱い、体が燃えていた。
比喩ではなく、本物の炎が上がっている。
そうだ、点火だ。点火を使って怪物を燃やそうと、したはずが、
一瞬落下する感覚と、その後、地面に当たり投げ出された。
怪物と一緒に燃えていたが、投げ出された衝撃で、離れることができた。
ゴロゴロと2回転転がって火を消す。
燃えてたのは怪物で、俺は服が一部燃えたが、その程度で済んだようだ。
素早く起き上がるが、武器がない。
それどころか誰もいない。
”あの女(残念騎士)”は、助かったのか?
周りに誰もいないなら、戦う意味もない。逃げるか?
そう考えるが、怪物は倒れたまま起き上がらない……なら逃げるよりトドメだ。
大きな石を持ち上げると、怪物に叩き付けた。
反応はなかった。
すでに息絶えてたようだ。
むしろ、この程度で死んだことに違和感を持つ。
こんな”普通の生き物の常識が通用しなさそうな怪物”でも、この程度の火で死ぬのだ。
安心して座り込むと、痛みを感じてきた。
酷い火傷を負っているようだ、ヒリヒリというかピリピリというか急に痛みが増してくる。
怪我はだいたい同じだが、怪我した直後より、少し時間が経ってからの方が痛くなる。
火力が高すぎて、自分までダメージを受けてしまった。
ダメージは想像以上に大きかった。
せめて身を隠せる場所まで移動を……と思ったが、そのまま起き上がれなくなってしまった。
すると女の悲鳴が聞こえて、そのあと名前を呼ばれた。
「トルテラ、どうしたの」
見ると見覚えのある顔が……誰だろう?
ああ、そうだ、前に診察受けた病院の、受け付けやってた、”ち〇こ見る子”だ。
「凄い獣の唸り声みたいなのが聞こえて、何か燃えてたから……
大きいから、もしかしてと思って見に来たらトルテラで……」
大きな音と絶叫が聞こえたので慌てて外を見ると燃える何かと、とどめを刺す巨体が見えて、危険を感じたけど、倒れて動かなくなったので、見にきたら俺だったという。
「それより何よ、あのちちちん……見る子って」
「だってあのとき、覗きに来ただろ俺のち…」
「あああ、い、いいよ言わなくて」
さっきまで、要塞近くで戦ってたはずが、なんで突然こんなところにいるのだろう?
「さっきまで、こんな森の中じゃ無かったはずなんだが」
「うちに来なよ、すぐそこだから。
速く治療しないと。薬ならあるから」
もしかして、”見る子”は良い子なのか?
痛ててて、動こうとしたら予想以上に痛かった。
起き上がって周りを見ると……あれ?風景に見覚えが。
あそこにあるのは、テーラの家だ。
「家って、あの家か?」
「え? 住んでたでしょ、また忘れちゃったの?」と”見る子”が言う。
テーラの家に住んでるテーラとシート以外の女。
なるほど、わかった。見る子の正体が。
「もしかしてルルシア?」「そうよ。忘れてたの?」
「いや、今、初めて知った」
「えー? え? うわーーーん」
「仕方ないだろ、俺はあのとき、知らなかったんだから」
「なんでちゃんと言っとかないのよ。
なんか、アピールしてるのに全然反応無いと思ってたら、
まさか誰も話してないなんて。くうぅ」
やけに笑顔の受け付けのおねえさん、”ち〇こ見る子”は、テーラのお姉さんだった。
確かにあのとき、やけに愛想が良いので違和感はあった。
”なんで話してないの”とか”計画が”とか言いながら悶絶してた。
悶絶しつつも治療はしてくれた。器用だな。基本良い子っぽい。
あの日受け付けやってたのは、診察料を下げてもらうためで、手伝うからちょっとオマケして、ってことで、俺に恩をう……いや、親切でやってくれたことだった。
そこは感謝するところなんだけど、あの笑顔振りまくりは、誉めて誉めてアピールだったようだ。
まあでも、良い子なのだろう。
だが、見たのは別だ。しかも2度見した。
「2度見しただろ」
「え?」
「俺のち……」
「あああ、い、いいよ言わなくて」
「それに、偶然なの、ちょっと」
「ちょっと?」
「様子見に行ったら、ほら、
ちょうど、なんて言うか、わかるでしょ?
私まだ男の人のって、お父さんは居たけど、
それ以外の男の人って、あんまり見たこと無いし、
それに、体大きいと、
ほら、なんて言うの? 大きさが比例するのかなって、
興味……あるでしょ?」
ねえよ!! 俺は他人のなんか見たくもねぇよ……と全力で思った。
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シートは、俺が現れた時のことを、ルルに細かく確認していた。
テーラとルルのお父さんの予想通り、俺はここに飛んできた。
どうやって来たのかわからないけど、確かに来た。
「シート、飛んできたぞ。でも竜じゃない」と言うと、
ルルが「え? なに? なんの話?」と聞いてくる。
ルルは、この話を知らないようだ。
シートは「そうね。人の姿をした竜が飛んでくるなんて、聞いたこと無いわ」と言った。
「俺は、竜なのか?」と聞くと、
「人が開けない扉を開けて、神殿跡地を聖域化して、ここに飛んできたのよ。
そんな人間居ないわ」と言う。
ルルが「え? 竜……って巨人なの?」と言った。
そうか、巨人か。
普通に人間って言えよ!と思った。
「もちろん、竜は、竜の姿をしているわ……普通は」とシートが言う。
普通じゃ無いということか。
「可能性は2つあるわ。”竜の遣い”が竜に飛ばされてここに来たか、自力で来たか。
自力で来たなら、人の姿をした特別な竜」
特別な竜? ……俺は竜としてもダメなやつなのか?
「でもたぶん、あなたは後者」
俺は自力で来たのか? いったいどうやって?
「ねぇ、二人とも、何言ってるの?」 ルルは話に付いてこられない。
「ルル、悪いけど、キャゼリアに伝言を頼むわ。テーラにも。
明日にでも出発してちょうだい。超特急で」
「えええっ?」
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ルルは、翌日早速出発して、乗合馬車を乗り継いで、8日でダルガノードまでたどり着いた。
まず、ルルの母キャゼリアに会い、その後、テーラに会いに行った。
そこで冒頭に繋がる。
ルルは、ダルガノードに出発する前に、自分の父がなぜこの家に住み、そしてシートが今まで何を待っていたか話を聞いた。
父が、竜を待っていたことは知っていたが、ルルは竜が実在するとは思っていなかった。
「お父さんの言ってた竜って、トルテラのことだったの?」とルルが聞く。
「あの人は、ここに竜が現れるのを待ってただけ。
人間の姿をした竜が来るなんて思ってなかったわよ。でも、ここに飛んできた竜はトルテラだった」
「トルテラって人間じゃないの?」
「メリーに聞かなかった?皆知ってるわよ。
町の人も、大鎧のところの人も、守り神とか、竜って呼んでるでしょ」
え? 俺はてっきり、人間に、竜とか守り神とか名前付けて呼んでるだけだと思ってたんだけど。
もしかして皆、俺のこと人間だと思ってないのか?
俺は人間脱落してたのか!
「診療所がしばらく休業してたのが、トルテラのせいらしいってことは知ってたけど」
「メリーは人間だとは、考えられないって言ってたわよ」
そうなのだ。俺は変態医者にも、人間じゃない判定されてしまう悲しい存在なのだ。
くてっと倒れていると、シートが優しく介抱してくれる。
シートは今まで、知ってても教えてくれないし、ベッドに乱入してきたり、無理やり踊り見せるイベント開いたり、俺に酷いことばかりすると思っていたけど、本当は優しい子なのかもしれないと思った。
子持ちだけど。
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「たぶん、あのあたりに有るんじゃないかしら」とシートが言う。
俺と怪物が現れた場所。
あの上に、空中にゲートがあるのだと言う。
竜は、神殿跡地を移動すると聞いた。それとは別のものなのだろうか?
直接目には見えないが、確かに、何かあるかもしれないな……という感じはした。
シートに尋ねる。
「ゲートは神殿跡地と関係あるのか?」
「あら、竜が、神殿跡地間を移動できることは知ってたのね、
移動に関して言えば、神殿跡地とゲートは機能は同じよ。
神殿跡地には必ずゲートがあるけど、全てのゲートが神殿跡地ではない。
こう言えばわかるかしら?」
神殿跡地以外にも、竜が移動できるスポットがあるようだ。
シートは確信していた。
トルテラは自力でゲートを通ってシートの家に来た。
シートが住んでるこの家は、元々ガスパールの住んでいた家で、ガスパールがここを選んだ理由は、ここに竜が飛んでくるからだった。
元はテリオスと言う名だったが、ここに住むようになって、ガスパールと名乗るようになった。
ガスパールと言うのは、昔飛んできた竜の名前だ。
テリオス(ガスパール)とキャゼリア(ルルの母)は、勇者の伝説について研究をしていた。
伝承の勇者像は、大きく変わることが度々あった。
民衆の勇者に対する意識には、大きな揺らぎがある。
その揺らぎは大鎧と共に変化していた。
そこで、テリオス(ガスパール)の興味は大鎧に移り、大鎧を調べるうちに、竜の実在と竜が通るゲートの存在を予測するようになった。
竜と大鎧の伝承はトート森周辺で強く、この周辺に竜が現れるポイントがあると予測していたのだ。
そして、その場所までも予測していた。
シートは知っていた。その予測は当たっている。
テリオス(ガスパール)が、どこまで理解しているか調べているうちに、夫婦になってしまったのだ。
人間の姿をした者が自力でゲートを通るなど聞いたことも無い。
ただし、それをやりそうな存在を知っている。
トルテラが本当に、ここや竜の世界ではない、まったく別の世界から来たのだとすれば、特別な竜ということになる。
トルテラは、竜の姿をしていないのに、竜の性質を持っている。
竜の体を持たずにやってきた竜。
はじめてトルテラに会ったときから、想像は付いていた。
トルテラは、他の世界に住んでた記憶を持っていたから。
シートは、外の世界からやってくるという、竜の体を持たない特別な竜を待つために生まれたのだから。
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ルルが出発した後20日間ほどシートと2人きりで生活した。
俺は、家の周りを回る簡単なお仕事をするために、町まで行くことがあるのだが、どういうわけか、シートが必ずついてくる。
俺が、神殿跡地の、俺の家に帰るときも、必ずついてくる。
何をするつもりなのか心配だったが、何も無かった。
ただ一緒に行動するだけだった。
テーラの家にいた頃には、3人でも十分狭いベッドに、母娘で参戦してきて酷い目にあわされたので、そういうキャラだと思っていたが、意外に娘思いの優しい母親だった。
シートと2人で、仕事して、お茶して、食事して、寝るときはやっぱり、俺のベッドに来てしまう上に、すぐ、寝間着がはだける事故が起きてしまうのだけれど、ある意味、いつもと変わらない生活を送っていた。
シートと一緒に暮らしていて再認識した。
どう考えても、エスティア達と俺じゃ、年齢が離れすぎだ。
俺にとっては、テーラの母親のシートでも、十分若い子なのだ。
シートなら子持ちだし、少々若すぎるけど、年の離れた夫婦も有り得るかな……と思えてきたのだ。
むしろ俺は、父親役で、エスティア達には、お婿さんをもらえるようにしてやろうと思った。
迷宮で貰った財宝があれば、金は何とかなりそうだ。
シートに聞いてみる。
「子供作れるお婿さん貰うには、どのくらい金があれば良いんだ?」
「そうね、うちはテーラにお婿さん貰うくらいの貯えはあるわよ」と答えた。
「じゃあ、テーラは大丈夫か。貧乏だと子供持てないって言うから、
金があればエスティア達にも子を持つ機会も」と言うと、
「テーラにお婿さん貰わないのはお金の問題じゃないのよ」とシートが言う。
「私が、あなたに手を出さないのは、テーラのため。
あの子たちが欲しいのは、あなたの子でしょ」
俺は衝撃を受けた。
毎晩一緒に寝て、寝間着がはだけても、手は出していないのだ!!
即ち、”手を出す”とは、それ以上のことなのだ!!
”手を出す”って具体的にどういうことか聞いてみたいが、聞いたら、きっと手取り足取り親切に実践して見せてくれる可能性が高すぎる! 危険すぎる。今は聞いちゃ駄目だ。
シートが「うふ」と言ってちょっと笑った。
絶対考えてることバレてる……と思ったが、ここはお互いスルーが大人と言うものだ。
スルーして話を続ける。
「俺、子供作れないみたいだし、この歳だから、そんなに長生きしないと思うけど、
俺が死ぬ頃には、あいつらも、それなりの年になってしまう」
「そうね、あなたが生きてる限り、他の男には見向きもしないでしょうね」
つまり俺にさっさと死ねと?
俺は、ただ生きてるだけで、あいつらの貴重な時間を、消耗させてしまうのだ。
俺は生きてるだけで、迷惑かけてしまうんだ。
……と思ってたら、心のエネルギーが底をついて、くてっと倒れた。
シートが優しく介抱してくれた。
まずい、俺のシートへの忠誠度が上がりまくってしまう。
もしかして、ヒロインはシートだったのか?!
年齢差的にもテーラたちと比べればだいぶマシだし……とか思ってしまった。




